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「何という……何という!!」
ガバスの面は完全に青ざめていた。
実のところ、彼自身、結界をはる時間はなかったのだ。
ガバスが無事なのは、単にノルンが彼にのみ攻撃を加えなかったからにすぎない。
「あなたにはドルクロスまで来ていただかないとね」
「…………おのれっ」
しぼり出すような声でそう呟いたガバスは、突如、激しく印を切り始めた。
「どのような術を使うか知らないが、あなたの魔道では、私にかすりもしないよ」
大公が穏やかに力量の差を伝えるが、ガバスの動きは止まらない。
「はあっ!!」
しかし、彼がその魔力を向けたのは、ノルンではなかった。
ザザザザザ……
念動力のようなものを駆使し、ガバスは十二の亡骸を次々と魔法陣の内側へと引き寄せた。
「十二人の闇の血を捧げます!!ですから、どうぞ今、今すぐこのガバスにご助力ください!!!!」
ガバスの絶叫とともに、魔法陣が赤く輝きはじめる。
ノルンは、高度を少し上げると、薄く光る結界を自身の周りに張った。
「おおっ!!」
歓喜の声を上げるガバスの前で、闇魔術師と村人達の遺体が、地面の中に沈んでいく。
『グォォォォォォォ!!!』
そして、魔法陣の中から見るもおぞましき生き物が姿をあらわした!!
「病妖フェルナークか…」
ノルンが、目を細めてつぶやく。
集落をぐるりと取り囲むほど長く巨大なその魔物は、蛭の体と百足の足を持ち、頭部らしき所に開いた口には、粘液がしたたる牙が並んでいた。




