エピローグ
何とか事件を解決した主人公達だったが、大西刑事が癌であることが発覚する。
事件から1週間ほど経ち、俺と涼花は病室の前に立っていた。
勿論、大西刑事の病室だ。
俺達は担当医の回診が終わるのを待っている所だ。
「涼花は体調は大丈夫なのか?」
「寝てただけだもん、全然大丈夫」
涼花は微笑んだ。
銀髪の少年改め、風香ちゃんが指摘した通り、大西刑事は末期の癌で、既に医者に余命宣告を受けていた。
それで心残りだった孫の消息を探す気に成ったのだろう。
だが、大西刑事はもう‥‥。
と、病室の扉を空け、担当医が出てきた。
かなり渋いと言うか、難しい顔で俺達をジロリ、と睨む。
「明日には病室を移って貰いますので‥」
担当医はそれだけ言うと次の病室に向かって行った。
医者と入れ替えに病室に入る。
ベッドに横になった大西刑事はとても‥とても‥
‥元気だった。
「おお、来たのか!」
大西刑事の声に合わせ、ベッド脇の風香ちゃんがペコリ、とお辞儀をした。
「体調は?」
「この通り。明日には一般病棟に引っ越しだ」
ガッツポーズをする大西刑事。
数日前まで余命幾ばくもなかったとは思えない。
「元気すぎるわよ‥」
その様子に花束を持った涼花も呆れ気味だ。
これほどの回復には勿論、理由がある。
俺と風香ちゃんの協力で癌の病巣を厄払いしたのだ。
風香ちゃんが破魔の呪をかけた細い針を、俺が大西刑事の体内を“見て”、病巣にミクロン精度で刺す。
これをひたすら繰り返して癌細胞を呪術的に退治した。
ある意味究極の鍼治療と言える。
成功するかも分からない賭けだったが、大西刑事のたっての希望で挑戦する事になった。
それでもここまで回復したのは、大西刑事の頑健な体のおかげである事は間違いない。
「お花、変えてくるね」
「あ、私が‥」
風香ちゃんが花瓶を取ろうとするのを涼花が制する。
「良いのよ、お爺ちゃんと一緒に居てあげて」
涼花はベッド脇の花瓶を持ち、出て行った。
「しかし‥全然気が付かなかったよ‥」
改めてベッド脇の風香ちゃんを見る。
彼女が大西刑事から依頼されていた孫娘だった。
依頼当初に容姿が変わっている事を予想して、人形を手掛かりにする事に決めたので、こんなに近くにいたのにすっかり見落としてしまった。
不覚だ‥。
黒髪に戻し、女の子らしいワンピースを着た風香ちゃんにはあの銀髪の少年の面影も無い。
「しかし、なぜ男装を?」
「女だと知られたら、伯父に嫁入りさせられてしまうので‥」
「ああ、あの‥」
益子の屋敷にいた男を思い出す。
確かにあの男ならやりかねない。
「祖母も匿ってくれましたし‥」
「なるほど‥暫くはこっちに居るのかい?」
「はい、退院までは面倒見るようにと祖母も言ってます」
「良かったな、おっさん」
回復したとは言え、抗ガン剤の治療はまだ暫く続くらしい。
「もう駄目だと諦めていたんだが‥わからないものだな」
大西刑事は頭を掻いた。
「そうだ、これを返しとく」
俺は大西刑事から預かっていた預金通帳を渡した。
「お前さんのおかげでこうして孫とも会えたんだ。受け取ってくれ」
「いや、だからこそ、これからも金は必要だろう」
「そうか‥分かった。何か有ったら言ってくれ」
「ああ」
暫く談笑してから俺達は病院を出た。
「刑事さん、良かったね」
「もっと早く人形を見つけていれば、犠牲者も減らせたかも知れないが‥」
結界を壊し、犠牲者を出す形でしか解決できなかったのが悔やまれる。
「あっ!」
突然、涼花が声を上げた。
「どうした?」
「結局、温泉に行けなかった!」
「それどころじゃ無かったからな」
「ぶー」
「今度、おっさんが元気になったら祝いで旅行にでも行こう」
「えー! 良いけど、それって結構先じゃない?」
「半年位かな‥」
「待てないよぉ」
「それまでは銭湯で我慢かな」
「そーゆー問題じゃ‥」
そうして涼花をなだめながら歩いていると、麒麟と美波に出会った。
「あ、涼花と彼氏じゃん」
「いや、彼氏では‥」
「婚前旅行はどうだったー?」
「もう色々あって大変だったわよ」
‥全然聞いてない。
「いいなー、ね、私ともしよ、婚前旅行」
麒麟は俺の顔を覗き込む。
「ちょっと!」
突っ込む涼花。
婚前旅行って意味分かってるのかな‥。
と、俺の背中を美波か突いた。
「ん?」
「私はジェットコースター乗りたい」
‥それは旅行ではなくて遊びに行くでは‥。
まぁ、でもそうやって、あれこれ話しながら帰るのも悪くないな、と俺は思った。
吹く木枯らしにもどこか春の予兆を感じていた。
これにて第二章完結です。
読んでいただきありがとうございます。
次にこのまま三章に書き続けるか、えれくとろんあーく3にするか悩み中です。
どちらを詠みたい、とかご意見、ご希望あれば作品コメント等でぜひお聞かせ下さい、




