バレンタインチョコを確実にあげる方法
よし、誰もいない……よかった。
宮森怜子は、教室に誰もいないのを確認し、胸を撫で下ろす。
時刻は午前6時。部活の朝練の声もまだ聞こえてこないこんな朝早くに。
いつもは二度寝を決め込んでいるであろうこの時間に、怜子は落ちてくる瞼をしつけるように擦りながら、登校してきたのだった。
なんでそんなことを? それは今日2月14日であるから、と言うだけで大半の人が納得してくれるのではないだろうか。
そう、今日はバレンタインデー。年頃になれば男女問わず色めき立たずにはいられない、女性はチョコを介して意中の相手に思いを届ける日に他ならない。
そして、高校2年生である怜子も例に漏れず、せっせとチョコを作りラッピングしてバッグに忍ばせてきた女子の一人なのである。
教室の扉をあげ、怜子は意中の相手の席へと向かった。せっかく誰もいない時間を狙ったのだ、一旦自分の席に鞄を置いている間に誰か登校してきようものなら、昨日、見たいテレビをなくなく我慢して早く寝た自分に申し訳が立たない。
誰もいないのはわかっているが、それでもなぜかゆっくりとした動作で、足音を忍ばせ席へと向かう。
床の軋む音に少しだけ驚いたらしながらも、なんとか目的地までたどり着き、鞄から可愛く包装したチョコの箱を取り出す。
箱を少しだけ開け、ハート型のチョコと思いの丈を綴った手紙があることを再度確認する。
もちろん、現在に至るまで色々と自分なりに計画を立て、実行しているわけだが、いざ本当にこのベタにハートにかたどられたチョコと、チョコの甘さにも引けを取らない内容の手紙を渡してしまうというのは、中々に勇気のいることで、さっきから心臓の鼓動がうるさい。
それに、怜子は恋愛などという浮わついたことには今日まで一切の関わりを持たずに生きてきた。
興味がなかったわけではないが、内に秘めておくことができる程度の気持ちしか持ち合わせていなかったのだ。
だが、今日はその秘めたる思いを解放してでも行動にでたいと思ってしまっている。
怜子の重い腰を持ち上げさせるほどに思いが募ってしまっているわけだ。
全く、自分がこんな恋愛漫画みたいな行動に出るとは。我ながら感慨深いものがある。
ふう、と一度息を吐いてから、胸の前に持ってきていたチョコを意を決して引き出しの中に入れようとする。これでミッションコンプリートだ。
ん、あれ、なんで? 入って、いかない……。
あと一歩のところ。机の引き出しにチョコを入れてしまえば、任務は完遂だというのにそれができない。
引き出しを覗きこんでみると、そこには大量の教科書やらノートたちがぎっしりと入っていた。
なるほど。これがチョコの進路を阻んでいたのか。うちの学校では置き勉は容認されているが、こうも隙間なく入っているとは。ねじ込む余地も残っていない。どうしたものか……。
「おはよう。宮森さん」
「だ、だ、誰っ!?」
チョコを入れるのに苦戦していると、後ろの方で声が聞こえてきた。
しまった、夢中になって足音に気づかなかった。振り向くと、そこにはクラスメイトの淀川君が立っていた。
教室後方にある棚にもたれて少し笑みをたたえて、淀川清二はそこにいた。
「おは、よう、淀川くん……なんでこんな早くに。確か剣道部は朝練もなかったはず……」
彼の所属する剣道部は朝練は行っていない。チラリと窓の外からみえる剣道場に目をやると、やっぱり誰の姿もなく、竹刀のぶつかる音は聞こえてこない。
仮に朝練を実施していたところで、早くても7時くらいからだろう。どのみち、この時間帯にいるのはおかしいのだ。
「なんでって。しらじらしいね宮森さん。今日が何の日か知ってるだろ?」
「え、えーっとなんだっけ?」
