9.5話【Ifストーリー】助からなかった命
あの日、僕が明日を選べなかった世界線の話。
第9話「クラクションが呼んだ救いの音」の対比となる、Ifストーリーです。
もしあの瞬間に、ピラーカバーが外れなかったら……。
これは、あの夜の間近にあった「もう一つの結末」のお話です。
フロントピラーにぶら下がっていたピラーカバーは、事故の衝撃で一部外れたまま、かすかに揺れていた。
「これしかない…!」
最後の賭けだと悟った僕は、激痛に悲鳴を上げながらも、残った力を指先に込めてカバーを引きちぎろうとする。
だが、思った以上に硬く、びくともしない。
「取れろっ……! 頼む……!」
身体の奥から搾り出すように力を込めた。
……しかし、ピラーカバーは外れることなく、虚しく揺れ続けるだけだった。
他にも状況を打破しようと必死に抗ったが、動かない身体と全身を貫く激痛を前に、できることは何一つ残されていなかった。
あれからどれくらいの時間が経ったのだろうか…
時折、遠くを通り過ぎる車のライトが、車内を一瞬だけ白く照らしては消えていく。
その光が通り過ぎるたび、僕の命の灯火も一緒に削り取られていくようだった。
僕は力も精神も尽き果て、意識も途切れそうになる。
「もう……ダメかもしれない……」
意識がゆっくりと、深い闇の底へ落ちていく…
死神が囁く
「もう終わりだ…楽になればいい……」
抗う力は、もはや残されていなかった。
僕はその声に導かれるように、瞼を閉じて何も考えられなくなった。
周りの景色も、身体を貫いていた痛みも、何もかもが消えていく……
そして、僕はそのまま力尽きるのであった。
ほんの小さな行動で未来を変えられる。
未来は、ほんの一つ欠けただけで失われる。
「助かった世界線」と「助からなかった世界線」その生死を分けたのは、
絶望の中でもがき続けた自分自身の「選択」だったのかもしれない……
画面が暗転し、スタッフロールのように文字が流れ出すが、途中でノイズが走る…
『……本当に、これで終わりでいいのか?』
『未来を諦めるのか?』
(止まらない拒絶の選択肢。文字との戦い。)
――いいえ。僕は、まだ生きている。
To be continued in Episode 10……




