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星座の作り方

特になし

真夜中にAはふとPCから顔をあげる。

どこかから聞き覚えのある歌が聞こえたからだ。

不安定なメロディ。涙声。

どこかで酔っ払いが大きな声で歌っているようだ。

懐かしいなと思う。もう帰りたいと思う。

そうしてまたPCに視線をもどし、仕事をすすめる。


歌い続ける声。


真夜中にBはふと枕から首をあげる。

どこかから聞き覚えのある歌が聞こえたからだ。

不安定なメロディ。涙声。

どこかで酔っ払いが大きな声で歌っているようだ。

うるさいなあと思う。夜中に大声で歌う奴なんか死んでしまえばいいと思う。

そうしてまた枕に首をおろし、眠りにつこうと努力する。


歌い続ける声。


真夜中にCはふと電話から耳をはなす。

どこかから聞き覚えのある歌が聞こえたからだ。

不安定なメロディ。涙声。

どこかで酔っ払いが大きな声で歌っているようだ。

知っている歌。でもどうしても曲名が思い出せない。

そうして受話器の声に呼び戻され、聞きたくなかった話を聞く。


歌い続ける声。


真夜中にDはふと足の間から舌をはなす。

どこかから聞き覚えのある歌が聞こえたからだ。

不安定なメロディ。涙声。

どこかで酔っ払いが大きな声で歌っているようだ。

気持ちよさそうだなと思う。あんな風に歌えたらと思う。

そうしてまた足の中に舌をもどし、仕事をつづける。


歌い続ける声。


真夜中にEはふとマンガから顔をあげる。

どこかから知らない歌が聞こえたからだ。

不安定なメロディ。涙声。

どこかで酔っ払いが大きな声で歌っているようだ。

知らない歌だなと思う。曲名を知りたいなと思う。

そうしてまたマンガに読みはじめ、歌のことは忘れてしまう。


歌い続ける声。


真夜中にFはふと本をとじる。

どこかから聞き覚えのある歌が聞こえたからだ。

不安定なメロディ。涙声。

どこかで酔っ払いが大きな声で歌っているようだ。

歌うという行為は祈りだ、と思う。ゆくあてのない祈りだ。

そうしてまた本を開き、祈りについて考え続ける。


歌い続ける声。


真夜中にGはふとスマホを落とす。

どこかから聞き覚えのある歌が聞こえたからだ。

不安定なメロディ。涙声。

どこかで酔っ払いが大きな声で歌っているようだ。

誰かが泣いていると思うとホッとすると思う。自分だけじゃないと思う。

そうしてまたスマホを拾い上げ、今しがた思ったことをそのまま呟く。


歌い続ける声。


真夜中にHはふと箸をとめる。

どこかから聞き覚えのある歌が聞こえたからだ。

不安定なメロディ。涙声。

どこかで酔っ払いが大きな声で歌っているようだ。

歌えるのも泣けるのも、何もかも良いことだと思う。

そうしてまた箸を動かし、腹に何かをつめこむ。


歌い続ける声。


真夜中にIはふとグラスをおく。

どこかから聞き覚えのある歌が聞こえたからだ。

不安定なメロディ。涙声。

どこかで酔っ払いが大きな声で歌っているようだ。

同じ歌を歌っていた人のことを思い出す。

そうしてまたグラスをかたむけ、記憶が飛ぶまで飲み続ける。


歌い続ける声。


真夜中にJはふとレジを打つ手をとめる。

どこかから聞き覚えのある歌が聞こえたからだ。

不安定なメロディ。涙声。

どこかで酔っ払いが大きな声で歌っているようだ。

バカみたいだなと思う。あんな風にはなりたくないと思う。

そうしてまたレジを打ち直し、合計結果を出し続ける。


歌い続ける声。


真夜中にKはふと湯船から頭を出した。

どこかから聞き覚えのある歌が聞こえたからだ。

不安定なメロディ。涙声。

どこかで酔っ払いが大きな声で歌っているようだ。

こんな時何を思えばいいのだろうと思う。

そうしてまた湯船に沈み、肌をこすり続ける。


歌い続ける声。


歌い続ける声は真夜中を歩く。

一人で歩く。

何もかも終わってしまったと思う。

何ひとつ始まってもいないと思う。

もう手遅れだと思う。

まだ間に合うと思う。

どうでもいいと思う。

バカにするなと思う。

無力だと思う。

全能だと思う。

助けてほしいと願う。

助けてあげたいと願う。

星を見あげる。

星をつなげる。

星座ができる。

星座に名前をつける。

ちぎれる声を張りあげながら思いきり星に手をのばす。


そうして星座は無数に増え続け、歌う声は終わる気配も見当たらない。

無責任に書きました。

楽しかったです。

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