episode1 人生最大の選択
初めて書く作品です。まだまだ未熟ですが、温かい目で見てもらえれば幸いです!
《あなたは死にました。》
幻想的な場所で放たれた死亡宣告。
それを真剣な眼差しで話すのは、地球に住む人間とは思えない程の綺麗な美女だった。俺は混乱した。そもそもここはどこなんだと。あなたは誰なんだと。
でもまぁとりあえず、これまで何があったか記憶を整理する時間をくれとだけ言い、目を閉じた。
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俺、柏田隆二はそこら辺にいる高校2年生。
顔はなんとも言えない。が、友達からはかっこいいと言われている。陽キャでもなければ、女子にモテることもない。だが、そんなの俺にとっては関係ない。だって、この生活が一番の幸せだったからだ。
なのに、そんな日常に少し嫌気がさしてきていたのも事実だった。
今日も高校からの帰り道。友達とも別れ、夕暮れの国道沿いを1人でただ歩いていた。
「今日はやけに車通りが激しいな。前にも近くで事故が起きてたはずだ。転生する人は、ここで車に轢かれたり、通り魔に刺されたりするのかな〜。」
頭の中は最近ハマった転生作品でいっぱいだ。友達が一番おすすめだと言っていた某作品を読んでみたら、いつのまにか朝になっていたりもした。だが、新しい自分の趣味を見つけたことをとても誇りに思っている。
そんなことを考えているうちに、「ドン」と背中に衝撃が走る。
刺された!?なんてことはなく、走りながらこちらに来ていた、ボールを持った小学1、2年生ぐらいの女子児童が俺の背中とぶつかってしまったのだ。
「ぐぇ〜〜」と言いながら女子児童が倒れていたので、
「大丈夫?怪我はない?」
と心配しながら手を差し伸べる。
でも女子児童はすぐに立ち上がって、
「ごめんなさい〜。急いでたのでつい...」
と申し訳なさそうに謝罪した。綺麗な黒髪のサイドテールとその容姿は、児童と呼ばれることを拒むかのように俺の目を直視させた。
「悪いことではないんだよ。子供は元気の象徴だからな!」
と我ながら良いこと言ったと自覚しながら微笑んだ。そしたら女子児童も一緒に微笑んでくれた。彼女は一礼して、ボールを持ち直してまた走り去っていった。
走り去る後ろ姿 ———走り去る後ろ姿———あ......
ここ最近忘れようとしていたことが蘇る。
そう、あの夏の......
頭の中にトラックの衝突音が再生される
小学3年生の夏休み、俺の人生最初の友達、萩枝遥希の事故死だ。彼もあの女子児童のようにボールを持って走っていたところに後ろから、、、、、
やばい、思い出してしまった。早く忘れようと、また俺は歩き出す。
あの子も大丈夫だろうかと心配性を発動しつつ、夕暮れの国道に目を戻した。その瞬間、目の前に災厄の事態が起ころうとしていた。
道路に転がっていく青いボール。そしてそれを追いかける女子児童。さっきの子だと一目でわかった。
「おいおい!それ以上いくと•••」
案の定、ボールは国道のほぼど真ん中に転がった。
まるで女子児童を死の世界に導く死神のように、、、
そして俺は気づいた。奥から大型トラックが猛スピードで来ていることに。
「まずいな、あの速度だと確実に女子児童は死ぬぞ。どうする!?どうする!?どうする!?どうする!?どうする!?」
この構図、遥希のときとまったく一緒だ。あのときはどうすることもできなかった。後ろから来てることを伝える余裕もなく......
いや、今は考えている暇なんてない。なんとかして目の前の子を助けたい、あのときのようには絶対にしない、ただそれだけしか頭になかった。
俺の体は体感したことのない速さで背負っていたカバンを投げ捨て、道路に向かって走り出す。そして女子児童に覆い被さるように、その場でうずくまった。トラックのクラクションの音と共に
『ドーーーーーーーーーーン!!!!!』
と、一度で事故とわかるような音がその場に響き渡った。
「う..うぅ....あ...あ....ああ....あぁ..」
力が抜けたうめき声を出す俺。
「ま...さか、おれ..は.....ひか..れ..た...のか...」
混乱して現状を理解するのに少し時間がかかった。自分で体の状態を確かめようにも力が入らず、口と目を動かすのでやっとだった。
と、そのとき、
「お...兄.......ちゃん?大丈夫??」
急に女の子の声が聞こえた。声の持ち主は助けた女子児童だった。
夕暮れに輝く黒髪には血が混じっていたが、俺よりは軽傷なようだ。そのことに安堵しつつ、俺は彼女に伝えたいことがあると言い、痛みを堪え最後の力を振り絞った。
「いいか、嬢ちゃん。俺の人生は長くない。そう、ここで死ぬんだ。でも俺は今、とても最高の気分だ。最後に人を助け、現実で起こるはずがないと思っていたことを体験できたんだ。」
死ぬ間際にも少しカッコつけ、轢かれたことがまるで良かったことのように話を続ける。
「これからも生き続ける嬢ちゃんに、これだけは覚えておいてほしい。助けられた人として生きないでくれ。そして代わりに、運良く助かった人として生きてほしい。俺の命を背負う必要はない。ただ生きればいいんだ。何もなかったかのように。そうしてくれたら、俺は嬉しいぜ。」
女子児童は涙を堪えながら、小さく頷いてくれた。
「わかったよ...優しいお兄ちゃん...」
「理解してくれたら、それでいいんだ。」
だが、それが俺の最後の言葉だった。
なぜならもう体は限界を迎えていたのだ。目には夕暮れの街ではなく、真っ暗な世界が見え続けていた。
唯一機能していた耳から聴こえる救急車のサイレンと、周りの人達のざわめきにかき消されないくらいの声でお兄ちゃんと叫び続ける女子児童の声も、そのうち聞こえなくなった。
そして、気がついたら.................
