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ファインド・アイズ (探し屋と女子高生)  作者: てんまる99


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2/9

風邪と猫

密かに“探し屋”をしている主人公は依頼を受け、猫を探す事になる。

翌日から俺は例の猫探しを始めた。

非番の日にあちこちを探索する。

はじめに地図であたりをつけて、その場所へ行くと言うことを繰り返した。


俺には少し理由わけがあって、イメージした物の所在が何となく感じる能力がある。

地図を見れば所在する場所を感じるし、実際にその場所に行けば、より強く感じる。


そのためにあちこち住宅地を歩いていた時だった。


「嘘、譲さんじゃん!」

テンションの高い声で、姿を見なくても分かる。

大きめのビニール袋を持った神崎涼花がそこに立っていた。


「なんでなんで? お店休みだって言うからてっきり‥」

涼花は慌てて手に持ったビニール袋を隠そうとした。

見ると、ビニール袋には風邪薬や栄養ドリンクが入っている。


「てっきり?」

「風邪でも引いたのかと思って」

「風邪はひいてないけど‥もしかしてお見舞いに来てくれようと?」

「そ‥‥そうよ! わ、悪い?」

涼花は顔を真っ赤にしながらも腰に手をあてて胸を反らした。

「悪くは無いけど‥涼花ちゃん、俺のアパート知らないでしょ?」


「ふ」

「ふ?」

「ふふふ」

「ふふふ?」

「ふはははっ! 実はこの街に伝説の探し屋と言う人が居るのよっ!」


「‥本当に?」

「その人に頼めば、アンタのアパートなんて一発なんだからね!」

うーん、その探し屋、結構な値段するよ?

涼花ちゃんには料金払えないんじゃないかな‥。

当人が言うのだから間違いない。


「‥勝手に住所特定はストーカーでは?」

「し、失礼ね、人助けなんだから仕方なく、よっ!」

「仕方なく?」

「そうよ! 私みたいな可愛い娘がアンタのアパートに行ったりしたら‥」


と、ここで涼花は急にもじもじとしだす。


「行ったりしたら?」

「ちょっとキケンかもだけど‥行ってあげるんだから」

最期の方は語尾がモニョモニョに成りながら涼花は言った。


「いや、それは大丈夫だけど‥」

「なら安心して行ってあげる」

「いや、それ以前に、風邪ひいてない‥」

「いいから連れて行きなさーーい!」

涼花は遂に癇癪を起こした。


「えー、困ったな‥」

やはり未成年を連れ込むのはまずいだろう。

近隣の住民の目もあるし。


「‥やっぱり襲う気?」

「違うけど‥涼花ちゃんは大丈夫? 親にバレたりしたら‥?」

「え‥♡」

あからさまに嬉しそうな表情の涼花。


「な、なんでハートマーク?」

「責任取ってくれるって事?」

無理矢理アパートに押し掛けられた責任、とは?


「えと、ちょっと探し物しているんだ‥」

一応、言い訳をしてみる。

「それなら手伝うわよ?」

言いながら涼花は付いてくる。


実は俺の能力には制限も色々あって、まず一日に3回程度しか使えず、ちゃんと見るには1時間近い精神集中が必要だ。

もちろんそこまでしなくても、何となくは“見える”からそれで足りる事も多い。

これが、俺が発見率100%を誇る理由だった。


「これは‥」

俺は嘆息した。

どうも今回は勝手が違う。

これまで探して弱い反応はあちこちで感じるものの、どれも過去に居た痕跡の様で、関心の猫が発見できない。


「一体何を探しているの?」

「猫、なんだけど‥」

「飼ってた猫?」

「いや、ちょっと頼まれてね。けど‥」


嫌な予感がした。

実は過去にも人探しで同じ様な経験がある。

結局、その時の探し人は、山で遭難して死亡していた。

そうなると人相や体型も変わっているから、イメージと違ってしまう。

ここ数日、日にちが経つに連れ、反応がどんどん薄くなってゆくのも、その時と同じ感じだ。


こうなると、猫探しではなくて“猫の死体探し”になってしまう。

愛猫の無残な死体を見つけても、飼い主にメリットが有るとは限らない。


“一度依頼主に連絡してみるか‥”


「これは今日は無理だな」

日も落ちて暗く成ってきた。

諦めて今日は引き揚げる事にする。

「え、それじゃ‥」

涼花が期待を込めて俺を見る。

‥別にウチに来ても面白い事は無いんどけどな‥。


「ま、まぁ今日は時間も少し遅いし‥そうだ、あそこのレストランでパフェ奢るから」

「うーん、じゃあそれで‥我慢する」

涼花は渋々頷いた。


‥とりあえず説得に成功したようだ。


結局、涼花は近くのレストランでパフェを食べてご機嫌回復した。

帰り際に持っていたビニール袋を俺に手渡す。


「はい、これあげる。持っておけば、便利でしょ?」

「あ、ありがとう」

「じゃ、またお店でねっ!」

涼花は走って帰って行った。


貰った袋を見てみると‥風邪薬、栄養ドリンク‥それにレトルトのお粥。


本当に俺が風邪を引いたと思って、色々買って来てくれたらしい。

態度は高飛車だが、良い娘なのは間違いない。


と、下の方にガラス瓶のドリンクらしき物が‥これは‥。


“マムシ一番”?!


思わず裏側の効能を見てしまう。

“これで朝まであの娘も夢中”


‥効能なのか、これ?

涼花は意味が分かって買ったのだろうか。

万が一、これを飲んだらヤバかったかも知れない。


やはり涼花を家に入れなくて良かった、と思った俺だった。

猫探しが始まりましたが‥一筋縄にはいかないようです。

お楽しみ頂ければ幸いです。

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