6話
掃除、洗濯、そして調理までリーさんが担当していると知った日から
色々と疑問に思う事が増えてきた。
ケイルという人物についてだった。
王族、しかも現国王の息子で3男。
上の兄は、ハイド兄さん。そして引きこもりのロイド兄さんが居る事。
姉は2つ上のアンネ姉さん。性格は温厚そうで、話しやすかった。
ハイド兄さんに関しては最悪だった。
自分以外を全員見下している気がする。
ここで生きていく為には極力距離を置かなければならない人物だった。
そして、なんでもできる万能メイドのリーさんだ。
彼女はなんでも一人でこなしてしまう。
それも恐ろしく早くだ。
ケイルが小さい時は乳母がいたが、その人も今はいない。
「リーさん、昔ここにいたもう一人のメイドさんはどうしたの?」
実に可愛らしく、純粋な質問をする様にリーさんに尋ねると少し眉を顰
めた。
これは聞いてはいけない質問だったのだろうか?
「ケイル様、それはもう昔の話です。今はこのリーがお側にずっとつい
ております。」
「どうして?リーさんだけだと、リーさんが倒れちゃうよ〜。そんなの
僕、いやだよ〜」
「そんな事はございません。リーはこう見えて強いのです」
「そうなの?」
「はい、今日は猪の肉をとってきました。夕飯は豪華にしましょうね」
「わーい!やったぁ〜!!」
実に子供らしく振る舞った。
話ははぐらかされたけど…
やっぱり、肉は調達してきた物だった。
となれば、どうして本館から送ってくれないのだろう。
昼に窓の外を眺めるとリーさんを見つけた。
本館へと繋がる門の方へと行くと何か袋の様なものを持って帰ってきた。
「今日の分の食料かな?」
じーっと眺めると中身をひっくり返すとそのままゴミ箱へと捨ててしま
った。
「えぇぇぇ!!」
ケイルは慌てて走り出すとさっき捨てた場所へと向かう。
そこはゴミを放り込む様に明けられた穴がある。
いつも生ゴミが多いなとは思っていたが、その原因はこれだったのだ。
さっき捨てられたばかりの野菜や、肉がこれでもかと積み上げられて
いる。勿体無いにも程があるだろう。
カラスが群がると突き始めた。
「そんな〜。お野菜がぁ〜」
鮮度も悪くない気がするのに、リーさんは何が気に食わなかったのだろう。
カラスの群がるのを見て居るとさっきまでパクパクと食べていたのに、今
は食べるのをやめるといきなり大声で鳴き出した。
「カァァァァーーーー!」
そのひと鳴きすると急にパタリと動かなくなった。
痙攣する様にピクピクとしている。
それから数羽、同じ様に動かなくなっていく。
「うそっ…」
食料を食べた鳥は全部が同じ様に死体の山となった。
野菜も肉も、どれも突いた後がある。
「これって誰かが…」
「ケイル様?」
「リーさん、これってどう言う事?食料に何が入っていたの?」
「それは…本館から貰ってきたものです。ですが、食事にはいっさい使
っていません」
「うん…僕を殺そうとして居る人がいるの?」
「…」
黙ってても、流石に理解してしまう。
食事が質素なのも、理解した。
渡されたものは全部使えないので、新たに調達していたのだ。
それを知ると、いても経ってもいられなかった。
ケイルは素手で毒の入った食材を手にしたのだ。
リーさんは慌てて引き離そうとするが、必死に野菜の種を探した。
種なら毒もないだろう。
種を数個手にすると、しっかり握りしめた。
「ケイル様、この様なものに触れてはなりません」
「大丈夫だよ、食べたりしないから。リーさんが作ったもの以外は
口にしないよ。」
リーさんの目の前で手を洗うとやっと解放された。
ポケットに隠した種を取り出すと土の中に埋めた。
数個収穫するとあとは種を取る為に成長させた。
最近では魔力を使っても疲れにくくなった気がする。
「リーさん。見て見て!」
「それは…どうしたのですか!」
「僕が育てたの!屋敷の隅っこで育ててるんだ〜どう?使える?」
「はい、とっても美味しそうですケイル様」
「でも、リーさんはどうして毒が入ってるって分かったの?」
疑問だった事を聞くと、にっこり笑いながら鑑定の事を教えてくれた。
物ならなんでも鑑定で見れるらしい。
早速書庫で調べるとそれに関する本を見つけた。
そいういえばそんなのあった気がする。
それからは、いろんなものを鑑定する様になったのだった。