表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ファインド・アイズ (探し屋と女子高生)  作者: てんまる99
銀の糸編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

19/24

思い一夜

探し屋をしている主人公だが、力不足を感じ、ある屋敷を訊ねる。

そこで待っていたのは‥

数日後、俺はある屋敷の広間に正座していた。

向かいには初老の女性が同じくピシリとした姿勢で座っている。

いかにもこの屋敷の主、という威厳の彼女が、風花ちゃんの祖母、新神真礼あらがみまひろさんだ。


そして、俺の隣には風香ちゃんも正座している。



真礼さんは鋭い視線で俺を見て口を開いた。

「“新神”の術を学びたいと言うのかい?」

「はい」

「修行は厳しいよ? 命を落とすかも知れない」

「覚悟‥しています」

「なぜそこまでして学びたいんだい?」

「自分を知りたくて」

「ふーん‥」

女性は俺を確かめる様に見つめた。


「あんたのおかげで風香の件が片付いたのは知ってるよ」

「はい」

「ただ、新神の式は門外不出。どうしても、と言うならお前さんに親族に成って貰う必要があるね」

「それは‥具体的には?」

「新神も今は私と風香だけだからねぇ」

真礼さんは一瞬、思案する。



「お前さんに私の養子に成って貰うか‥」

「‥なるほど」

「そうだ、風香の婿に成って貰おう!」


「げふっ?」

「お祖母様、そ、それはっ!」

俺と風香ちゃんは同時に声を上げた。


最初これはブラフだと思った。

俺の本気を試す為に、敢えて無理な要求を言って‥。

見ると、みるみる風香ちゃんの顔が真っ赤に成っていく。

え、って事は冗談では無い‥?


「い、いや、それは‥」

「風香じゃ不満なのかい?」

「いや、風香ちゃんは良い娘ですけど‥さすがに若過ぎでは‥それ以前に風香ちゃんの気持ちとか‥」

「だそうだ。風香はどうなんだい?」


「えうっ?」

突然話題を振られて混乱する風香ちゃんはしどろもどろになりながら‥

「そ、それは‥私は文句無いですけど‥と言うか、嬉しいですけど‥」

と、とんでもないことを言った。


ちょっ、風香ちゃん、そこは否定しないと‥。


「でも神島さんには涼花さんが居ますし‥」

「なるほど、あの娘かい‥」

真礼さんは一度涼花と会っている。

回想するように口を開いた。

「あの娘は女にしておくのが勿体ないね。あんたよりよっぽど覇気に溢れてるじゃないか」

‥まぁ、それは確かに。


「あの娘は仕事の女房、風香は家の女房で丁度いいね」

うんうんと頷く真礼さん。

真礼さん、今はもう令和ですよ。

一夫多妻はちょっと‥。


「もう、お祖母ちゃん!神島さんが困ってます」

風香ちゃんが嗜めた。

「‥まあ、今すぐとは言わないが」

「当たり前です!」

「精々期待しておくよ」

そう言うと真礼さんは広間を出て行った。


「えーと? これは、OKなのかな??」

戸惑う俺。

「あんな事言ってるけど神島さんの事はかなり買ってるみたいですね」

風香ちゃんはくすくすと笑いながら言った。


「とてもそうは思えないが‥」

「駄目なら最初の一言で追い出しますよ。その‥私の婿にするなんて絶対言いません」

「そ、そう‥?」

「明日からは鍛錬が始まります。頑張って下さいね」

風香ちゃんは少し照れながら微笑んだ。



それから少しして、案内された部屋に荷物を置いた俺は、屋敷の周りを見て回ることにした。

何かあった時に備えて周囲を確認しておくのは、探し屋としての習慣みたいなものだ。


屋敷の周りには雑木林とそこを抜ける路地があり、その向こうには広い水田が広がっている。

逆に屋敷の裏には鬱蒼とした森山が続き、そこから流れ出た川が水田と溜池に注いでいる。


風香ちゃんに聞いた所では、屋敷だけではなくこれらも新神の土地らしい。

合わせると小さな集落ほどもある。

全てを回るのは不可能なので、近場を確認して引き上げた。


その日の夜、風呂が準備出来たと案内され、風呂場に向う。

途中の廊下で風呂から上がったらしい風香ちゃんとすれ違う。

ほんのりと上気した肌に浴衣が似合っている。

ほのかに石鹸の香りがした。


「風香ちゃんもお風呂?」

声をかけたが、なにかに驚いた様子で走り去ってしまった‥。

‥一体どうしたのだろう??