「そんなものを手に持っててとぼけるは無理があるんじゃないか?」
言われて、引き出しに入れそびれたチョコを持っていたことに気づく。
怜子がバッと後ろに隠したところでチョコを――それもハート型のチョコを渡そうとしていた事実は隠せそうにない。
「そう。今日はバレンタイン。女子が意中の男子にチョコをあげる日だ」
犯人を追い詰める探偵のように、淀川君は手を後ろで組み、教室を練り歩く。
切れ長の瞳に白い肌。キレイに分けれれた七三分けは一見真面目で優等生の雰囲気を受けるが、それは本当に雰囲気だけで、彼の鼻につく正確にガッカリした女生徒もそう少なくはないだろう。
「しかし、僕は生まれてこの方、チョコレートを貰ったことがない。ただの一度もだ」
「そんなこと、堂々とよく言えるね」
少なくとも、立ち止まって誇らしげに胸を張るところではないはずだ。
「そこで、今年こそは是非チョコレートを貰いたい、チョコという名のラブコールをいただきたいと思った次第だ」
「そ、そうですか……」
「理解が早くて助かるよ。そして、こんなに早く登校したのにも理由があるんだが、聞きたいかい?」
「別に……」
「まあそう言わずに。それはだな、他でもない、君からチョコを貰うために他ならないんだよ!」
どうだ、みたいな顔で怜子の顔を見てくる淀川君。びっくりしてあげたい気持ちはあるが、薄々と気づいていたことだったので、だんまりを決め込むだけになってしまう。
「その冷めた目線、いいね。それでこそ宮森さんだ」
リアクションを取れずにいた怜子にがっかりするどころか、むしろよくやったとばかりに拍手する淀川君。
わかってはいたが、淀川清二はかなり変わった人物だ。いや、オブラートに包まずに「変な奴」だと称しておこう。
なにもバレンタインというイベントに色めき立っているから、とか慣れない早朝の登校で頭が回らず頓狂なことを口走っているわけではない。
淀川清二とは元々こういう変な奴で、怜子は彼の奇行をもっともっと目撃して被害を被っている。
「そんな君にこそ、僕は今日という特別な日にチョコをいただきたい。義理チョコでも友チョコでもなく、手作りの――この世界にたった一つしか存在しないそのチョコを!」
そうまくし立てると、さあチョコをくれとばかりに手を前に差し出す。
勢いに飲まれ、声が出ない怜子は、それでも渡すまいと一歩後ろに下がり、おまけにチョコを元々入っていた鞄に戻す。絶対に今、渡すわけにはいかない。
「あ、あなたに渡すわけないでしょ。いつもいつもそう言って私を困らせて。全く、いい迷惑よ」
彼はいつもそうなのだ。怜子への好意をひそめせることなく、大っぴらに宣言する。
それにより、怜子が周囲から生暖かい視線を浴びることになるなんて考えも及ばないのだろう。
「困った顔も素敵だ。しかし、今君は別の奴の席にチョコを入れようとしていたな。おかしい、僕の席はここなのに。あ、もしかしてもう既に入れてくれて……なんだ、ないじゃないか」
急いで自分の席へと駆けていきワクワクした顔で引き出しを覗きこむが、もちろん、チョコは入っているわけもなく。肩を落としてわかりやすくガッカリしてみせる。
それはそうだ、これは本命チョコ。一つしか作っていないのであるわけがない。
「あるわけないでしょ。私は……そう、阪元君の席に入れようとしたの。そしたら入らなくて」
「阪元か。それはそれはお目が高い。あいつはサッカー部でもレギュラーだし、それにあぐらをかかず努力を惜しまない中々にできた奴だ。勉強においてもテストの点数こそ伸び悩んでいるが、授業への積極的な参加は先生も助かっているのは確かだろう。それにあの長身でどこか子供じみた顔だ。好意を抱くのも無理はない」
「好意って……そんな、そこまででは」
