5年目~小学6年の時に見た事
次の年になり、お盆を迎える前に、去年の事が気になりました。
「あの、焦げ臭い炭の塊は今年もあるのだろうか?」
「とにかく不快な臭いだから、今年には無くなっていて欲しい!」
しかし、お盆を迎えるなり、その期待は見事に裏切られました。
去年と全く同じ所に、あの炭の塊があったのです。
「今年のお盆は、何事もなく過ぎて欲しいな…」
去年の事が、あまりにも衝撃的だったので、切に願いました。
しかし、物事はそんなに平穏には済まなかったのです。
昨年、40代位で亡くなられたご先祖様に引き込まれた、サラリーマン風の方が、路地に入ってこようとしていました。
路地の長老は、その度に、
「お前は、この路地にある家の先祖じゃないから、出ていきなさい」
と言って、追い払っていました。
しかし、何度追い払っても、路地に入ろうとしてくるので、路地の入り口付近にいるのを渋々容認したようでした。
サラリーマン風の方は、最初は大人しくしていましたが、だんだんと落ち着きが無くなってきて、路地の外へ頻繫に出入りするようになりました。
そして、事もあろうに全く知らない方を引き込んできたのです。
「あぁ…何という事だ!」
「俺の代になってこんな事が立て続けに起こるなんて…」
「その者!だから何度も路地から出ていけ!と言ったのじゃァ―!!」
「いつまでも路地の入り口に来るから、情をかけて置いてやったら何というザマか!」
「よくも、こんなとんでもない事をしてくれたな!」
「誰であろうと、生きている人間を引き込んではならん!!」
「秩序を乱した者は、誰であろうと制裁を加えるだけじゃ!」
…と言うなり、路地の長老は全身が真っ赤になり、再び仁王様の様な表情でお怒りになり、その者をあっという間に焼き払い、炭の塊に変えたのです。
すると、また肉が焦げた時に発生する、嫌~な臭いが辺りに立ちこめました。
最初にあった炭の塊の隣に、またひとつ増えてしまった…。
とにかく、あの焦げ臭いは苦手なんだよなぁ…。
サラリーマン風の亡霊が引き込んだ方は、細身のおじさんでした。
路地の長老は、次に同じ事が繰り返されない様に、細身のおじさんをすぐに路地から追い出して、その年は路地の入り口にずっと佇んでいました。
その年のお盆が終わる頃には、最初に業火に焼かれた炭の塊が、少しずつ崩れて低くなっているのが分かりました。
「来年のお盆には、去年炭の塊にされた物は自然に消え去るのではなかろうか?」
「でも、新たにまた炭の塊が出来てしまったので、当分はあの臭いに悩まされるんだろうな…」
と、思いました。