知恵比べ
銀髪の少年と黒幕の屋敷を訪れた主人公は大西刑事救出のため、人形を渡す事を選択したが‥
蔵を出た所で俺と大西刑事は男達に取り囲まれた。
「ふう、約束が違うな」
「一体、どういう事態なんだ?」
戸惑う大西刑事。
まぁ、一筋縄では行かないとは思っていたが。
「‥‥」
男達は隙の無い構えでジリジリと間合いを詰める。
恐らく大西刑事を捕らえたのもこの連中だろう。
この人数では力技での突破は難しい。
と、俺の目前に白い大きな折り紙の様な物がポトリと落ちて来た。
「なんだ?」
戸惑う大西刑事。
だが、男達は気が付いた様だ。
「式か?」
「気を付けろ!」
一斉に身構える。
俺は落ちて来た式の上に乗っていた小型の銃を素早く取り上げる。
だがそれは、派手な色使いの玩具の水鉄砲だった。
「水鉄砲か? それでなにを‥?」
男達に戸惑いが広がる。
まぁ、それも狙い通りだ。
「こういう事さ」
水鉄砲の噴射をスプレー状にして周囲の男達に振りまく。
一瞬身構えた男達だが、水だと知って警戒を解いた。
「何のつもりだ」
「からかっているのか?」
だが、その直後、全員が辺りを見回す。
「くそっ、何も見えんぞ」
「毒ガスか?」
「なにをした??」
「うおっ?」
混乱する男達。
バランスを崩し倒れる者、それを攻撃と勘違いして殴る者‥大混乱になる。
その隙に俺は大西刑事を連れ、その場を離れ屋敷に向う。
「おい、何をしたんだ?」
大西刑事が訊ねる。
「企業秘密だ。それよりこれ」
俺は式から取り上げたもう一つの銃を大西刑事に渡す。
見たところは本物の銃に見えるが‥。
「これは、エアガン?」
「ああ、物は市販のエアガンだが、ガス圧をギリギリまで上げて、BB弾の代わりに鉄球が詰めてある。それで‥」
俺は10mほど先にある屋敷の軒先に着いている鳥の飾りを指差す。
「‥あれを撃ち落としてくれ」
「飾りを?」
「急いでくれ」
「あ、ああ」
大西刑事は戸惑いながらも何発目かで飾りを撃ち落とした。
さすがは現役の刑事だ。
「次はあれだ‥」
今度は塀の屋根に付いた飾りを打ち落として貰う。
「お、おい、こんな事してる場合じゃ‥」
「すまんが、今は従ってくれ。これで最後だ」
屋敷門に行き、屋根瓦の先にある紋章を指差す。
大西刑事刑事は苦戦しながらも10発程でそれを破壊した。
「器物損壊の現行犯だぞ?」
「証拠が残れば‥だろ?」
「なに?」
「そろそろ始まってる頃だ‥」
俺達は屋敷に戻り広間に向かう。
広間は地獄の様だった。
ボディガードの男達の怒号が飛び交い、既に何人かは
炎に包まれ、床で転げ回っている。
男達の間を縫うように和服の女性が滑るように移動している。
和服の女性に見えるのは、あの人体発火の呪いだ。
彼女が冷やかな微笑みを浮かべているのが、一層凄惨さを増していた。
彼女に息を吹きかけられた男がまた一人炎に包まれる。
俺には見えるその女性の姿も、彼らには見えないのだ。広間はますます混乱するだけだった。
「おいっ! 広間から出るんだ! 逃げろ!」
思わず声をかけた。
だが、混乱する彼らには俺こそが犯人に見えたのだろう。
「お前がっ!」
「こいつを止めろ!」
残りの男達が一斉にこちらに向かって来た。
「神島さんっ!」
倒れていた少年は、起き上がると共に数枚の紙を上に投じた。
“ひゅ! ひゅ!”
紙は鋭い音と共に矢となって次々と男達を襲う。
「うがっ」
「ぐはっ」
矢に射られた男達がバタバタと倒れる。
少年の符術は相当の物の様だ。
もはや広間で無事なのは俺達とベッドの男だけだった。
男は立ち上がった少年を指差して叫んだ。
「お、お前、気を失って?」
「演技ですよ」
「な、なぜ‥」
「素直に渡したら、伯父さんは疑うでしょう‥って神島さんが、ね」
「悪いが、知恵比べはこちらが上だった様だな」
俺は男に言った。
「それに、なぜここに呪が? け、結界があるんだぞ??」
「悪いが結界は破壊した」
「‥どうやって‥」
「まぁ、“見える”からね。隠しても無駄なんだ」
そう、大西刑事に先ほど壊して貰ったのは結界の要なのだ。
「く、来るなっ」
男は女性を見てベッドから逃げようとするが、下半身が悪いのか、降りることも出来ない。
女は微笑みながら男に向って歩いてゆく。
「叔父は生来足が悪いんです‥」
少年は言った。
じわじわと呪は男に近づき、ふうふうと何度も息を吹きかける。
まるで、火起こしをしている様な仕草だ。
「やめろ、やめろっ!」
「始まったんですね‥」
「ああ、‥見るか?」
「はい」
俺は指の先に歯を立て傷を付けると、その指を少年の頬に当てた。
「‥母さん」
呪の姿を見た少年は呟いた。
「‥そうか、あの女性は」
「はい‥呪になっても‥あれは母の姿です」
と、遂に男が炎に包まれた。
またたく間に全身が炎に包まれる。
「お、おいっ!あれはっ?」
今度はそれを見た大西刑事が驚きの声を上げる。
「口外禁止だぞ」
「あ、ああ」
俺は大西刑事の頬にも指を触れた。
「‥見えるのは一分ほどだ」
これで大西刑事にも呪の姿が見えるはずだ。
大西刑事は呪の姿を見ると声を上げた。
「加奈? 加奈だあれはっ」
「え?」
その声を聞いた少年がこちらを向く。
ここで初めて少年と大西刑事は顔をみあわせた。
「あれ?」
「お前‥風香?」
「大西のお爺ちゃん?」
「なに?」
3人が戸惑いの声を上げる中、炎は屋敷の天井を焦がし始める。
満足したのか、和服の女は居なくなっていた。
「お、おい、火事に成るぞっ」
大西刑事が叫ぶ。
「!」
少年は懐から小さく畳んだ紙を取り出す。
それに息を吹きかけると、まるで生きている鳥の様に羽ばたき、ベッド脇のテーブルから人形の箱を掴んで戻ってきた。
「なかなか便利な物だな」
俺は嘆息した。
「‥逃げましょう。こっちです」
少年が先導し、俺達は屋敷から外に逃げ出した。
少年の案内で裏口から抜け出した。
既に炎は屋敷全体に燃え移り、轟々と燃え盛っていた。
「全部燃えてしまうな」
「仕方ないですよ」
「あ、ああ」
苦しそうに返事をした大西刑事はそのまま膝をつく。
「お、おい、大丈夫か?」
「ああ、少し休めば‥」
大西刑事は俺の肩を借りて立ち上がる。
「嘘、ですよね?」
その様子を見ていた少年は大西刑事に言う。
「癌ですね? これは」
少年は大西刑事の顔を見て言った。
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