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短編置き場

【怪談】ねろり

作者: ひなた真水
掲載日:2026/04/25

「ねえ、『ねろり』って知ってる?」

 

 転校生だった僕に話しかけてきた 前の席のみどりちゃんは言った

 今は国語の授業中なのに 堂々と後ろを向いて


「ネロリなら知ってるよ たしかハーブだったよね」

 

 ゆるく首を振るみどりちゃん 分かってないなーって感じで 肩まですくめてる

 ハーブじゃないネロリなんて知らないよ もう ネロリってなんなのさ

 

「だから『ネロリ』じゃなくて『ねろり』だよ」

 

 どうやら発音が違うらしい

『ネ・ロリ』じゃなくて『ねろ・り』なんだそうだ

 

『ネロリ』は「ね」にアクセントがあって

『ねろり』はアクセントが「り」なんだって

 

 発音の違いは分かったけど けっきょく『ねろり』が何かは分からないよ

 僕がみどりちゃんに そう文句を言うと

 みどりちゃんはなんだか いやらしい笑みを浮かべて言った

 

「君の家って たしか石滑り街道の 上の方だったよね」

「そうだけど それが『ねろり』に関係があるの?」

「大アリだよ そんなとこに住んでるなら『ねろり』には気をつけないと危険よ」

 

 坂の上に住んでるのの 何がそんなに危険なのか 僕にはまるで理解出来ないよ

 たしかに あの家はずいぶん安かったって お母さんが言ってたけどさ

 僕の家に危険なんか 何も感じないよ いったい『ねろり』ってなんなのさ?

 

「『ねろり』は『ねろり』だよ 舐める音の『ねろり』」

「舐める音? それの何が危険なのさ」

「舐めるらしいの 見た人がいるんだって」

「舐める? 犬みたいに?」

「知らないわよ あたしは 見たことないもん」

「見たことないのに どうして危険だって知ってるの?」

「この辺りの子どもなら みんな知ってるよ」

 

 どうやら『ねろり』っていうのは この地域特有の都市伝説みたいなものみたい

 あるよね トイレの花子さんとか 口裂け女とか きっとその仲間だろ

 僕はそう結論づけて そうしたら急に『ねろり』に興味がなくなった

 

 みどりちゃんも なかなか説明してくれないし もういいや

 

「……聞かないの? 『ねろり』の話」

「どうせ何かしたら襲ってくる とかの都市伝説でしょ よくある話ってやつだ」

「そんなじゃないのに…」

 

 あんまりに みどりちゃんの声が細かったから

 仕方なく書き取りから顔を上げると みどりちゃんは眉を下げてた

 それが僕には なんだかとっても困った様子に見えて もう一度言った

 

「ちゃんと説明してよ ちゃんと聞いてあげるからさ」

 

 ようやく みどりちゃんは『ねろり』について教えてくれる

『ねろり』の姿は半ズボン履いた 小学生くらいの男の子なんだって

 黄昏時に滑り石街道を通ると 街灯のない場所に ぽつんと立ってる事があるらしい

 油断して声なんかかけたら その口から想像出来ないくらい大きな舌で

『ねろーり』って舐められて 溶けて消えちゃうんだって

 

「一昨年 あたしのお兄ちゃんが居なくなったのも きっと『ねろり』の仕業よ」

「……誘拐されたんじゃないの?」

「違うよ もうすぐ2年もたつのに 誰もビラ1枚撒かないんだ」

 

 滑り石街道で消えた人は 絶対見つからないから だから気をつけて

 それだけ言うと みどりちゃんは 何もなかったみたいに 黒板の方を向いた

 けっきょく先生には怒られなかったけど 僕は自分の家がある場所が 急に怖くなった

 みどりちゃんが言う 『ねろり』が出そうな場所って 僕んちの近くだったから

 

 それからしばらくは 僕も警戒して 日暮れ前には家に帰ってたけど

 すぐに学校にも馴染んで だいたいの生徒の顔も覚えたから

 知らない小学生が 近所にぽつんと立ってる事なんて そうそうあるわけもなく

 だんだんと警戒する事を忘れていった

 

 そんなある日 おばさんちに用事があった僕ら一家は

 お父さんの車で石滑り街道の向こうへ出かけてた

 帰りの時間 ちょうど6時ごろ ふと みどりちゃんの話を車の中で思い出した

 

 まさかね 本当にいるわけないって そう思いながら 窓の外見てたら

 家と家の間にガレージがある薄暗い場所に 男の子がいた

 一瞬で通り過ぎたから 顔はよく分からない でも 半ズボンは履いてた

 あれはまさか 違うよ きっと近所の子どもだ 

 顔 見えなかったけど きっとそう……

 

『ねろり』には気をつけてね?

                                おしまい

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― 新着の感想 ―
面白くて怖かったです‼️ すごい良かったです✨
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