ぬいぐるみの てんごく
『冬の童話祭2023』投稿作品です。
ぬいぐるみのその後について、想像を膨らませてみました。
楽しんでもらえたら嬉しいです。
おそらのうえには てんごくがあります。
そのはじっこに ぬいぐるみのいく てんごくがあります。
そこのじめんは くもではなく わた。
やくめをおえた ぬいぐるみの あつまるばしょでした。
そこには ひとりの かみさまがいます。
ウサギのぬいぐるみが かみさまのもとにやってきました。
「やぁ、おつかれさま。ウサギくん、きみはずいぶんだいじにされていたみたいだね」
「はい! とってもかわいがってもらいました!」
「そうかい。それはよかった」
かみさまにあたまをなでられて ウサギのぬいぐるみは うれしそうにみみを パタパタさせます。
「これからきみは、ここでのんびりくらしてもいいし、またぬいぐるみにうまれかわってもいい。どうしたい?」
「すぐにでもうまれかわりたいです!」
「そうかいそうかい」
かみさまは ニコニコとわらって ウサギのぬいぐるみをだきしめます。
するとウサギのぬいぐるみは オレンジいろのちいさなたまになって てんごくからすべりおちていきました。
「またステキなひとにであえるといいね」
つぎにやってきたのは イヌのぬいぐるみでした。
イヌのぬいぐるみは ボロボロのすがたを していました。
かみさまは イヌのぬいぐるみをなでながらききました。
「イヌくん、きみはずいぶんげんきなこのところにいたんだね」
「はい! どこにいくのもいっしょで、でもちいさいからぼくのことをひきずってあるいていました!」
「そうかい。しあわせだったのかな?」
「もちろんです!」
そうしてイヌのぬいぐるみも オレンジいろのたまになって うまれかわりにいきました。
「たくさんあそべるといいね」
つぎにやってきたのは よごれのほとんどない ゴリラのぬいぐるみでした。
そのかおは とてもかなしそうでした。
「ゴリラくん、きみはずいぶんかなしそうだね」
「はい……。ぼくをプレゼントされたこが、『かわいくない!』っていって ぜんぜんあそんでくれなくて、ずっとおしいれのなかだったの……」
「そうかい。それはつらかったね」
かみさまは ゴリラのぬいぐるみのあたまを やさしくやさしくなでました。
「かみさま。もっとかわいいぬいぐるみにうまれかわったら、こんどはかわいがってもらえるかな?」
そうきくゴリラのぬいぐるみに かみさまはおだやかにこたえます。
「それはわからない。おとこのこなら、『かわいいぬいぐるみなんていらない!』っていって、きみみたいなゴリラのぬいぐるみをすきになるかもしれないよ」
「そうかぁ……」
ゴリラのぬいぐるみに すこしげんきがもどりました。
「でも、まだちょっとこわいかな……」
「ならしばらくここにいるといい」
「え、いていいの?」
「あぁ。ぬいぐるみのみんなは、すぐにうまれかわりにいってしまうから、わたしはときどきさびしいんだ」
「かみさまもさびしいんだね……」
「きみがうまれかわりたくなるまででいいから、わたしのそばにいておくれ」
「うん!」
げんきにうなずいた ゴリラのぬいぐるみは かみさまのむねに とびこみました。
こうして ぬいぐるみのてんごくには かみさまとゴリラのぬいぐるみが くらしています。
あなたがもっている ぬいぐるみも かみさまとゴリラのぬいぐるみを しっているかもしれません。
読了ありがとうございます。
昔書いた童話に暖かい感想をもらって、嬉しくなってやった。
後悔はしていない。
ぬいぐるみやおもちゃとは、様々な事情で別れるものです。
でもその魂が生まれ変わって、また別のものに宿ったら……。
そう思うとより一層大事にできたりするのではないでしょうか?
そのうちチート能力に目覚めたぬいぐるみとか生まれそうですけど……。
お楽しみいただけたなら幸いです。