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ノリの軽い祓魔師

 オハラ神父が快復したことにより、カトリック学校および教会は平穏を取り戻しつつあった。

 だが、神父の休養の本当の理由が体調不良ではなく、妙な連中に憑かれたための心神喪失であったことを知る者は少ない。幸か不幸か、アタシは関係者のひとりだった。

 認めたくないが、認めざるを得ない。妙な連中すなわち悪魔が存在することを……。

 復帰後、オハラ神父は秘密裡に祓魔師エクソシストを呼んだ。

 いま教会では祓魔師の存在を認めていない。アタシも会うのは、はじめてだった。そのかたの名はピーター・グレインといった。


「シスター・ロバート、こちらがピーター・グレイン氏です」

 オハラ神父の執務室で神父、アタシ、グレイン氏の三人が顔を合わせた。神父に紹介され、アタシは軽く会釈した。

「シスター・ロバート、お美しいかただ」

 グレイン氏が言った。いえいえ、貴方こそけっこうなイケメンですよ、とは立場上、口が裂けても言えない。歳は四〇手前くらいか。

「あなたも悪魔に魅入られましたかな?」神父がグレイン氏に釘をさした。「ここは恋愛禁止ですぞ」

「じゃあ帰ろうかなボク」

 ふたりは、あははと笑った。アタシをネタにしないでほしい。


「話は神父から伺いました。で、その後悪魔は夢に現れませんか」

「ええ、いまのところ」

 グレイン氏はアタシを見つめている。もしアタシが悪魔憑きだったら、わかるのだろうか。

「この場所は、ちょっとヤバい雰囲気が漂っていますね」

「本当ですか……」アタシは不安になった。

「たぶん、連中は無差別に獲物を探している。いつ誰があなたや神父のような状況になっても、おかしくないとボクは思います」

 アタシは頷いた。

 たしかに、神父以外にもこの件に関わった人たちを、アタシはふたり知っている。そのふたりには、もうこれ以上余計な心配をかけたくないので、今回の会合には呼ばないでほしいと神父にお願いした。

 アタシ自身はというと、この件をオハラ神父ひとりに押し付けるわけにはいかなかった。彼はアタシよりも甚大な被害者である。アタシは神父の補佐として、今日この会合に出ることを志願した。


「シスターもご存知のとおり、グレイン氏の立場は今日では微妙です。なので、彼には教会ではなく学校のほうに入っていただきます。もちろん素性も目的も我々以外には秘密です」

「教師として?」

 アタシが聞くとグレイン氏は、

「これでも神学校で教鞭をとっていたんですよ」と照れ笑いした。

「ちなみに科目は歴史だそうです」と神父。

 被ってるしアタシと……。まあ、彼の本業は別にある。

「それで、グレインさんはどう行動されるのです?」

「とりあえず、ほかの職員のかたと同様に宿舎で生活します。さすがにシスターとご一緒というわけにはいきませんが」

「それは、まあ……」アタシは苦笑する。

「でも必要なときは、いつでも呼んでください。二四時間駆けつけます」

「二四時間て」

「これを、お渡しします」

 グレイン氏は黒い卵型の物体を差し出した。よく見ると、底が平らになっていて、テーブルに置けるようになっている。

「何ですか、これ」

「発信機です。ボタンが付いていて、それを押すとボクのほうで警報が鳴る仕組みになっています。ここまで小さいサイズは、いまのところ最先端なんですよ」

「まるでスパイ映画みたいですね!」

 アタシはちょっとミーハーな部分が出た。

「ちなみに、神父もお持ちになります?」グレイン氏がふざけた。

「当然です」と神父。「シスター、いい男と悪魔には充分注意することです」

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