13話
10年という月日をかけて、準備をして突入した。
もちろん、最高級の鎧に身を固め、最高級の杖と、剣とパーティーメンバー
も一式揃えて挑んだ戦いだった。
その間もいろいろな村を救い、何人も魔族を打ち滅ぼした。
そしていよいよ突入という時になって、予想外の出来事が起きたのだった。
その日は野営していた。
聖女様の手料理をいただいている途中でいきなり聖女様が苦しみ出して倒れた
のだった。
そのあと、仲間達も次々と倒れて行った。
「なぜ…なぜお前だけ…まさか…」
「違うっ、どうして…こんな…」
さっき食料を揃えた村に戻ると、誰一人生きてはいなかった。
生きていた様に見えたのはまやかしで、魔族の罠だったのだった。
圭子は無我夢中で殺して回った。
そしてその夜のうちに、魔王城へと乗り込んだのだった。
目についた魔族を全員屠って行くと、もう後ろには死体の山が築かれていたの
だった。
あとは魔王のみ…詰め寄る様に追い詰めて行くと流石に力の差を理解したらし
い。
「頼む、殺さないでくれ!降参だ…あんたの勝ちだよ」
「降参?何を言っているの?魔王は死なないと私帰れないんだけど?」
「はぁ?ちょっと待て!俺もこんなの聞いてないんだ。魔王として勇者を返り
討ちにしたら、賞金を持って帰れるって…」
「なら、賞金と共に死んで」
一瞬で首を刎ねると魔王の身体は霧散して行った。
「おめでとう!さすがに無双だったね〜!呆気ないね〜!どう?楽しめた?」
リンリンの声に、終わった事を知った。
これで帰れる。お兄ちゃに会える。
「おめでとう、望みはなんだい?」
「私を元の世界へ帰して!」
「了解!では、少し時間が経っちゃうけど、3年くらいラグがあるかな〜、では
いっくよぉ〜!」
そう言って、来た時と同じ様に光に包まれて行った。
そして懐かしい景色を見た。
いつも通っていた通学路。
その先へ行けば自分の家だった。
走り出すと、急いで家に向かった。
玄関には鍵がかかっていたがポストの中の裏に貼り付けてあるのは変わらない。
「ただいまーーー!!」
大声で中に入ると静かで誰も返事すらない。
母親の寝室へと向かおうと足を向けると何か異臭がした。
異世界で嗅いだ事のある匂いだった。
何かが腐った様な臭い。
特に人が腐敗する時の臭いににていた。
嫌な予感しかしなかった。
扉を開けるとそこには首を吊っている母親の姿があった。
もう、母親の面影すらなかった。
臭いはこの部屋のせいだろう。
吐きそうになって堪えた。
扉を閉めるとキッチンへと降りて行く。
「お兄ちゃんはどうなったの?お兄ちゃん!」
兄の部屋へいくと線香の香りがする。
仏陀に兄の少し大人びた姿が飾ってあった。
自分がいない間に何が起こったのだろう。
仏壇の横には一冊の日記が置いてあった。
圭子が居なくなった日から兄が通り魔に刺されて死んだ事も書かれていた。
そして死を決意した母の気持ちがそこには綴られていた。
「うそ…嘘よ!そんなの…酷い」
せっかく帰ってきたのに、会いたい相手はもういないなんて…
「見てるんでしょ!出てきなさいよ!」
「なんじゃ気づいておったのか?」
「どういうことよ。これは…」
「じゃから、元の世界に戻してやったじゃろ?」
「こんなの、私の世界じゃない!お母さんもお兄ちゃんもいない世界で、
どうしろっていうのよ!」
「なら、さっきの世界に戻るか?」
「…」
「お主には感謝しとるからのぅ。あの世界で生きるといい。永遠の命も追加
するぞ?」
「そうね、いただくわ。もう、私の自由に生きていいのね?」
「あぁ、好きにするがいい。」
そう言うと、再びあの世界へと戻った。
が、魔王を倒してから100年が経った世界だった。
世界が平和になって、国同士が戦争になっていた。
魔族が消えたせいで、矛先が人間同士の争いへと発展したのだ。
そこで、圭子は漆黒の魔女と名乗って珍しい黒髪、黒目をトレードマークに
傭兵として雇われながらお金を稼いだのだった。
漆黒の魔女が味方した陣営は必ず勝利した。
なぜなら、何もしなくても一人で大将首を刎ねて持って来るからだった。
「おぉー流石の漆黒の魔女様!被害を出さずして我が軍の大勝利ですぞ!」
「では、金貨5000枚報酬でいただきましょう」
「えっ…それは待ってくれ、分割で。いや、うちの息子なんてどうじゃ?
一国の王となる身だぞ?」
「出せないんですか?」
「いや〜それは…おい、出てこい!取り囲め!」
さっきまで喜び勇んでいたのが一気に旗色が変わった。
たった一人の女に敵の大将は死んだと言うのに、同じことを繰り返すらしい。
そしてその場の人間は誰も動かなくなった。
悠々と天幕を出ると返り血を浴びたまま次の街へと向かった。
途中で野党を倒して追い剥ぎをすると汚れていない服も手に入れた。
そして1000年ほどが過ぎていった。
見た目はいつまでも変わる事はなかった。
心だけが荒んでいって、今では殺人依頼をたまにこなして生活費にしていた。
今度は金払いのいい王族殺しの依頼だった。
年は7歳。
まだ年端行かないと言うのに…
ため息をつきながらナイフを磨くと、魔法で空へと舞い上がった。




