第2章 バーHEART
彼女は猫を部屋の外に追い出し、服の山をごそっとベッドに放り投げた。カジュアルな服を引っ張り出して着替えると、鏡の前に立って長い金髪を整えた。高いポニーテールに結ぼうと腕を上げた瞬間、何かが目に入り――思わず悲鳴を上げた。
「どうしたの?」
フェアリーは心配そうに二本足で立ち上がり、ドアの反対側の下から三分の一あたりに前足をちょこんと押し当てた。
「寝てる間にタトゥー入れたの?!」
「入れてないよ」フェアリーはあっさり答えた。
リアは怒りに任せてドアを開け放った。フェアリーはそのまま部屋に転がり込んだ。
「じゃあこれは何よ?!」
リアは左手首を突き出した。内側には、大きくて青い、複雑なハート型の模様が刻まれていた。
「それはフェアリーブランドだよ!」
フェアリーは楽しそうに言った。
「私に焼き印したってこと?!」
「ううん、絆が刻んだの」
「消して」リアは眉をひそめて命じた。
「無理だよ」
「私、教師なんだけど。タトゥーなんて絶対ダメだから」
「タトゥーじゃないってば」
「でも見た目は完全にタトゥーじゃん!」リアは泣きそうな声で叫んだ。
フェアリーはぴょんとリアの腕に飛び乗った。リアは反射的に赤ちゃんのように抱きかかえる。
「もうバーのオーナーなんだからさ」
フェアリーはゴロゴロと喉を鳴らし、尻尾を気まぐれに揺らしながら言った。
「好きな格好でいいんだよ」
「そんな簡単な話じゃないの。私、大人なんだから。支払いもあるし。今日お客さんが来るわけでもないし、仕事を辞める手続きもしなきゃいけないし、アパートの解約と公共料金の手続きもあるし…」
「もっと撫でて〜」とフェアリーが割り込んだ。明らかに撫でられるのを楽しんでいる様子だった。
「ここがそうなの?」とリアが言った。「これがバー?」
ようやく部屋をちゃんと見渡した。
彼女の荷物が散らばった下には、硬い木の床があり、それが壁の半分ほどの高さまで伸びていて、その上はクリーム色の壁紙と塗装された天井だった。ベッドの横には小さな窓があり、さらに大きな窓はバルコニーに面していた。
「あのドアの向こうにはリビングと小さなキッチンがあるよ。あっちのドアはワードローブ。ここは2階で、もう一部屋は好きに使っていいし、お風呂とトイレと洗濯スペースもその隣にあるよ。」
「1階は?」とリアが尋ねた。
「そこがバーだよ。」
「見に行きたいけど…その前にシャワー浴びたい。」
リアはベッドの上にあった服の山からタオルを一枚引っ張り出し、リビングへ向かった。フェアリーの説明からすると、一番奥のドアがお風呂だろうと見当をつけて、そのまま廊下を進んだ。ドアを開けると、フェアリーがすぐ後ろにいた。
「外で待ってて」と言って、ドアをバタンと閉めた。
そこは日本の家庭によくあるユニットバスだった。ダークブラウンの床に、バスタブ、そして銀色の蛇口。リアは服を脱ぎ、洗濯機の上に置いて、シャワーの水を出そうと蛇口をひねった。
……水が出ない。
リアはドアを開け、手だけ伸ばしてタオルを取り、すぐにドアを閉めた。数秒後、タオルを巻いた姿で再び現れ、フェアリーを睨みつけた。
「水が出ない。」
「うん。」
「知ってたの?」
「うん。」
「水が出ないって知ってたのに、なんでシャワー浴びさせようとしたの?」
「見たかったのかなって思って。」
「脱いじゃったよ。」
「ロールプレイかなって思った。」
「このバカ猫!」リアは苛立ちを露わにした。「ねぇ…魔法で水出せないの?」
「水の妖精なら出せるよ!」フェアリーは嬉しそうに言った。
リアはふと何かを思い出して、洗濯機のボタンを数回押した。
「電気は?」
「風の妖精。」