「照れるな宮森さん。人を好きになるというのは誇るべきことだ。恥ずかしがることではない」
えらく殊勝なことを言う淀川君に少し感心してしまう。
「だが、困った。阪元の席にはチョコが入らないようにあらかじめ教科書を詰めさせてもらったのだ」
「ん、え? これやったの淀川君なの?」
「そうだ、宮森さんが僕の席と間違えて入れたら大変だからな。あらかじめ、他の男子の席にはチョコが入らないよう、細工をしておいた」
ついさっき終わったところだ、と付け加え、淀川君ははにかんだ。
どうりで、びっしりと置き勉されているわけだ。他の男子の引き出しも見てみると確かに、小さいチョコが入る隙間もない。
淀川君の席だけポッカリと穴があいたように、教科書が一冊も入ってない、空っぽの状態となっている。
「だからこんな朝早くに来てたったこと?」
「そうなんだ。我ながら頑張った。早すぎるかと思ったが、宮森さんが来るギリギリに終わったからベストタイミングだと言えるな。流石僕、完璧な仕事ぶりだ」
「……淀川君って、ほんっっと変わってるよね」
色々言いたいことはあったが、埒があかないのでこの短い文章に留めておいた。短くはしておいたが、私はそこに色々な意味を込めた気でいる。まあ、彼にはどうせ届かないのだろう。
「努力を称賛されるのは、なんだその、やはり嬉しいものだな」
「してない。照れないで」
案の定、だ。彼には自己を客観的に見る大切さを長期に渡って教えないといけないらしい。それも無駄骨に終わりそうなので、遠慮しておくが。
「更にいうとだな、引き出しに入れさせないことでチョコを渡しにくい状況にできないかという狙いもある」
「それは本当に最低じゃん」
「ああ、最低だ私は僕。だが、チョコは直接渡してこそなんぼだと僕は思う。万が一、置き間違えて別の人に渡ってでもみようものなら彼女らの努力が報われなくなってしまう」
「……どういう配慮なのそれ。まあ、いいたいことはなんとなくわかってけど、それでも――引き出しを塞がれたところで私が阪元君にチョコあげるのは変わらないから」
「そ、それはちょっと待ってくれ。少しだけ僕の話を聞いてくれないか」
お願いだ、と手を合わせてくる淀川君。少しだけもなにも、さっきからだいぶ話は聞いている。ここまできたらとことん聞いてやるしかない。
「……なに?」
「おお、よくぞ聞いてくれた!」
パァ、と顔を明るくしていつもの調子で語り出した。
「阪元は去年バレンタインデーにおいて、のべ54個のチョコを獲得している。校内ではこの僕を差し置いて1番の獲得数だ。あんな優れた彼よりも成績の優れたこの僕を、だ。なんて由々しき事態だ。学校の七不思議にでも入っていてもおかしくない状況だ。今度クラス会の議題にでも持ち上げてみようかと検討している次第だ。」
「そんなに貰ってたんだ。ていうかこの僕を差し置いてって。一個も貰ったことないんでしょ。淀川君がチョコ貰えないのは不思議でもなんでもない、納得のいく結果だよ」
なんか肉薄したが負けたみたいな言い回しをするのはズルい気がする。
怜子の言葉に少しピクリと反応したが、淀川君はギリギリで余裕のある表情を保ったまま続ける。
「つ、つまりだな、そんなに貰っている阪元にあげたところで、君のそのチョコにこもった思いを。その素敵な重い思いを、全て彼が汲んでくれると思うか? 阪元はきっと今年もたくさんチョコを貰うだろう。それにより、貰った人物のことより、貰った数に気を取られ、挙げ句に君からチョコを貰ったことさえも朧気になる可能性が高い」
なんだかよくニュースでやってるマルチ商法かなんだかのセミナーを聞いてる気分になってきた。
