第10話 夜明けの救助隊
「お~い、誰かそこにいるのか」
その声が聞こえた瞬間、反射的に叫んだ。
「助けてください!!」
「今どんな状態なんだ?」
「腰がヤバいです!」
そう答えると、発見してくれた人はすぐに救急車を呼んでくれた。
約5時間、激痛と死の恐怖に耐え続け、ついに救助の瞬間が訪れたのだった。
救急車が到着し、状況を把握していたのか警察や消防隊も出動していた。
現場は想像以上に厳しいものだった。
高低差5メートル以上の下り坂、大破した車体。
救護者である僕はほとんど動けず、さらに車のドアはどちらも使用不能。
助手席側のドアは車体が大きく歪んでいて完全に開かない。
運転席側のドアは、本来ならわずかに開く余裕があったはずだが……
車が止まった位置に、コンクリート資材がドアのすぐ横、わずか20〜30センチの位置に食い込むように立ちはだかり、結果として左右どちらのドアも全く開けない状態になっていた。
進入口は後方のみ。
しかし助手席側の後ろ部分は大きく潰れ、隊員が一人入れるかどうかの狭さしかない。
雨はいつの間にか止んでいたが、僕の状態は悪化する一方で、まさに一刻を争う状況だった。
バックガラスを割り、なんとか脱出経路を作るものの、重症者を安全に引き出すには、あまりに狭すぎた。
車のピラーを切断する案も出たが、
「患者の状態が持たない」と判断され、すぐに却下された。
隊員たちの切迫したやり取りが聞こえる…
別の隊員から何度も状況を説明してくれたが、 伝えられたのは「このままでは救出が難しい」という非情な現実だった。
そこで僕はある決断をする。
「状況は理解しました。なら、僕がなんとか後方まで這い上がりますので、あとはお願いします。」
自力で這い上がり、脱出を試みるしかなかったのだ。
腕で掴める場所を必死に探し、腰の激痛で意識が白く飛びそうになりながらも、腕だけで身体を引き寄せ、少しずつ全身を引き上げていく。
「うああああああぁぁぁぁぁーーー!」
叫ばずにはいられなかった。
涙が勝手に流れ、激痛で息も途切れながらも腕を伸ばす…
わずか数十センチが永遠のように遠かった。
それでも残された最後の力をすべて指先に込め、リアドアのフレームを掴んで強引に体を引き上げ、ようやく上半身が車内から外へと解放された。
すぐに隊員たちの腕が伸び、僕を引き上げながら身体を支えてくれた。
「よく頑張った!」
「もう大丈夫だ、助かったぞ」
「すごいぞ!ほんとに」
励ましの声に包まれながら、気絶寸前の状態で担架に乗せられる。
救急車へ運ばれる間、見上げた朝方の空が、滲んだ涙の向こうで白く輝いて見えた。
《次回予告》
病院に向かった先にあったのは
死神との最後の攻防だった。
はたして生き残る事はできるのか…
次回 『第11話 生と死の境界線』
生か死か、運命がここで決まる。




