分家の男
主人公と銀髪の少年は今回の黒幕である男の屋敷に向かった。
それから数時間後。
俺と少年は益子にいた。
目の前の屋敷は少年の家程では無いが、かなり大きい。
門扉の明かりが灯り、警備員が立っている。
大臣並みの警護と言っていいだろう。
夜中の訪問にも関わらず、俺達は咎められることもなく大広間に通された。
広間の中央には大きなベッドがあり、一人の男が上半身を起こした状態で待っていた。
周囲には護衛だろうか。
数人の体格の良い男が立っている。
若者は少年とも顔見知りなのか、訪れると軽く会釈をした。
「伯父さん‥まさか貴方が黒幕とは‥」
「ああ、誤解だよそれは。あの事故だって私は何もしていない。ただ家の存続を願う人から、この人形を引き継いだだけさ」
「誰なんですか、それは」
「‥それは言えないな。君が知る必要もない」
「こんな人形を揃えても、もう今更でしょう」
「それは君が世間を知らないからだよ。“新神”の名前は一部の人達には未だに有効なんだ。その人達の力を使えば、再び一族を復興させる事だって可能さ」
ベッドの男は大げさに手を広げて言った。
少年を制し、俺は男に訊ねた。
「大西刑事はどこだ?」
「ああ、あの人はあれで本当に刑事なのかい? 屋敷を探っていたから捕まえて蔵に閉じ込めてある」
「人形を渡せば解放して貰えるのか?」
「約束するよ」
「俺達は呪い塚の解呪が目的だ。それに協力して貰えるなら」
「勿論だとも」
「それで良いか?」
俺は少年に訊ねる。
「やっぱり駄目だ! 信用出来ない」
少年は首を振った。
少年の気持ちも分かる。
だが、今は大西刑事を助けるのが先だ。
俺は懐から取り出した小さなスプレーを少年に向けて噴射した。
“プシュ”
微かな音が聞こえ、少年は倒れた。
慌てて駆け寄ろうとする若者達を男は身振りで制した。
「催眠スプレーかね? 良いのかい、そんな事しても」
「ここに来る前に話はつけてある。きっと間際で不安に成ったんだろう」
言いながら俺は少年のポケットから木箱を取り出し、男に渡す。
男は箱を開き、中の人形を確認すると頷いた。
「いいだろう。これが、蔵の鍵だ」
俺は男から鍵を受け取り、訊ねた。
「この少年はどうする?」
「後で家に送らせるよ。手荒な事をするつもりはない」
「分かった」
答えると俺は鍵を手に蔵へと向かった。
広い庭の反対側、敷地の奥に蔵が建っていた。
受け取った鍵で閂の錠を開けると、分厚い扉を開き、中に駆け込む。
「おっさん!」
「お、おお‥来たのか‥」
見ると大西刑事は顔にいくつかあざがある。
現役の刑事にこんな事をすれば普通は大問題だが、揉み消すか、抗弁出来る自信があるのだろう。
「随分と酷くやられたな」
言いながら、大西刑事を後ろ手に縛っている縄をほどいた。
「立てるか?」
肩を貸して立ち上がらせ、蔵から出る。
その俺達の目前に体格のよい男達が立ち塞がった。
「すまないが、帰す訳にはいかないな」
男の一人が言った。
どうやらあの男は“揉み消す”方を選んだらしい。