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「そうだ...思い出した!俺は女子児童を助けて、その後死んだんだ.....」
やっと全てを把握することができた。
「記憶は整理できましたか?」
優しく語りかけるのはさっきの美女だ。姿をもう一度見てみたが、やはり美しい。神話に出てくるような服装、金髪は見る者を魅了するかのように輝いていた。
「私はアルヌス。亡くなってしまった人に道を授ける、言わば案内人です。女神と呼んでもらっても結構です。」
自己紹介もしてくれた。なんて礼儀正しいのだろう。
いや、そんなことよりあの女子児童はどうなったのだろうか?質問してみた。
「大丈夫。あの子は軽傷だったので、もう退院しています。」
良かった〜。それがわかればひとまず安心だ。俺がどうなろうと、彼女が生きているならそれでいいのだ。
安心したついでに、ここはどこなのかも聞いてみた。
「ここは、私が管理する異空間です。これからあなた
の第二の道を決める重要な場です。」
「なんだ天国じゃないのか。てか、第二の道ってなんだ?」
まっさきに疑問が浮かんだ。まさか、転生先か!?
と少し期待しながらもアルヌスの話を聞く。
「あなたが予想しているであろう、転生先の話です。転生というより、異世界転移ですけどね。ですが、選択次第では天国に行くこともできます。」
え?俺の頭の中を読み取ったのか?流石にそれはないだろうとすぐに否定した。てか、選択かよ.......俺は苦手なんだよなと顔を顰める。
どんな選択肢があるのか一応聞いてみた。
選択肢は2つ
1つ目•••このまま天国に行く
2つ目•••別の時空に行き、脅威からその時空を守る
というものらしい。
ちょっと待て。この2つ目って、某魔法で戦う少女達と同じ展開なのでは!?とすぐに思った。俺はそんな簡単には騙されない。女神に疑いの目を向ける。
「その目.....まさか2つ目のことを、魔法で戦う少女達と同じ展開になっているとか思ってます??」
駄目だ、さっきのはまぐれじゃない。この女神にはなんでもお見通しだ。
「まぁ無理もありません。過去に私が案内してきた人の中で2つ目を選んだ人の中には、精神的なダメージを
受けた人がいますもの。」
すごいことを言い出す女神。やはりビンゴだった。そんなこと言ったら2つ目を選ぶなと言っているようなものだ。
さぁどうしますか?と聞いてくるので、早めに考えなくては。
「どうしようかな?うーむ。うーむ。うーむ。」
〜体感15分後〜
「まだですか?」
いや、まだだと言いすぐにまた考え始める。
〜体感1時間後〜
「あの〜?」
まだまだと言い、また考える体制に戻る。
〜さらに体感1時間後〜
「スピ——スピ——」
女神は寝ていたが、俺は寝ていない。こんなことになるから、俺は選択肢の問題が苦手なんだ。
〜体感30分後〜
「やっと考えがまとまったぞ!」
そう言って俺は女神を揺さぶり起こす。
「はひ?あぁ、決まっはんへすね〜!」
寝ぼけて言葉がおかしくなっている女神に対し考えを話した。
「俺は2つ目にする!」
おぉ!!と女神は眠気を吹き飛ばして反応した。なぜかと問われたので答えた。
「俺は日本にいた頃、日々の日常に嫌気がさしていたんだ。もちろん、その生活が不便だったとは思って いない。友達や家族には感謝している。
だが、体は新しい刺激を求めている。そう感じたんだ。
そして今、死んで別の時空にいけるチャンスを貰った!その時空に住む人を守り、新しい仲間との交流も行いたい。それが一番の理由だ!」
素晴らしいですねと女神は微笑んだ。そして女神は、すぐさま俺にあるものを渡してきた。
「これは時空転移装置。正式名称は、アンデレヴェルトです!」
名前の割に大きさは小さかった。まずこんなもので本当に移動できるのか?