「ガスは?」
「火の妖精。」
「……あんたは何の妖精なの?」
「私は大地の妖精!」と誇らしげに答えた。
「で、何ができるの?」
「いい匂いにできるよ!」とフェアリーは笑顔で言った。
「オレンジの匂いって、あんたの仕業?」
「そうだよ!」と嬉しそうに答えた。「起こそうと思って!」
「目覚ましで起きた気がするんだけど。」
「チームプレイだよ〜」とフェアリーがむくれた。
「他に何かできるの?」とリアが尋ねると、フェアリーの様子が一変した。ふわっと宙に跳ね上がり、リアの目の前で、ピンク色に光るふわふわの小さな玉に変身した。小さな羽も生えている。
「じゃーん!」少し高い声で言った。
「フェアリー?」リアは唖然とした。
「すごいでしょ?これが私の本来の姿!」
「……は?」リアの目が虚ろになる。
「さあ、下に行こう!」とフェアリーは言い、そのまま床をすり抜けて姿を消した。
リアはしばらく、今見たものと聞いたことを処理する時間が必要だった。数秒後にようやく口を開いた。
「着替えなきゃいけないんだけど!」聞こえているかもわからないまま、フェアリーに向かって叫んだ。
リアは螺旋状の木製階段を見つけて、ゆっくりと降りていった。手すりをしっかり握り、一段一段慎重に足を運びながら、目線が2階の床より下に沈む。
暗かった。奥の大きなショーウィンドウから光が差し込むはずだったが、外側は雑草に覆われ、内側はホコリで曇っていて、かろうじて部屋全体が空っぽだとわかる程度だった。厚い木製のバーカウンターも、半分飲まれた埃まみれのボトルが並ぶ棚も、装飾も──何もなかった。
「ちょっとお金をかければ、どうにかなるよ。」
「ちょっとどころじゃないでしょ。私の貯金じゃ全然足りないわ。」リアは周囲を見回しながら、衝撃と落胆を滲ませて言った。「バーカウンターすらないじゃん。これが“バー”って言ったじゃない。」
「リアがバーにしたいからバーなんだよ。もしペットショップにしたいって言うなら、それでもいいし。」
「でも、あなたには大した値段つかないと思うけど。」リアは皮肉を言った。
妖精は目に涙を浮かべ始めた。
「ごめん、そんなつもりじゃなかった。」リアは猫のような姿に戻った妖精を抱き上げた。「売ったりなんてしないよ。」妖精は少し元気を取り戻した。「あげるだけ。」
妖精は不機嫌そうに体をくねらせてリアの腕から逃げようとしたが、リアはぎゅっと抱きしめたまま離さなかった。妖精はあきらめて、ぬいぐるみのように脇の下からぶら下げられた状態で運ばれることにした。
リアは部屋の周囲を歩きながら、空間の一つ一つをどのように変えていくか想像した。頭の中では、ドアのベルが鳴って新しいお客さんが少し緊張しながら入ってくる音、常連たちの会話のざわめき、スタッフが注文を急いでこなす音が聞こえた。キッチンになるはずの場所からは、故郷の料理の香りが漂ってきた。そして、リアが最も長く時間を過ごすことになるであろう場所に立ち止まったとき──彼女の想像の中で出来上がったバーの裏から、温かいバニラの香りがふわりと漂った。
「それ、あんたから出てるの?」リアは妖精を持ち上げて、その柔らかい毛に鼻をうずめた。
「うん。私たちの感情がリンクしてるから。」
「ここに来る人たちが、安心できて、まるで家みたいに感じられる場所にしたいんだ。」リアは妖精を抱きしめながら言った。
「わかってるよ。」妖精はゴロゴロと喉を鳴らした。「絶対に叶えようね。」
「大工を知ってるよ。この空間のリノベーションについて相談してみよう。何ができるか、いくらかかるかも分かるはず。」妖精のゴロゴロ音が深く響いた。「でも、ブランドがないと妖精界には来れないかもしれない。」
