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「北方に病害を撒き散らし、ダークパワーの糧にするつもりだったか」
「その通りよ!!」
「下衆な魔術師の考えそうなことだ」
「だまれ、若僧め!!まずは、貴様が餌食になるのだ。フェルナーク様、奴を滅してくだされ」
『グォォォォォ』
ノルンを敵と認識した病妖の口から、空中に向けて黄色い煙が吐き出された。
煙は大公の周りを押し包んだが、結界の中にまでは届かない。
「うん、さすが妖魔だ」
先ほどの闇魔術師達よりは手応えを感じたのか、ノルンは身につけていた銀の首飾りを外すと、何やらブツブツと唱えはじめた。
「むうっ」
危険を感じたガバスが、黒い半透明の結界を自分のまわりに張る。
「呼び出されて、すぐに消える不幸を許してほしい」
そう言って大公が首飾りを病妖へ放り投げた。
首飾りは空中で発光し、白い炎の塊となった。
「あ、あれは『滅魔の火』か!?」
ガバスの顔が、信じられないものを見たというよう表情のままかたまる。
『ギャァァァァァァァ!!!!!』
フェルナークの頭部に落ちた白い炎は、たちまち油に火を放つがごとく燃え広がり、妖魔の体を焼き尽くした。
「なっ、結界が……!!」
白く輝き燃える光に照らされたガバスの結界は、すうっと溶けるように消えてしまった。
「闇の者よ」
「ひっ!!」
気がつくと、いつの間にかガバスの背後にノルンの姿があった。
「さて、どうする??」
大公が氷の笑みをたたえた時、ガバスの後ろでは、今や黒い塊と化したフェルナークが、断末魔の叫びを上げていた。




