かんちがい?
生まれてきて初めて小説のようなものを書いてみました。
たとえどの様な作品でも、人に見てもらい評価してもらうことで作者の技術やモチベーションの向上に繋がると聞いて投稿させて頂きました。
つたない文章ですが、なにかの偶然でご拝読していただけたら幸いです。
「ひさびさだな、こんなに勝ったの!」
まさかの投資二千円からの二十連荘でいきなりの大金を手にいれるとは思わなかった。 さすがにひたすらタバコをふかしながら長時間パチンコする事には疲れたが目の前の一万円札達を見ればそれも至福の労働であったとうなずける。
こんなあぶく銭を稼いだときの人間のやることなんてだいたい決まっている、…そうだな貯金…なんて絶対しない、浪費…たとえば普段買えないものを買っちゃうとか、またパチンコに使っちゃうとか、だいたい自分の身にならない物のために無駄遣いしてしまう。 俺は断言できる、なぜなら本当に賢い人間だったらパチンコなんかに行かないからだ。
なんだか頭の中で、あーでもないこーでもないくだらない事を考えながら歩いていたら、ふと視界に目がチカチカするようなネオンの光が飛び込んできた。
=たっぷりメス豚牧場=
「風俗かー、そういえば最近行ってねえな」
普段であれば俺は飛び込みで風俗に行ったりはしない、入念な下調べのあと必ず最大限の割り引きが利く時間帯を狙って予約する、人気のある風俗嬢は、だいたい予約で埋まってるから残っている女の子達は、お客さんからお呼びがかからない様な売れ残りが多い。 だが今日の俺いつもと違う…手の中のお札達が自分に語りかける。
「別段よいではないですか…たとえ地雷を踏んでしまっても、人生何事も経験ですぞ」
俺の中で勝手にイメージづけされた福沢輸吉達がそう俺に告げる。
「よしっ!入ってみるか」
なんだか妙な高揚感につつまれながら俺は黒く重い扉を開いた。
「いらっしゃいませ!」
店内に心地のよい反響がこだまする。
「何名様でございますか?」 「お一人様でございますね!」
「ご予約の方はされましたか?」「本日はフリーで、ありがとうございます!」
なかなか気持ちのよいテンポで応対してくれる、こういう店では当たり前のことかもしれないけれども、こんな淀みのない丁寧な接客が店の高級感を演出するものなのだ。
「こちらのお席にどうぞ!」
ボーイに案内されるがままに席につき、おしぼりをうけとる。
「お飲み物はいかがなされますか?」
「そうだな、じゃあコーラで、あと写真もってきてよ」
説明するとこの手の店には顔写真というシステムがある、もし前もって自分の知っている女の子を指名しなかった場合その店にどんな女の子がいるのかまったくわからない、大抵の店では追加料金になるのだがその時在籍している子達の顔写真をみせてもらえばその 中から好みの女性を選ぶことができる。
たとえ俺がその場の勢いで店に入ったとはいえ、やっぱりできる事ならかわいい女の子といちゃいちゃしたい。
「おまたせしました!」
タバコを吸おうと胸ポケットに手を入れようとする間にボーイが戻ってきた。
「こちらが本日のラインナップになります」
そう告げてから男が俺に小さなアルバムを渡す。
「今日はどんな子がいるかなあ」
わざとらしくつぶやきながら俺はアルバムを開いた。
「あれっ?」
突如違和感を覚える……いやっ、それは違和感というよりもむしろ親近感であろう、今俺が見ている写真は、俺が普段から通う店の物と酷似していたからだ。
…持ってくるアルバムを間違えた…ということはないよな。
「これなに?」
突然やぶからぼうに質問を投げかけた俺に対しボーイは冷静に、こう答えた。
「マリーちゃんでございます」
……まるで意味がわからなかった、なぜならこの写真の中には、マリーちゃんを連想させるなにかが見当たらなかったからだ、よく意味がわからない事になっているようだが一応聞くだけ聞いてみることにする。
「これって牛丼屋のメニューだよね」
その問いかけに対し少し苛立った様子でボーイがこう答えた。
「そちらの商品は豚丼にございます」
ああなるほど、そういえばこの店の名前は=たっぷりメス豚牧場=だったっけ、豚がメインである事は事前に予想できたわけだ……って違う!そうじゃない!俺が知りたいのはなんで風俗に来て牛丼…もとい豚丼の写真をみせられるっていう事であって肉の種類うんぬんではない。
だんだんイライラが溜まってきた。
「ここって一体何するトコなの?」
怒りを抑えてなるだけ落ち着いて聞いてみた。
「お客様に最高の時間とご満足を提供する場所にございます」
…またかよ……正直俺はこの男と一生分かりあえないと確信した、…しかしまあ腹もたつけれども腹も減ってきたことだし…よく見るとメニューに値段が表記されていた。
「250円 うわっ安い!」
おもわず声をあげてしまったがこんな店構えをしている割にはずいぶんと良心的な値段に驚いた。
これ以上この男と話をしてもラチがあかないのでとりあえず注文をしてしまうことにしよう。
「じゃあこの…マリーちゃんだっけ?大盛で」
「どちらのマリーちゃんでございますか?」
もういい加減こいつにも慣れてきたしちゃんと聞き返そう。
