その日
登校のとき、電車で会って、距離を縮めるチャンスだったけど結局一言も喋れなかった...
靴箱のところまで来て、小杉君の友達が来たので自然とそっちにいった。別れ際に、
「小寺また後で。」
と言った。そうだ、また後で会わなくちゃいけないのか。そうなると変に意識しちゃうかもしれない。そうなったらまた私の顔は赤くなるだろう。そうしたらあの優しい小杉君は気づいて大丈夫か?とか言ってくれたりするんだろうか。そうすると保健室まで連れて行ってくれて、その間は二人きりだから・・・
「どうしたの、靴箱の前でニヤけながら突っ立って。」
「ひゃ」
っと、変な声を出してしまった。小学校から一緒の熊原さん。なぜかは知らないけど、女王と呼ばれてる。
「まさか彼のこと考えてたの?」
なんで知ってるんだろう、と思いながらも否定した。
「ちっ、ちがうよ」
「顔赤いよ?冗談で聞いたのに...」
うわ、最悪。熊原さんは、ちょっと性格悪いからこの話題でいじられそう。
「それでどの人?イケメンの吉田君?成績優秀の杉田君?それとも毎日熱い視線を送っててアンタの好みにあっている隣の席の小杉君?」
反射的に体が硬直する。絶対わかってて聞いてる。熊原さんめちゃくちゃにやけてる。
「じゃあ、誰が好きか今日調べとくから。」
そういって熊原さんは去っていった。
教室に着くと、すでに小杉君がいた。とりあえず、心を無にするために明後日の宿題をしていた。気が付くと予鈴が鳴って、教室にぞろぞろと人が入ってきた。急に左肩を叩かれ、顔をそっちに向けると人差し指がほっぺに刺さった。熊原さん、それは普通小学生しかしない。するとまたにやけた顔を作って、
「彼の好きな人調べてきたよ」
と言った。
「速っ」
ちょっと大きい声だったのか、周りの人がこっちを見る。恥ずかしい。
「風の便りだけどね、小寺だって。」
私の思考回路がオーバーヒートした。卒倒した。