「そんな悲しいことは僕としては避けたいところ。それで、仮に僕にチョコをくれた場合だ。僕はさっきも言った通り、生まれてこのかたチョコを貰ったことがない。厳密にいえば、スーパーやコンビニ等で買い物をした際に店員さんからチョコをいただいたことがあるが、あれには金銭が発生しているのでなくなくノーカウントとさせていただいている」
「厳密に言わなくていいよ。あっちもそんなつもりないでしょ」
そんな屁理屈言い出したらキリがないだろう。
「まあそうだな。だが、宮森さんから貰えたなら、それがバレンタインで僕が人生で初のチョコを獲得したことになる。こんなに喜ばしいことはない。舞い上がって明日は寝れないこと間違いなしだ。寝れなくても次の日まで授業で居眠りすることなく、高揚した気持ちが収まらないに違いない。どうだい、これを聞いて気持ちは変わったかい?」
「うん、気持ち悪さが倍増した」
「そうか、うん。僕の発言で気持ちが変わったという点は喜ばしいことだな。もう一押しか」
なんてポジティブ思考だ。見習いた……くないが、見上げたものだ。
「それに、だ。君も薄々は自分の気持ちに気づいているはずだ。僕のことが気になっているんだろう?」
「気にくわなくは、ある」
「惜しい。もうちょっとだな」
「言葉だけで見ればね。すっごい違いだよ」
「好きの反対は無関心というだろう。少なくとも君を振り向かせるのに、折り返し地点までは来てるということだ」
去年の校内マラソンで、苦しそうにしながら半ば歩くような形でダントツの最下位に輝いた淀川君なら、折り返した後の辛さを知っていようものだが、辛すぎて記憶が飛んでいるのだろうか。
「……もう、私帰るから」
「帰る、ていうのは学校からということか? どこか体調が悪いのか、申し訳ない気づかなかった。まだ一時間目どころかホームルームも始まっていないが……こういう時は早退扱い? それとも欠席になるのだろうか」
そんなどうでもいいことを考えている淀川君を無視し教室を出ていった。
◇ ◇ ◇
「宮森さん、まだ出欠確認を取っていないから今から帰ると欠席扱いになるらしい!」
淀川君は、廊下に出た私に、嬉しそうにそう声を掛けてくる。
そんなことどうでもいい。というか、追いかけてきてもよさそうなシチュエーションだが、教室のドアが閉まる音はしたが、廊下に響く足音は私のものだけだ。全く、変な人だ。
腹を立てている自分がバカらしい。淀川君はそういう人だ。もう諦めるしかない。
ゆっくりと角を曲がり、私が向かったのは――下駄箱。
誰もいないのを確認してから自分のクラスの下駄箱へ向かい、また周囲に人がいないのを確認する。さっきのようなミスはもう起こしてはなるまい。
「えーっと、確かこのあたりだよね……あった」
人差し指でクラスメイトの名前をなぞるように確認しながらついに探していた名前を発見する。
そこには、確かに「淀川清二」。彼の名前が記してあった。
周囲をもう一度確認してからそっと開けてみると、ちょっと使用感のあるスニーカーに「淀川清二」。と主張が強くマジックで書かれている。
空いている上段にはハンカチが敷いており、チョコはここに置いてくださいとでもいいたげだ。
私は彼らしいなと少し苦笑しながら、ゆっくりと鞄から取り出したチョコを、今度こそ意中の相手の元に置くことができた。
一仕事終え、ふうと息を漏らすとほっとした気持ちが込み上げてくる。
「下駄箱なら、間違えようがないよね」
あまりの緊張で、そういえば先週席替えをしていたことを失念していた自分に呆れてしまう。
淀川君が変な奴で、それもバレンタインの日に朝早くに好きな人からのチョコを待ちわびてるような人で本当によかった。危うく阪元君に渡し間違えるところだった。いや、よくはない、のか?