「マリーちゃんって一体なんなの?」
「マリーちゃんは先日、と畜されました食用豚の名前です、それはそれはかわいらしい豚で私、彼女が生まれたときから頻繁に世話をさせていただいておりました、しかし私は人間、彼女は豚、出生の瞬間からふたりは……」
長々とボーイの話は続いていく。
「わっかったからもう!じゃあこのマリーちゃんの肉で作ったこの豚丼?大盛りで!」 「サイドメニューなどもございますがいかがなされますか?」
まあたしかに豚丼だけじゃなんか物足りないよな。
「じゃあこれとこれお願い」
メニューに直接指をあてオーダーする。
「かしこまりました、あったかわかめ汁一杯とぶっかけカルピスをオプションでよろしいですね?」
なんだか俺の頼んだものと随分違ったものが聞こえてきたんだが…。
「えーっと、俺注文したの味噌汁と、とろろでよかったよね?」
「はい、当店の方針でメニューに個性をもたせようとインパクトのある名称に変更させていただいております、なにごとも差別化が必要なご時世ですから」
インパクトありすぎだろ…完全に差別化する場所間違えてるし…まあいいや、おっと卵頼むの忘れてた。
「あとこれね」
「ゴムなしと三十路人妻のどちらかがお選びできますが」
あわててメニューを確認してみる……なんだ生か半熟かを聞いてるのか…わかりづれえな。
「三十路人妻…以上で」
「かしこまりました、ではご注文の確認をさせて頂きます」
「メス豚マリーちゃんFカップ三十路人妻排卵日でわかめ汁、カルピスをぶっかけでよろしかったですか?」
なんだか、とんでもなく如何わしいものを注文しているように思えてきた…しかしまあ早く食べたいし、いい加減なところで切り上げないとな。
「はい、お願い」
ボーイがオーダーを伝えに戻っている際あたりを見渡してみる、…暗くてよく見えないがどうやら俺意外にも客がまばらにいるようだ、こんな店でも常連客とかいるものなのかなあ。
ものの二分もしないうちにボーイが帰ってきた。
「では、ごゆっくりどうぞ!」
俺は目の前に置かれた=メス豚マリーちゃんFカップ三十路人妻排卵日でわかめ汁、カルピスをぶっかけ=を見てみた……どうみても普通にとろろがかかった豚丼と味噌汁、小鉢にいれられた半熟卵にしか見えない…差別化を図るのであればこういったものの外見なりを変化させたほうがよっぽど効率的だろう。
なにはともあれ、もたもたしてるとせっかくの料理が冷めてしまう、早く食べてしまおう。
とろろに醤油をかけ、よく混ぜたあとで半熟卵と一緒にあつあつの豚丼の上に乗せたのち全体をミックスさせる、見た目は悪いがこれが俺の一番好きな食べ方だ。
一口目を口の中にほおばるりよくかみ締める。
「うまいなこれ」
おもわず正直な感想が口にでてしまった、自慢のマリーちゃんのお肉の賜物かなんだか豚肉自身にものすごく旨みがある、豚肉特有の臭みとかも全然なくてひっっかかることなく簡単に噛み千切れる、こんなレベルの高い豚丼がこんなに安いなんて…本当にもったいない…こんな店構えでなければ今頃は行列のできるような繁盛店だったのかもしれないのに…。
あっというまに平らげてしまう、こんなおいしい豚丼は、初めてだった。
「また来ようかな」
俺は会計を済まし店の外に出た際こう呟いた。
しかしながら食欲を満たしたところで溜まった性欲が満たされるわけもなく俺は近くのコンビニで風俗雑誌を買ってきた。
今回こそは確実に、と雑誌の紹介コーナーからお気に入りの女の子を見つけ電話する
「もしもし……一人だけど……カナコちゃんいる?……じゃあ今から行くわ」
無事予約をとりつけてタクシーをひろってから目的の店へと向かう、一回目でお目当ての女の子の予約がとれるなんて結構ついている、思い起こせば、飛び込みで入った店は何故か豚丼店だったが味もサービスもよかったし、なによりもパチンコでの大勝利が今日の俺の強運を物語っている。
どうやらそろそろ着くようだ、車が止まりドアマンが扉を開けてくれたのちに店内に案内される。
「いらっしゃいませ!」
今日二回目の心地のよい挨拶で出迎えられる。
「ご予約の方はされましたでしょうか?」
「うんしたよ、名前は……ね」」
「はい、…たしかにお伺いしております!ではこちらをどうぞ」
そういいながらフロントの男は俺に料金表を手渡した。
「当店の入浴料ならびにサービス料、オプションはこのようになっております」
料金表を開きコースの値段を確認する、どうやら今回こそはちゃんとした風俗店らしい料金は…まあこんなもんだろう風俗雑誌についてる割引券を使ったら安いもんだし、なにより今日の俺には大量の福沢輸吉さん達がついててくれている。
おもいきって一番いいのを頼んでみようか、こんな事できる機会なんてあんまりないし…なにより「人生は何事も経験」と輸吉さんが俺に語りかけていたし……。
よしきまった!これにしよう、ようやく俺の中で考えがまとまった。
「お決まりになられましたか?」
ボーイが笑顔で俺に語りかけてきた。
「カナコちゃん特盛、サイドメニューから、生と、お○んこ、つゆだくで!」
「すみませんお客様当店は牛丼屋ではございません」
いいかげんにしろ。
ありがとうございました。