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ファインド・アイズ (探し屋と女子高生)  作者: てんまる99
銀の糸編

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18/26

决心

主人公の神島譲は特殊な“見る”能力を持ち、喫茶店のバイトの傍ら、探し屋をしていた。

先日も人体発火事件を解決はしたものの‥

人体発火の事件以来、俺は内心焦りの様な物を感じていた。


先日の事件は機転と大西刑事の協力で何とか解決した。

しかし、一歩間違えば、俺も涼花も命を落としていたかも知れない。

今後、厄介な仕事になればそれに関わる危険も大きくなる。

それに対処するだけの能力が俺には足りないのだ。


俺は意を決して、ある人に連絡をする事にした。



翌日、俺は大西刑事の入院している病院の近くのファミリーレストランに居た。

休日の夕方近く、店内はほぼ満席だ。


「急に連絡して申し訳ない」

「いえ、神島さんの頼みならいつでも」

向かいの席に座る風香ちゃんは優しげに微笑む。

少し髪が伸びたせいか、男装の時の雰囲気はもう無い。

むしろ落ち着いている分、年齢より少し年上の少女らしく見える。


「それで、連絡した件なんだが‥」

「はい、陰陽の勉強をしたいんですね」

「必ずしも陰陽、と限った訳でも無いんだが‥。俺は自分のこの能力でさえ、何故使えるかも分からないんだ。それに‥」

「大切な人を守れる様に成りたい、ですか?」

風香ちゃんは興味深げに俺の顔を覗き込む。


「いや、そんな大それた考えじゃ‥ただ、振りかかる火の粉を払える程度には‥成りたい」

「でも、探し屋を辞めようとは思わないんですね?」

風香ちゃんの言う通り、探し屋をきつぱり辞めればトラブルも無くなるかも知れない。

でも、それは‥。


「それは‥‥」

「私もです」

「え?」

「私も陰陽師を辞めようとは思いません。それは私のアイデンティティですから」


風香ちゃんはスッパリと言った。

苛烈な運命を乗り越えてきた彼女は、俺よりもっと自分を見つめて来たのだろう。

その言葉には一切の迷いが無かった。


「うん‥そうだ。言われてハッキリしたよ。探し屋は俺の、俺自身の選んだ自分の生き方で自分自身の価値なんだ」

「はい。私もそれで良いと思います。それに‥」

「それに?」

「神島さんの名前は密かに、かなり広まっています。今更廃業は難しいかも」

「え、そこまで?」

「はい、私も知っていた位ですから。でしたら‥」

風香ちゃんは声を潜めて俺に耳打ちした。



それから数日。

今の所、探し屋の依頼も無い俺は、普段通り喫茶店でのバイトをしていた。

事件もなく平穏な日常‥それはそれで文句のない日々のはずだった。


「どうしたんだい、難しい顔して」

そう言って店主オーナーがコーヒーの入ったカップを差し出す。


今日体調が良いのか、店主オーナーも店に出ている。

今の所、客は居ないので店内は2人だけだ。


俺は受け取ったカップのコーヒーを飲みながら思い出した。

実は以前にも店主オーナーには悩みを打ち明けた事があった。

その時がきっかけで、俺はこの店で働こうと思ったのだ。


店主オーナーはコーヒーの腕を磨くためにどんな事をされましたか?それに迷いは無かったんですか?」

素直に聞いてみた。

店主オーナーほどの腕前になるには、相当の苦労があったと思ったからだ。


「迷いか‥その時の私にはコーヒーしか、無かったからね」

「それは‥どういう?」

「少し長くなるけど、私の昔の話をしてみようか。それが神島君の参考になるかもしれないからね」

「はい、お願いします」


「元々は私も喫茶店をしていた訳では無くってね。趣味でコーヒーを淹れるのが好きだっただけなんだ」

「元は趣味だったんですね」

「うん、淹れたコーヒーを飲んで友人や妻が喜んでくれればそれで満足だった。その時は商社の仕事をしていてね、海外で暮らして居たんだ」

「え、店主オーナー、商社マンだったんですか?」

世界を飛び回って仕事をする商社マンは今の店主オーナーのイメージとはかけ離れている。


「でもその頃の現地は、あまり衛生状態が良くなくてね、妻と子供を病気で亡くしてしまった」

「そんな事が‥」

「その時はとても苦しかった。自分がこんな仕事で無ければ、妻や子供が死ぬことは無かったんじゃないか、と自分を責めたりしたよ。本気で妻達の後を追う事も考えた」

俺の質問で店主オーナーに辛い過去を思い出させてしまったのでは無いだろうか。

自責の念で息が苦しかった。

でも店主オーナーは言葉を止めない。



「その時に私を支えてくれたのが、コーヒーだった。何もかも無くした私でも、淹れたコーヒーを美味しいと言ってくれる人達が居て‥その笑顔のおかげで生きる事ができた。だから私はもっと美味しいコーヒーを煎れられる様に、世界中旅して勉強したよ。それしか無かったからね」

「それでコーヒーの腕を磨かれたんですね」


「ああ。皮肉な事に妻の生命保険でまとまった金が手に入ってね。その時だけは悩んだかな。妻の命の代償とも言えるこの金を、コーヒーの腕を磨くことなんかに使って良いのか。もっと有効な使い道があるんじゃないか、ってね」

「それは‥わかります」


店主オーナーの気持ちは痛いほど分かる。

俺も同じ事があれば悩むだろう。


「でも、私にはコーヒーを淹れる位しかできなかったし、ある時こう思ったんだ」

オーナーは一瞬目を閉じた。


「1杯のコーヒーはほんの小さな笑顔をあげることしかできなくても、それを何千杯、何万杯と続ければ、それは大きな幸せをあたえた事になるんじゃないか、ってね。それが一番妻の望む事だと思っているよ」


俺は店主オーナーについてきて良かったと、この時ほど思った事はない。

だから店主オーナーのコーヒーはあれほど温かく、幸せな気持ちにさせるのだ。


「そう思ってからは、コーヒーの腕を磨くのを辛いと思った事は無いよ。コーヒーを淹れるその時が、一番、妻達を身近に感じるんだ。これからも身体の動く限りコーヒーを淹れ続けるつもりさ。参考になったかな?」


「はい、とても!」

やはりこの人に聞いて良かった。

俺は意を決してある事を店主オーナーに打ち明けた。


新章の始まりです。

今回はちょっと雰囲気の違うお話になります

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