「妖精界って何?」と妖精自身が聞いた。
「ここなの?」とリアが聞き返す。
「今いるのは日本だよ」と妖精が答えた。
「えっ……」リアは妖精を落とし、慌ててドアの方へ走った。少し力を入れると、ドアは渋々半分だけ開いた。リアは体重をかけて押し開き、ついには壁にぴったりつけた。
外をひと目見ただけで、彼女にはすぐにわかった。
「ここ、八津だ」と彼女は断言した。
「そうだよ」と妖精は外へと歩き、茫然とするリアの隣にちょこんと座った。前足を丸めたしっぽの中にしまいながら。
「まだ千葉にいるの?」リアは信じられない様子で尋ねた。
「うん」と妖精はまた答えて、にこっと笑った。
「異世界に行く話じゃなかったの?」リアは明らかにがっかりした表情で言った。
「違うよ。妖精たちは世界中にいて、人間の世界と共に生きてるの。リアも、きっと今までも何人か会ってるよ。」
「喋る猫に会ったら、さすがに覚えてると思うけど」とリアは膝を抱えてバーの入口にぺたんと座り込み、頬をふくらませた。
「私は猫じゃなくて妖精だもん。妖精はね、姿をいろいろ変えられるの。人間の姿になることだってできるよ」と妖精は説明した。「でも、魔力をたくさん使うから大変なんだ。」
「人間の姿になれるの?!」リアは、魔法の可能性に目を輝かせて聞いた。
「うん」
「何通りの姿があるの?」
妖精は少し考え込んで、頭を傾げたり、鼻をくしゃっとさせたり、しっぽに前足をふみふみしたりしてから、やっと答えた。
「えっと、四つ……たぶん四つ」
「何があるの?猫と、飛んでる綿あめと、人間と、あと何?」
「フェイ」と妖精が口を挟んだ。「ピュア、ファミリア、人間、そしてフェイ」
「それ、めっちゃかっこいい!」リアは感嘆した。妖精はにっこりと笑った。
二人はしばらく玄関の階段に座っていた。リアはバーの夢について途切れることなく話し続け、フェアリーは喜んで聞き役に回り、時折自分のアイデアも口にした。混み合った街の中心を通り過ぎる人々は、真昼間に猫とおしゃべりする少女の姿を特に気にする様子もなく、誰一人として顔を向けることさえなかった――皆、自分の忙しい生活で手一杯だった。
「日本にいるのは助かるかも。ビジネスローンが組めるかもしれないし」と、リアはため息をついた。「でも、日本語があまり得意じゃないんだ。書類も会話も無理かも」
「わたし、日本語しゃべれるよ」とフェアリーが言った。
「でも、住民票もIDもクレジットスコアもないでしょ?」
「クレジットスコアってなに?」とフェアリー。
「だよね。たとえ人間の姿で銀行に行ったとしても、ローンは無理だよ」とリアはぼそっと言った。
「じゃあ、わたしの日本語をあげる!これもわたしの力のひとつ!」とフェアリーは誇らしげに宣言した。
リアはただ彼女を見つめていた。フェアリーと出会って以来、リアはほぼずっと困惑しっぱなしで、それが新しい日常になりつつあった。
「確かに、会話できるって大事だけど、それを“特別な能力”とは言わないよ」と言いながら、リアは眉間をつまんだ。
「わたしは地の妖精だから、今いる土地の言葉が話せるの。地球は全部覚えてるんだよ。そしてたくさんの物語を語ってくれるんだ」
「Oh my God!」リアは母語で叫んだ。「役に立つ力持ってたんだ!」
フェアリーはそれが褒め言葉なのか皮肉なのか分からなかったが、無邪気に前者だと思うことにした。
「で、どうやって“日本語をくれる”わけ?」リアは疑いの目を向けた。「教えるだけじゃないよね?それだと時間ないし、違うって言ったでしょ」
「憑依するんだよ」
「絶対イヤ」
「大丈夫だって」
「無理。健康的じゃないもん。遠慮しとく」
