風香の癒し
新神の陰陽術を会得するため真礼さんの課題に挑んだが‥
宵の口に屋敷に戻った俺を、屋敷の玄関の前で真礼さんと風香ちゃんが待っていた。
「か、紙は集めた‥」
俺は集めた10枚の紙をさしだす。
「随分とボロボロじゃな‥」
真礼さんは嘆息しながら言った。
「きちんと10枚集めて来たと言うことは、仕掛けには気が付いたか」
「ああ、途中で‥」
言いながら膝の力が抜け、その場にへたりこんだ。
「神島さん?!」
風香ちゃんが慌てて駆け寄る。
「酷い怪我‥」
風香ちゃんは俺の様子を見て息を呑んだ。
「もう一度チャンスをくれ‥」
「神島さん!無茶です!」
「いや、今度こそ‥」
真礼さんは俺を見て言った。
「時間には間に合わなかったが、きちんと紙を集めた事は評価しよう。ま、補欠合格じゃな」
「助かる」
「だが次の試練はもっと厳しいぞ。なぜ最初から手掛かりに気が付かなかったか、しかと考えてみよ」
「‥分かった」
真礼さんは風香ちゃんの方を向いて言った。
「風香」
「はい」
「何とかなるか?」
「私が、今晩、必ず癒します」
風香ちゃんは気合充分で答えた。
しかし、毎晩風香ちゃんにお世話になるのはさすがにマズいのでは‥。
「いや‥それは」
「明日までに回復せねば試練は中止じゃ。死人を出す訳にもいかぬからの」
「‥う」
「風香にしかと癒して貰うことじゃ」
「しかし‥」
反論しようとする俺を真礼さんは一喝した。
「たわけっ! その様な甘い心構えで越えれる試練では無いわっ!」
「くっ‥」
「常識に囚われて術を学ぶなど無理というものじゃ。倫理の外にこそ道があると知れ」
真礼さんに一喝されてしまった。
決して試練を甘く見ている訳では無いが、なりふり構わず挑む必死さが足らない、と言うことか。
「風香ちゃん、すまない」
「大丈夫です。行きましょう」
俺は風香ちゃんの肩を借りて屋敷へと戻った。
そのまま、泥だらけの身体を洗うため、風呂場に向かった。
「あつつっ!」
何とか風呂場に転げ込み、傷口に滲みる湯に声を上げながら身体を洗った。
痛くても傷口の汚れは落とさないと、後でひどい目を見ることは明らかだ。
「失礼します」
と、浴室の扉を開け、包帯とタオルを多量に持った風香ちゃんが入ってきた。
身体にはバスタオルを一枚巻いただけだ。
「ふ、風香ちゃん?!」
「身体、流しますね」
そのまま、まるで看護婦の様にてきぱきと俺の身体を洗い始めた。
「いや、それは自分で‥」
断ろうとする俺を、
「傷の具合を確認するのも有りますから、全て任せて下さい」
と制した。
いや、そうは言われても。
タオル一枚の美少女を目前にして平静で居られる訳もなく、鼓動が跳ね上がる。
「ま、待ってくれ。こんな事されたら俺だって我慢‥」
いつまで自制できるか分からない、と言いかけた俺を風香ちゃんは制した。
「抱きたければ、抱けば良いじゃないですか! 殿方の湯殿にこんな格好で来てるんです。その位の事、覚悟してます!」
そう、迷いない口調で言った。
「ふ、風香ちゃん?」
俺は思わず気圧された。
「治療が終われば、どんな事でもお受けします。だから‥」
言いながら俺をふわりと抱きしめた。
「だから今は任せて下さい」
「‥すまない」
「私だって、本気です。だから‥」
ここまで言わせて従わない訳には行かなかった。
俺は風香ちゃんに言われるまま、裸で床にうつ伏せになった。
風香ちゃんは持ってきた壺から油のようなものを手に取り、俺の怪我した箇所に塗り始めた。
ちょうど、夏の海岸でサンオイルを塗る感じだ。
「薬油です。こうして‥」
手のひらを使って塗り広げる。
その箇所はじんわりと温かくなり、少し痛みが治まった。
「温かい‥感じがする」
「はい、こうして代謝を上げることで回復を早めます‥」
風香ちゃんは更に微かに触れる程度でゆっくりと手で撫で、油を塗り込んでゆく。
触れた箇所が温まり、痛みが引いてゆく。
「回復の気はあまり得意では無いのですが‥」
そう言いながらも幾度もゆっくりと撫でる。
どうも単に撫でているだけではなく、“気”を流す事で回復を促している様だ。
風香ちゃんの額には幾つも汗が浮かんできた。
「ここ、骨にヒビが入っていますね‥」
言いながら更にゆっくりと何度も擦る。
体がふわふわと温かくなり、回復して行くのが分かった。
「凄く身体が楽になった‥」
「はい、そのまま力を抜いて、任せて下さい」
言われるがまま、体の力を抜いていくうちに‥俺は眠りに落ちていた。
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