案内された風呂場は立派な男女別々の檜風呂だった。

地元の有力者ということで来客も多いのか、旅館並の設備だ。



風呂を終えて浴衣姿で部屋に戻ると、灯りはダウンライトに替わり、ほの暗くなっていた。

部屋の中央に大きめの白い布団がひかれている。

そこまでは予想通りだったが‥。


「あれ、風香ちゃん?」

布団の脇には白い襦袢を着た風香ちゃんが正座している。

で、改めて布団を見ると枕元が二つ。

こ、これは‥?


「ち、違うんです! これは、その‥お祖母様が‥」

風香ちゃんは顔を真っ赤にしながらあたふたとする。

「真礼さんが??」

「その、何もしなくて良いから、形だけでも同衾した事にしろと。でないと術を神島さんに教える理屈が立たないと言い出して‥」

「そ、それは‥」


俺は真礼さんの真意を測りかね困惑した。

なぜこんな事を‥?

勿論、風香ちゃんの実力ならば、俺が無理やりどうこうできる訳もないのだが‥。


「わ、私は部屋の隅の方で寝ますので‥」

風香ちゃんはそう言って立ち上がる。

「い、いや、風香ちゃんは布団で寝てよ。俺が向こうに行くから」

夜になれば屋内とは言え、かなり冷える。

女の子をそんな所で寝かせる訳にはいかない。


「お客様にそんな真似したら私が叱られます。神島さんが布団で」

しかし風香ちゃんもゆずらない。


「‥‥」

き、気まずい。

形だけでも同衾しろと真礼さんが言っている以上、今取れる選択肢は一つだけだが‥。


と、風香ちゃんは真っ赤な顔で俺の浴衣の裾を摘み、

「わ、私は平気ですから‥その‥一緒に‥」

俯きながらそう言った。

しまった、言うなら俺が言うべきだった。

これ以上言わせるのは可哀想だ。


「そ、そうだな‥じゃぁ俺はこっち向いて寝るから‥」

「はい‥」


俺は布団の外側を向くようにして横になり目を閉じた。

「失礼します‥」

風香ちゃんが背後で布団に入る気配がする。

と、ふわりと背中に寄り添う感触。


「ん?」

思わず声が漏れた。

てっきり風香ちゃんも向こうを向いて寝るのかと思ったが‥。

“大丈夫”ってそう言う??‥いや、まさか。

予想外の事態に混乱する。

鼓動が早まるのが自分でも分かった。



「どうかしましたか?」

「いや、何でもない‥」

風香ちゃんに他意は無いようだ。

ならば大人しく寝てしまえば‥。

「ん‥‥っ」

風香ちゃんの温もりと息遣いを背中に感じる。

まぁ、気にしなければ‥‥。

いや、眠れん!


女子と密着してあっさり眠れる程、俺も出来た人間じゃなかった。


暫く様子を伺うと、風香ちゃんは寝息をたて始めた。

申し訳ないが、俺は布団から抜けて部屋の脇の方で寝よう。

明日から鍛錬を始めるから、全然寝ないのは厳しい。


と、振り返り風香ちゃんの様子を見ると、目尻に涙が滲んでいるのに気がついた。


「母‥さん‥い‥ないで‥」

風香ちゃんの口から悲しげな寝言が漏れた。

涙が目尻から一筋落ちる。


悪夢でも見ているのだろうか。

普段はしっかりしていても、やはり風香ちゃんもまだ少女だ。

あんな辛い目にあって、平気で居られる訳がない。


「もう大丈夫だ‥」

そう言って顔にかかった髪をかきあげてあげる。

今の俺にはこれくらいしか出来ない。


「いか‥で‥」

無意識なのか、風香ちゃんは俺の手を縋り付く様に取った。

これを無理に振り払えば起こしてしまう。

俺は布団から出るのを諦め、風香ちゃんの頭を優しく撫でた。

不思議な事にあれほど激しかった動悸が収まり、温かい気持ちに包まれる。


“今だけでも安らかに眠って欲しい”

そう思いを込めて繰り返し風香ちゃんの髪を撫でた。


恐らく、真礼さんはこうして風香ちゃんが夜うなされているのを知っていたのだろう。

‥俺が一緒に寝れば、こうして突き放せない事も分かっていて‥。


ちょっと思惑に乗せられたみたいで癪だったが、今晩は真礼さんの思惑に乗せられる事にして、俺も眠りについた。


この章は風香ちゃんがヒロインですね‥多分

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