寝る子は育つ
宿屋は案外近いところにあり、看板には羊の宿屋と書いてあり外観も特に問題は無さそうなのでとりあえずはここでいいか…と思いドアを開けた。
「いらっしゃいませ。何泊ですか?」
私と同じくらいの女性が出迎えてくれた。女性が店員だと少し安心感がある。
「とりあえず1泊で。どのくらいですかね?」
「うーん。お客様お食事はどうされますか?三食付きで3000G、無しで2500Gですけど。」
「じゃあ、食事は無しでお願いします。」
「はい。では、301の鍵をお渡ししますね。寝るときや出かけるときは必ず鍵を掛けてからでお願い致します。」
「はい。分かりました。あっ、すみません。お風呂はありますか?」
「お風呂ですか…すみません。うちにはありませんね。体を拭くお湯などはご用意出来るのですが…。それかお値段は張りますが、ここよりもう少し王宮寄りにお風呂がある宿屋があるんですが…」
やっぱりお風呂は貴族やお金持ちの特権なのかな?こんな疲れた日はお風呂に浸かってゆっくりしたかったんだけど、初日でお金使うのもあれだし我が儘も言えないしね。
「いえ、すみません。ここでお願いします。あとでお湯をお借りしたいです。」
「かしこまりました。少し経ってからお持ちいたします。ごゆっくりどうぞ。」
案内された部屋は、ベッドと椅子と机というシンプルな作りになっていた。掃除も綺麗にされていて、ベッドはちょっと硬いけど女性の店員さんも優しそうだしここを選んで正解だった。
お湯を貰い、身体を拭いた後。明日からの事を考えてるうちに寝てしまったらしい。気づけばもうお昼になりそうな時間だった。こんな時間まで寝たのは何年ぶりかってくらいで、そこだけは異世界に来て良かったのかなと少し感謝した。
昨日考えがまとまる前に寝てしまったので、どうしようかなと悩んでいたけどせっかく異世界に来たんだから異世界を満喫しようと決め、とりあえずギルドというところに行ってみる事にした。ギルドといえばよくゲームで出てくる冒険者などが集うってイメージがある。正直言うと魔物と会い戦える自信は全くない。私の才能はチートというわけでも今すぐ使えるわけでもないしなにより、いのち大事にゆっくりまったりお金を稼ぎたいただそれだけだ。しかし異世界に来て何もしないなんてそれこそ嫌だった。
そこでギルドなら、初心者講習とかないかな?とか薬草探しとかだけでも出来ないかなと思い至った訳だ。