「そんな小さい小道具で異世界に移動できるわけないとか思ってる顔してますよ〜。」
とまた俺の気持ちを読み取りつつ、話を続けた。
「世界を移動するための物が全部大きいなんて決まっていません。なんなら、小さい方が持ち運びも楽ですよ?」
ごもっともだと納得したので、使い方も聞いてみる。
「行きたいところのキーワードを入れます。例えば、魔王が侵略している世界だとか、特殊魔法を使える人間が住む世界だとか、バリエーションはたくさんです。」
予想以上に異世界は多そうだ。女神は話を続ける。
「転移先を決めて決定を押すと、ゲートが出現します。そこに入ると、転移完了です。」
結構簡単だ。だが、まだ行かない。最後に大きな疑問が思い浮かんだので、女神に質問してみた。
「何故俺に地獄の選択肢が無かった?」
天国の選択肢があるなら、もちろん地獄の選択肢もあるはず、そう思ったからだ。そしたら女神は目を瞑っ
て話し始める。
「あなたの行動は称賛されるべきです。人を助けるためなら自分の身がどうなってもいい。
そんなこと、私が人間だとしてもできませんし、私の経験上そんな死に方をした人は1人もいませんでした。
なので上層部に直接相談して、地獄の選択肢を無くしてもらいました。」
そんなことがあったのか。
1人の女神の私情を、上層部が快諾することには少し驚きだ。
だが何はともあれ、女神がいてくれたから異世界転移が可能なのだ。
感謝してもしきれない。そう思っていると、女神が1つ謝罪したいと言ってきた。
「先程、2つ目の選択肢を選んだ人は精神的ダメージを受けたと言いましたが、本当は選んだ人なんていません。嘘をついてしまい、すみせんでした...」
深々と頭を下げていたが、俺はなんだそんなことかぐらいにしか思っていない。
が、某魔法を使う少女のようにはならなそうなのは安心した。
だが一応、何故嘘をついたのか聞いてみた。
「他の方々には天国、地獄、転生の3つを選択肢にしています。
ですが、転生先の世界は緊迫した状況にあります。そんな中、あなたが現れた。あなたならこの現状を変えられる.....
そう信じて1つ脅しと捉えられてもおかしくないことを言い、勇気を確かめさせてもらいました。
不快に感じてしまったならごめんなさい。でも、やはりあなたなら.....」
彼女の言葉には嘘についての謝罪より、俺に対しての期待が込められている、そう感じられた。
「頭を上げて下さい。アルヌスさん、俺はあなたの期待を裏切りたくはありません。
異世界がどんなところかわかりませんが、そこに住む人々は絶対守りたい。だから2つ目の選択肢を選んだんです!」
女神は頭を上げ、今日1番の笑顔を見せる。正直、可愛かった。
その後すぐ、アルヌスが1つ提案を持ち掛ける。
「せっかく時空を守ると決めたのですし、何か軍団の名前をつけたらどうですか?
仲間ができるかもしれないですし、そのほうが覚えられやすいのでは?」
言われてみればそうだ。
仲間はまだいないが、今後増えるかもしれない。
目を瞑って数秒考えた。
すると、頭に舞い降りてくるように名前が思い浮かんだ。
《異世界防衛隊ハヤブサ、なんてどうだ?》
女神は早っ!と言って驚いた。
また時間がかかることを予想していたのだろう。
なぜそうしたのか聞かれたので話した。
「はやぶさの名は重要な任務を行う名前なんだ。
小惑星探査機はやぶさや、東北、北海道新幹線で運行しているE5系はやぶさが例だな。
小惑星の観測、人を目的地まで安全に送り届ける、どれも重要な任務だ。俺が今やろうとしていることも重要な任務だ。
だからハヤブサにしたんだ。カタカナなのは、かっこいいからだ!」
最後は語彙力がなくなったが、アルヌスはなるほどと理解してくれた。
話した後、アルヌスは俺の後ろに行き出陣を見守る。
さぁ、どこに行くか考えよう.......といっても、場所は決めてある。
「魔法が使える世界」
転生などには無難だが、やはり危険も伴う世界だ。 まずはここで少しでも異世界に慣れていきたい。
そう思っているうちに、アンデレヴェルトが光り、ゲートが出現する。
早速入ろうとすると女神が大きな声で叫ぶ。
「隆二さん!May the Gooddess bless you!!」
女神のご加護がありますように、か。
女神が女神のご加護を願っているのはツッコまないでいよう。
俺はアルヌスに感謝の一礼をした。
異世界では何があるかわからない。
だが、新しい世界での生活、経験は俺を強くするはずだ。
アルヌスの期待を力に変え、ゲートに入っていくのだった。
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「あなたの友達、思っていたよりもずっと早く来てしまいましたよ、遥希さん。
向こうの世界で再会できるといいですね....生きていればですが。」
投稿頻度はまだ未定ですが、楽しみに待っててください!