「一回やってみてよ!」とフェアリーはリアの膝にぴょんと飛び乗った。
「やめてーっ!」リアが叫んだ。「何してるの、やめてってば!憑依禁止!」
リアは身をよじってフェアリーを振り落とそうとした。「だから無理って言ってるでしょ!」でも猫のような反射神経で、フェアリーはびくともせずにとどまり、前足をリアの胸にそっと置いた――初めて出会ったときのように。彼女はじっとリアの目を見つめた。
「副作用とかあるの?」リアはおそるおそる尋ねた。
「ないよ」
「痛いの?」リアはすでに後悔しながら聞いた。
「信じて」とフェアリーが言い、すると彼女は再びピンクに光る球体となり、床を通り抜けたときと同じように、まっすぐリアの体へと飛び込んでいった。
6歳にも満たないくらいの小さな男の子が、ちょうどその時、彼女の方へ駆け寄ってきた。
「ん?」と彼は言った。「さっきここにいた可愛いネコちゃんはどこ?」
「えっ、フェアリー見たの?」とリアが聞いた。立ち上がって、男の子の目線にしゃがみ込む。「中に入って、お昼寝してるの。」
男の子はぷぅっと頬をふくらませた。その後ろから、買い物袋を積んだベビーカーを押す彼の母親が急いでやって来た。きっと赤ちゃんの妹も乗っているのだろう。
「すみません、“ネコちゃん!”って叫びながら走っていっちゃって……」と母親は息を切らしながら言った。
「ネコはいましたけど、今は中に戻っちゃいました」とリアが答える。
母親はリアをじっと見つめた。金髪に青い目、色白の肌、そして高い身長。その視線には見慣れているけれど、毎回ちょっとだけおかしく感じる。
「日本語お上手ですね!ハーフの方ですか?」と母親が興味津々に聞いた。
「いえ、違います。イギリス人なんです」とリアは笑った。
「日本には長いんですか?」
「もう5年になります。」
「えっ、5年でこんなに話せるなんて、すごいですね!」
「全部、友達のおかげです」とリアはいつになく素直に言った。今回ばかりは、本当にその通りだった。
「お仕事は?学生さん?」と母親が聞いた。息子はバーのドアの中を覗き込みながら、フェアリーを探している。
「実は、幼稚園で英語を教えてるんです」とリアは男の子をそっと母親のもとへ戻しながら言った。「この年って、本当に可愛いですよね〜」と笑いながら付け加える。
「幼稚園で英語なんて教えてるんですか?すごい!うちの保育園にはそういうの全然なくて……」と母親が答えた。彼女は、ツタに覆われた建物と、古びた外壁が覗くその外観、そして埃の積もった中の様子をちらっと見た。「ここは……学校になるんですか?」
「できればバーにしようかなって」とリアはまた笑った。「でも、まだ始めたばかりなんです。」
「バー!?わあ!」と母親。「ずっとこの辺に住んでるけど、この建物が開いてるところ一度も見たことなくて。オープンしたらぜひ行きたいです!もう名前とか考えてるんですか?」
「バー・ハートにしようかなって」とリアは、自分でも驚くほど自然に言葉が出た。
「バー・ハート!素敵な名前ですね!」と母親は満面の笑みを見せた。
「ワンワン!」と男の子が突然声を上げたかと思うと、母親の周りを半周して、通りを散歩中のダックスフントを追いかけ始めた。
「れんくん!勝手に走ってっちゃダメでしょ!」と母親が叫ぶ。「すみません、オープンしたらまた来ますね!」と、すでに息子を追いかけながら言った。
リアはしばらくその様子を見守っていた。どこか見覚えのあるような光景。そして胸の奥がほんのりと温かくなった。それは懐かしさとは少し違う、不思議な感情で――花飾りをつけた、得意げな白猫の姿として現れた。
