晴れのち曇り(インターミッション2+)
探し屋の主人公は、女子高生の涼花と負傷しながらも事件を解決した。
事件後、主人公は傷が悪化してしまい‥
「ありゃー、目茶苦茶腫れてるじゃん」
金髪の娘、田中麒麟がベッドに座る俺の足を見て、目を丸くした。
そろそろと指を伸ばし、腫れている所を突こうとする。
「おい、こら、突くな」
「うじゃ?」
「痛いんだからヤメロ」
「はーい」
ここは俺のアパート。
何故か女子高生が3人も押し掛け、かなり手狭な状況に陥っている。
「なぜにウチのアパートへ?」
「いやー、涼花を行かせた手前、ヤバい事有ったらまずいから、様子を見に‥」
麒麟は言った。
今度はショートヘアの娘、御津御美波が俺の髪を横から引っ張る。
「いたた、な、何だ?」
「綺麗な黒髪だから〜」
「いや分からん。黒髪引っ張りたければ、お菊人形にやれ」
「お菊人形って?」
「自動で髪がのびる人形だ」
「おお、ハイテクぅ〜。どこに売ってるん?」
‥呪われるぞ?
こちらで話している隙に、麒麟は再びそろそろと俺の足に手を伸ばす。
「おいー」
「触るだけ、触るだけだからっ!」
「どうして人の傷をそんなに触りたがる‥」
「だって、こんなに腫れてるの珍しい‥」
言いながら触れるか触れない位のタッチで俺の足を触りはじめる。
「ん‥硬くて熱い‥す‥凄い」
切なそうに吐息を漏らす。
「なぜに人の怪我で発情してるんだお前‥」
「えへへ」
全くわるびれる様子もなかった。
「はあぁ‥」
思わず溜め息をつく。
怪我で体調不良の身にこの2人は手に余る‥。
「す、涼花‥助けてくれ‥‥あ‥」
つい、2人で居るときの調子でキッチンに立つ涼花に声をかけてしまった。
「「キャーーーッ」」
女子高生2人が黄色い声を上げる。
「聞いた、“涼花”、だって!」
「これはもう、確定じゃない?」
「だよね、だよね!」
「既成事実なんて要らなかったんじゃ?」
「確かに! これはもう‥」
「「予定日決めなきゃ!」」
ハイテンションで手を握り合う2人。
駄目だ‥3人寄れば姦しいとは言うが、2人で俺は既にキャパオーバーだった。
と、そこに涼花がお粥が入った鍋を持って入って来る。
「一応、怪我人なんだから‥あんた達もペース落としなさいよ‥」
そう言って嘆息する。
「だって‥涼花だけズルいよ‥」
麒麟が溢す。
「な、何が?」
「こんなところで二人の愛の巣とか‥」
「ここに来るのは今日が始めてよ! アンタだって知ってるでしょ」
「でも、これからは〜?」
「え、そりゃたまには‥まぁ来れれば毎日でも‥」
「ひゅーひゅー、やるぇ涼花」
「あの、家主の俺の意見は‥?」
「あ、アンタはお粥食べて! ほらっ」
涼花は照れ隠しなのか、大さじに山盛りのあつあつお粥を俺の口に無理やり押し込む。
「あじぃーー!」
「あ、ごめん」
「ほら、涼花これこれ」
美波がコップに入ったジュースを渡す。
受け取った涼花は慌てて俺に渡した。
「うん、これ飲んで」
俺は急いでそれを口に含む。
“ごくごくこくこく‥”
飲むと、口の中いっぱいに薬臭い様な生臭い様な、何とも言えない味が広がった。
「な、なんだこれ‥ひどい味だ」
「これ、ここに有ったから‥」
美波は空になったガラス瓶を見せる。
“マムシ一番”?!
「けっはっ」
思わずむせる俺。
「ちょっと、汚い‥」
「そ、それはっ‥」
「元気、出るって」
美波はにこやかに笑った。
いや‥どうするんだこれ‥。
俺は火照ってくる体の熱を感じながら、もう一度嘆息した。
それから数日。
涼花の看病のおかげもあり、杖で歩ける程度に回復した俺は警察署で事情聴取を受けていた。
担当はあの時の初老の刑事、大西巌だった。
「探し屋の噂は俺も聞いたこと有ったが‥まさかこんなに若いとは」
一通り聴取が終わった刑事は姿勢を崩しながら言った。
「こういう事にあまり年齢は関係ないからな」
「だが、トラブルへの対応には経験も必要だろう? 今回みたいにな」
「認めるよ。もっと早く気が付けば、涼花を危険な目に合わすこともなかった」
「涼花ちゃんは‥いい娘だな」
「ああ」
「だが、未成年に手を出すのはだめだぞ」
「ゲホッ」
先日の事を思い出して思わず咳き込んでしまう。
「! おい、まさかもう?」
「ち、違う。ただ、周りからも冷やかされてて‥」
「まぁ、どこから見ても分かりやすいからな」
「そ、そんなにか?」
「ああ、そうだな‥あの娘、大事にしろよ」
言いながら刑事は写真を机に置いた。
「お前、写真だけで人の居場所が分かるんだってな?」
「だけって訳じゃ無いが‥」
「この女性の居場所、分かるか」
「刑事さん、俺は“探し屋”だ。仕事ならちゃんと料金払ってくれないと。だが‥」
「だが?」
「あの時に肩を借りた恩もあるから、今回はサービスだ。ただし、この事は他言無用だ‥例え刑事仲間だろうと」
「わかった。約束する」
「‥その人はもうこの世には居ない」
「!」
ぎょっとした顔をあげる大西刑事。
「当たりだよな?」
「あ、ああ。‥本当にか‥」
刑事は本心で驚いた様だ。
女性が亡くなっている事を確信できなければ、こうは答えられない。
そしてもう死亡したと分かっている人を探すのは不自然だ。
「俺を試したのか?」
「まぁな‥本当に探して欲しいのはこの娘だ」
刑事はもう一枚写真を机に置く。
そこには幼い少女が写っていた。
「これは‥何年か前の写真か」
「4年ほど前だ」
「子供は容姿がどんどん変わるから‥難しいな」
「それじゃ、これはどうだ? その子と一緒にある可能性が高い」
もう一枚は日本人形の写真だった。
ただあまり鮮明ではない。
「画質が悪いが‥いくつか候補はあるな」
「探せないか?」
「不可能では無いが、俺に捜査を手伝えと?」
俺は警察から依頼を受けた事は無い。
捜査情報を第三者に漏らす事は守秘義務に反するし、俺もトラブルに巻き込まれるのは御免だ。
「これは捜査じゃない。俺の個人的な‥依頼だ」
刑事はそう言って銀行の通帳を俺に渡す。
「そこの金全部が依頼料だ」
俺は通帳を確認した。
結構な金額が入っている。
「見つけられれば、印鑑とカードも渡す」
「多すぎるな。これの一部だけでいい」
「なら必要な額だけ下ろして、後は返してくれれば良い」
「なぜそこまでする? この娘は‥?」
「孫だ。ある事件で行方不明になった。さっきの女がその母親‥俺の娘だ」
大西刑事は椅子にもたれかかり、天井を見上げた。
「その子もな‥“見える”子だったんだ」
と、言った。
ここから数日また書き溜め予定です。
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