死神
ノスガル国とサスガル国との第二次ガルド戦争、ガルド平野に彼は送られた。
その時点で、平野にいる兵士たちはもう二度と家族のもとに戻ることはない。
「恐れ慄け『畏怖戦慄』」
敵味方関係なくその戦場にいるすべての生物に、ほとんどの生物が感じたことのない恐怖が走り抜ける。
乱戦になりつつあったその戦場は実に15秒、息を止めた。
その戦場の中をただ一人だけが駆けていく。
たった、15秒、
しかし、彼には過ぎた時間であった。
一瞬のうちに、戦場を駆け抜ける。
敵も味方も、巻き込んだ恐怖の波を放った彼もまた、恐怖に蝕まれていた。
蝕まれた体で、戦場を駆け抜け、無差別に殺してゆく。
彼はいつの間にか【死神の子】と呼ばれ一流の傭兵として名を馳せていた。
恐怖に蝕まれ続けた彼にはもう、恐怖の感情はない。
恐怖を感じることなく、いや、正確には恐怖を感じすぎたまま、戦場の生物たちは一つ、また一つと命を刈り取られていく。
15秒が経った時、そこに立っているのは、彼一人である。
敵味方入り乱れた死体の山、なぜか赤黒く染まったその姿は、【死神】である。
第二次ガルド戦争、ガルド平野の戦い。
約七日で決着。
生存者、一人
勝者、ノスガル国
書きたい場面だけ書いてたら意外といいかもしれない