「ほらね?」とフェアリーは床にしっぽをトントンと叩いて、いかにも「言ったでしょ」という感じを出した。
「そのしっぽ、役に立つことに使ってくれない? 日があるうちにホコリだらけのバーを掃除するとかさ」とリアが言った。あながち冗談でもなさそうだ。
フェアリーは仰天したような顔をした。「この美しい毛皮を見て!真っ白よ?あんな場所に一歩でも入ったら、 煤渡りになるわ!」
やっぱりね、とリアは思った。うぬぼれたネコ。
「私は妖精よ、メイドじゃないわ」とフェアリーは鼻を鳴らした。
「どっちかがバーを掃除して、どっちかが働いて稼がなきゃいけない。私はもう仕事があるから、掃除はあなたの担当」
「でも――」
「でもはナシ」とリアは言った。「あなたが助けを求めたんでしょう?ならここから始めるの。私は週末と、仕事の後に時々来られる。でもそれ以外は、あなたがここにいなきゃ。もしそれが嫌なら、この話はここで終わり」
フェアリーは、リアが本気だとすぐに察した。さっきの、小さな男の子と話していたときの寂しそうな気配も感じていた。だからしぶしぶながら同意した。
「あと、私の荷物を元のアパートに戻してもらうわ」とリア。「ここが魔法の世界じゃないなら、水もガスも電気もある場所に帰らせてもらう。ここでも全部必要になるしね」
彼女はくるりと背を向けて中に入り、ドアをバタンと閉めた。フェアリーもすぐ後ろを歩きながらついてきて、純粋な姿に変身した。たぶん、足を汚したくなかったのだろう。
リアはゆっくりと螺旋階段を上り、手すりを握りしめながら、無意識に息を止めていた。彼女にとってはここが一階だったが、長い間外国に住んでいるうちに、同じものに複数の名前を使うようになっていた。
寝室に戻ると、昨日のズボンを拾い、ポケットからアパートの鍵が付いたパスケースを探した。
「ここから近いし、電車で戻って必要な物だけ持ってくる」と彼女は言いながら、パスケースをポケットにしまい、ベッドサイドのスマホも取った。「あとの荷物は、私をここに連れてきた時と同じ方法でお願いね」
ごちゃごちゃと散らかった荷物の中からリュックを見つけ出し、洗面用具や着替え、スマホの充電器、財布、イヤホン、それに全部の下着を詰め込んだ。枕を一つ抱えて、振り返って別れを告げようとした――
――が、フェアリーの姿はなかった。そしてリュックが急に重くなった気がした。
リアはその重みによろけてベッドに腰を下ろし、ため息をついた。リュックを膝の上に乗せ、ジッパーを開けた。
「何してるのよ?」と彼女は言った。
フェアリーは荷物の一番上に丸まって、キラキラした目でリアを見上げていた。
「私は必需品よ」と得意げに言った。
「可愛くない。それじゃ帰るから。また明日ね」とリアは疲れた声で言った。
「私も行きたい」とフェアリーは口をとがらせた。
「私のマンション、ペット禁止なの」
「私は妖精よ」とフェアリーは、それがすべてを変えるとでも言いたげに答えた。
「例外はないと思うけど」
「ここ、暗くてホコリっぽいし。一人は嫌なの」とフェアリーは甘えた声で言った。
「それに、どうやって電車に乗るつもりよ?」リアは説得しようとした。
「人間の姿を取る」
「それだと運賃が必要になるわよ」
「じゃあ純粋な姿で行く。そうすれば、ニンフとか妖精族しか私のこと見えないし」
「憑依なしで?」とリアは警戒しながら聞いた。
「憑依なし」とフェアリーはしっぽを揺らして自信満々に答えた。彼女は勝利を確信していた。
「……分かったわ」とリアはため息をついた。「一緒に来なさい」
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オープンまでの日数:365日