でもそんな彼だからこそ、私は好きになったし、こういう滅多にない行動を取ることになったのだ。一応のところは、感謝をしておこう。
「あ、宮森さんいた!」
ビクッとして、声のする方をバッと振り向くと淀川君が息を切らして立っていた。
「な、なに? 追いかけてきたの?」
「ああ。心配だからな」
「そう……」
「でも元気そうでよかった。体調が悪いわけじゃなさそうでなによりだ」
そんな言葉を掛けてくる淀川君を見れずにいた。なに、変な奴なら一貫してよ。そういう気遣いとかたまに男らしいとことかが……。
「それに、これ落としていったぞ」
「あ、それ……」
淀川君の手には、チョコの箱に同封されていたはずの手紙が入っていた。どうやらさっき教室で落としたものらしい。
「そんなに動揺しないでくれ。流石に開いて中身に目を通すほど、落ちぶれていない。え、なんでそんな意外そうな顔してるんだ?」
「ああ、ごめんつい」
うっかり感情が顔に出てしまった。淀川君は私の前に手紙を出して、嬉しそうに口を緩ませる。
「宮森さんが頑張って綴った手紙だ。僕に読む資格は皆無だ。しっかり阪元に届けてやってくれ。さっきはああは言ったが、宮森さんの気持ちは絶対に埋もれずに彼に届くはずだ」
だから、なんでそういうこと言えるのこの人。全く、そのどこまでも素直なところが、私には……。
「チョコに関してもそうだ。しっかり思いは届くはずだ。ちゃんと意中の相手に渡るのが一番だ。我ながらバカな作戦を画策したものだ。無理やりチョコを貰おうとは浅はかな。申し訳なかった」
「いいよ、そんなの」
しっかりと頭を下げ、淀川君は謝罪した。しばらくして顔を上げると今度は清々しい顔になっていて、
「だが、宮森さんのことを諦めたわけじゃない。チャンスはまだまだ残っていると思っている、確信している。いつか振り向かせてやるさ」
七三分けをなぞってみせてニヒルに笑う淀川君だった。なにそれ、かっこいいつもりなのだろうか。これをかっこいいと思ってしまうのはせいぜい私くらいのものだろう。感謝してほしい。
「じゃあ、手紙を」
「いい。持ってて」
改めて差し出してきた手紙を私は突っ返した。淀川君は「え?」と戸惑いを隠せないでいる。
「だが、ちゃんと阪元に――好きな人に渡すべきでは。ああ、僕から阪元に渡しておけば万事オッケーか」
「いい。そのまま持っといて」
「ん、それだとせっかく書いた宮森さんの手紙が……」
「いいって。あとチョコももう淀川君にあげる」
「それはダメだろう! ちゃんと阪元に渡すべきだ!」
「いいから! あげるって言ってるの!」
その後も数度の問答があったが、なんとか私が押し切ることに成功した。
「じゃ、じゃあありがたくお言葉に甘えて、チョコだけに。……ほ、本当にいいのか?」
「いいって! じゃ、チョコは下駄箱にもう入ってるから」
「ありがと……ん、もう入ってる? 何故だ。え、もしやこの状況を予期していたということか!?」
「……えーっと、うん、そう! そうなの!」
「すごすぎる……宮森さんがそんな予知めいた能力を持っているとは。ますます好きになっていくぞ!」
なんとか力技で納得させ、子供のようにキャッキャと喜んでいる淀川君を置いて再び教室へと戻る。心なしか廊下を歩く歩調が早い。
こんなはずじゃなかったのに……淀川君は相変わらず予定通りに物事を進めさせてはくれない。
ただ、チョコを確実にあげるという、今日のミッションは形はどうあれクリアすることができた。
ちょっと変わった淀川君と、素直になれない私の恋路は、ようやく折り返し地点といったところか。
「先はまだまだ長そうだ」
自嘲気味にポツリと呟いたその言葉は、意外にも私の耳を心地よく通っていった。