表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ファインド・アイズ (探し屋と女子高生)  作者: てんまる99
銀の糸編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

22/24

銀の糸

主人公が最期の試練に挑戦します。

あれから数日。

俺は毎日試練に挑戦し続けていた。

試練の内容は段々と難しくなり、紙の配置や時間、また紙が途中で移動するなど、複雑さを増していた。


俺はその度に崖から落ちたり、落石に巻き込まれたりし、ボロボロの状態に成っている。

それを毎晩、風香ちゃんに癒して貰って、何とか続けていた。

これだけの負傷を翌日には快癒させる、風香ちゃんの強力な治癒術が無ければ、到底無理な話だ。

風香ちゃんには本当に感謝していた。


そして、幾晩も共に過ごす内に風香ちゃんとの距離は無くなっていた。

まるで自分の手足の在り処が見なくても分かるように、意識しなくても常に風香ちゃんの存在を感知できる。

毎夜、風香ちゃんから気で癒してもらっていたからなのだろう。

ある意味俺の半身は風香ちゃんの気で満たされて居るようなものだからだ。


そして今朝も、真礼さんから課題を受けようとしていた。


「課題にも随分と慣れたと見える。最初の頃とは見違えるようじゃ」

「ああ、多少コツが飲み込めてきた」


確かに俺の方も段々と状況が“見える”様になり、大きな怪我をすることは減っていた。


「俺は“見る”事を怖がっていたんだ」

そう、それは俺が普通でないと認める事になるから。

子供の頃から出来るだけ力を使わないで暮らすようにしていた。


「ようやっとそれに気が付いたか。ならば後はそれをどう使うかを学ぶ」

「ああ」

「今日が最期の試練じゃ‥ついて来い」


そう言うと真礼さんは敷地の外れにある大きな建物の中に案内する。

まるで土蔵の様なその建物は中には何も無く、ただ打ちっぱなしの地面と、中央に一つの大きな石があるだけ。


「あの岩に‥これを刺せれば試練は合格じゃ」

そう言って真礼さんが取り出したのは細い、銀色の糸だった。

「糸?」

「ただの糸では無い‥これを‥」

真礼さんは糸を一本取り出し、ダーツの矢を投げる様に投じた。

糸は銀の矢の様に真っ直ぐ飛び‥。


“ヒュッ‥ガッ”


‥岩に刺さった‥。


「見たか」

「ああ‥」

真礼さんが投じた糸には式と同じように気を帯びていた。

それが糸を強靭な鋼の様にしていたのだ。


「これだけでは簡単じゃて、もう一つ‥」

そう言うと手に持った3枚の大きめの紙を投じる。

紙は折り紙のように形を変え、まるで動物のように岩の周りを歩き始める。


「犬とキジと猿じゃ」

「桃太郎か‥」

「ふふ、そうさな」

「今回は刻限は無いが‥果たすまでここから出る事は出来んぞ」

そう言うと、真礼さんは数本の糸を手渡し、建物から出て行った。


“がシャン!”


錠前の落ちる音が聞こえた。

本当にクリアしない限り出す気は無いらしい。


俺は気合を入れて岩に向き直った。


まずは貰った糸に気を通す方法だ‥。

と言っても今まで何かを教えて貰った訳では無い。

真礼さんのやっている様子を“見て”いた事を再現するのだ。


真礼さんの様に指先から糸に気が流れる様子を思い浮かべてみる‥。

うーん、分からん。


やはり、見える事と使えることは別物だ。


ならば、真礼さんが投じて岩に刺さった糸を見て参考にしよう。

うろつきまわる式神の間を縫って糸が刺さった岩に近づこうとすると‥。


「ワンワン!」

犬の式神が吠え、襲い掛かってきた!

慌てて身をかわすが、腕に噛みつかれる。


「いたーーーっ!」

式神は歯こそ無いものの、本物並みの力で噛み付く。


“紙に噛みつかれたー?!”


まさかそんな力が有るとは思わず、驚きでパニックになる。


「く、くそっ」

犬の式神の頭を掴み、何とか引き剥がそうとした。

鋭い紙のエッジで腕に切傷が出来た。

さほど深くは無いが、じわじわと血が滲んでくる。


そのまま岩から逃げるように離れると、式神はあっさりと引き下がった。

‥どうやら、襲うのは岩からある程度の範囲に限られている様だ。


それでは、と、犬の式神と逆側に回って岩に近づく‥。


「ピピーーィ」


今度は雉の式神が素早くクチバシで突き刺しに飛来する。

「うぉっ!」

間一髪でかわすものの、脇腹を服ごときり裂かれた。


その切れ味は紙のそれではない。

内臓には届かなかったが、ざっくりと切られた。


「くそっ、どうすれば‥」

再び建物の隅まで身を引き、シャツを腹に縛り付けて止血をし、様子を伺う。

滲んだ血がポタポタと床に染みを作った。

放置すれば、あと1時間程で失血死するだろう。


式神達が気をまとって動いているのは分かる。

だからといってそれを防ぐことも、強靭な紙を打ち破る方法も俺には無い‥。


と、あるアイデアが脳裏に浮かんだ。

それは半分無茶な方法だった‥。


今度式神に直接襲われれば、致命傷かも知れない‥。

弱気が心中で頭をもたげる。

だが、これしか方法は無さそうだ。

俺は一か八かの賭けに打って出た。


俺はもう一度、雉の式神が居る方角から、岩に近づく。

案の定、式神は声を上げながら猛スピードで突っ込んで来た。


勿論、俺の狙いは岩ではない。

「えやっ!」

式神をかわしざま、その羽根を掴み、地面に引き落とした。


更に地面に落ちた式神のクチバシを掴み、動きを封じる。


バタバタと予想外の力で暴れる式神を床に転がりながら、何とか岩から引きはがす。


案の定、他の式神は反応しない。

あれらは条件付けられた通りにだけ動く、いわばロボットだからだ。


掴んだ式神のクチバシはやはり紙とは思えないほど硬い。

流し込まれた気が、紙にこれだけの硬度を与えているのだ。


「“見せろ”、お前の気の流れを‥」

俺は全力で式神に宿る気の流れを“見る”。

教えて貰えないならば、現物から読み取るしか無いのだ。


意識を集中させ、必死に式神を“見る”。

全身からクチバシに流れる気の流れを。

段々と式神の身体に流れる“気”を把握してゆく。

見えるのなら、俺にも出来る‥はずだ。

俺は意識を“見る”事に集中させた‥。


それから数十分経ったろうか。

脇腹からの出血で意識が朦朧としてきた。

既に床には大きな血溜まりが出来ている。


もう、意識を保って居られる時間は短いだろう‥。

俺は必死に立ち上がり、手に持った銀色の糸を構えた。

式神で読んだ方法で糸に気を流してゆく。

じわじわと気が流れ込み、銀色の糸が針へと変わってゆく‥。


2投する体力は残っていない。

この糸をあの岩に‥。

俺は残された渾身の力で糸を投じた。


“ヒュッ”

糸は針となり、岩へと銀の残像を残して飛んだ。


同時に全身の力が抜け、血溜まりに倒れ込む。

顔にかたまりかけた血糊がベッタリとつく。

声を上げる間もなく俺の意識は失われた。

モチベーション維持のためにもぜひぜひ感想とか教えて下さいませ。

また、連載形式でアップしますので読み逃し無いよう、お気に入り登録も宜しくです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