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ファインド・アイズ (探し屋と女子高生)  作者: てんまる99


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探し屋

少し連載の仕方を変えて、書き溜めてからアップするようにしました。

なお、お話に既存のキャラクターが出てきますが、パラレルな存在だとお考え下さい。

都心から少し外れた繁華街、中央通りから一本外れた雑居ビル。

その一階に裏寂れた喫茶店が有った。

夕方の時間でも客は少ない。

そう言った感じが渋くて良い、と感じる人も居れば、潰れそう、と感じる人も居るだろう。


俺は神島譲みかしまゆずる、この店の店員バイトだ。

縁あってこの喫茶店で働かせて貰っている。

近くのアパートで暮らし始めてからもう2年になる。

ここのバイト歴も同じく2年。

さほど混まない店だから、一日暇な時もある。


そんな喫茶店には一層珍しい、女子高生の客が訪れた。


“カランコーン”


ドアに付けたカウベルの音ともに、元気良く駆け込んでくる。


「こんにちわー」

これまた、寂れた店に似合わない明るい声。

「いらっしゃませ」

が、迎える俺の店員姿を見てトーンが一段下がった。

「‥なーんだ、今日は外れの日かぁ」


この女子高生は、神崎涼花かんざきすずか

近くの高校に通う生徒で、小柄、ちょい猫目、背中まであるツインテール、そして高飛車。


何が良いのか、学校帰りにちょくちょくこの店に通ってくる。

常連と言っても良いだろう。


でも他の店員に聞くと、そんな客は見たことが無いと言う。

‥まさか俺にだけ見える幻覚とかじゃ無いよな‥少し不安になる。


が、こんな元気な幻覚は無いだろうと、思い直す。



「外れとは失礼な‥」

こちらもついフランクな言い方になる。

「だって、コーヒーが美味しく無いんだもん」

「ぐはっ!」

1のダメージを受けた。


「そりゃ、店長オーナーの煎れる珈琲は絶品だけど‥」

とても同じ豆と道具で煎れたとは思えない。

バカ舌を自認する俺でも違いが分かる。

「自覚はあるのね‥」


「ど、努力はしてる‥」

言い訳しながら店の奥の席に案内する。

店内が見渡せるこの席が彼女のお気に入りだった。


「まぁ、チキンライスは合格点‥かな?」

「オーダーはチキンライス?」

「それと、アメリカン」

文句を言いながらも毎回コーヒーは注文するのが彼女なりの美学、らしい。

「承りました」

オーダーシートを持ってカウンターへ戻る。


今日は店長が休みなので俺だけのワンオペだ。

それでも回るくらい客が少ないって事でもあるが‥。


数人の客が来て、テーブルで思いおもいに時間を過ごしていた。


日も暮れ、そろそろ閉店しようかと言う頃、一人の若い女性がカウンターに座った。


歳は20歳位だろうか。

何処か暗く影のある雰囲気。

容姿は整っているが、うつむき加減のせいでそう感じるのだろう。


「いらっしゃいませ」

メニューを差し出すが、女は開きもせずに俯いたまま注文する。

「アイスブレンドを1つ」

俺にしか聞こえない程の声だ。

「かしこまりました」

答えて俺は“ブレンド”コーヒーを淹れる。


この店に“アイスブレンド”は無い。

いわゆる隠語なのだ。

「閉店したら30分後に」

コーヒーカップを置きつつ俺は言った。

「わかったわ」

女はコーヒーを飲むと、店を出て行った。



それから2時間程が経ち、閉店して明りの落とした店内。

カウンターには先の女性客が座っていた。


「この子を探して欲しいの」

そう言って女性客がカウンターの上に置いたのは、何枚かの猫の写真だった。

「‥猫?」

「そう」

「依頼料は承知しているか?」

「もちろん」

「なら、いいが‥」

改めて写真を見る。

女性が抱いているものや、別の人間が抱いているものもある。

猫は懐いているのか、気持ち良さそうに丸まっていた。


「正式な依頼なら受けるが‥良いのか? 探し物は人間でも猫でも同じ値段だ」

「構わないわ」

「飼っていた猫か?」

「ええ、ある日、突然居なくなったの」

「分かった。これに記入してくれ」


俺は依頼書を渡した。

住所や氏名、探し物のリスト等、簡単な内容だ。

これが俺のもう一つの仕事、探し屋だ。

法に触れない限りどんな物でも探す、が売りだ。

今までの発見率は100%‥つまり、どんなものでも絶対に見つけている。

それが人であれ、物であれ、形がある物なら必ず。


最近はどこからかその噂を聞きつけて、年に数件、こんな依頼がある。


「手付は即金で⅓、残りは見付けたら報告の前に払って貰う」

「分かったわ」

女性客は札の入った封筒をカウンターに置いた。

手付金だけでも結構な金額だ。

若い女性がポン、と払える額ではない。

水商売でもしているかも知れないが‥少し気になった。


「2週間以内に連絡先に一度報告をする。継続するかはその時判断してくれ」

「分かりました。お願いします」

女性は深々と頭をさげ、店を出て行った。


その様子に不信感が募った。

普通は金を払う前に、どのぐらいで見つかりそうか、等と目安を聞いてくる。

少なく無い額を払うのだ。

待っている間は不安にもなる。

その期間がどのくらいになるか、気になるのは当然だ。


女性の態度は丁寧ではあったものの、探す熱意を感じないのは確かだった。

もしかすると、誰かの代理で依頼してきたのだろうか?

人探しであれば、そういったことも過去にはあった。

しかし‥「猫」なんだよな‥。

わざわざ猫を代理人を立てて探すだろうか?

少し思案に暮れる俺だった。


読んだ感想とか頂ければ幸いです。

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