こんな日
「女王」の呼び名を持つ熊原さんによると、小杉君は小寺という苗字の人が好きらしい。
目を覚ますと保健室だった。一体誰が運んでくれたんだろう...
保健室の先生が声をかけてくる。
「えっと大丈夫?なんかお友達が不治の病とか物騒なことを言ってたけど...」
恋の病は確かに治りませんが。話をややこしくしないでほしい。絶対熊原さんだ。この仇は一生忘れない...
「えっと、大丈夫なんで、一時的なものなんで、教室帰りますね。」
「あ、無理しないでね。」
さて、教室の後ろのドアを開けると、みんながこっちを見る。恥ずかしい。
「おう、小寺。大丈夫か?」
先生の追撃。さらに恥ずかしい。私はうなずき、自然に自分の席に座って授業の用意を出した。熊原さんがウインクしてくる。
それにしても、小寺とは言ってたけどどの小寺かがわからない。うちの学校には小寺が五人もいる。二年には女子は私一人、男子は別のクラスに一人。三年には女子一人。一年には女子二人。候補が多すぎる。1/4か...とか考えていたら授業終了のチャイムが鳴った。やばい、ノート写さなきゃ。起立、礼を終わらせて大急ぎで書いたけど日直はあの真面目な弥生さん。すぐ消された。あー、あとで熊原さんに見せてもらおうかな。
様々な思考が脳を駆け巡り、私は休み時間を両手で頭を抱え込むスタイルで過ごした。休み時間終わりかけのころ、小杉君の恋バナが聞こえてきたので、全意識を集中させた。
「お前歳でいくとどんな奴がタイプ?」
女子のこと奴って呼ぶのは気に入らないけど名前がわからない男子ナイス!
「んーっと年下の人は嫌かな...」
その言葉を聞いたとき、全力で考えた。
小杉君10/31日生まれ
私10/26日生まれ
ギリギリセーフ。さて、候補が2人減り、1/2。もう勝ったと思っていいんじゃなかろうか。
昼休み。ご飯も食べ終わり、熊原さんにどの小寺が好きなのか聞いた。
「ごめん、風の便りだから苗字しかわかんない。」
そこで私は決心した。確かめたい。遠まわしに聞こう。