4年目~小学5年の時に見た事
次に路地を仕切る、副会長のご先祖様は、規律にとても厳しい方でした。(今後、この方の通称を「路地の長老」とします)
やるからには、トコトンやる!という方でした。
とはいえ、これといった規律を逸する行為が無ければ、普段は大人しい感じでした。
しかし、次の年のお盆に、ある事が起きてしまったのです。
お盆に入ると、路地に集まった近隣のご先祖様がお話を始めて、夜になると静かになりました。
この年は、路地のあるお宅で40代位の方が亡くなったのですが、ご先祖様の中では新参者なので、路地の入り口付近にいました。
ただ、この方はどうも落ち着きが無いのです。
路地の入り口付近を、ずっとウロウロしていて、たまに路地の外に出ていき、1~2時間位したら戻ってくるのです。
お盆も中頃を過ぎた頃だと思いますが、路地の入り口付近に見慣れない方を見るようになりました。
その方は、小太りの中年の方で、ワイシャツに水色のネクタイをして、スラックスをはいていました。
そのサラリーマンの風の方が、路地の入り口付近に大人しく座っていました。
それを見るなり、路地の長老は、顔を真っ赤にして、みるみる仁王様のような表情になりました。
「何という事をしてくれたんだ!」
「こいつは、生きている人間をこっちに引き込みやがった!」
「許さんッ!絶対に許されない事をしてくれやがったッ!」
と、言うなり全身が真っ赤になり、もの凄い怒りに満ちあふれたのです。
そして、片手を勢いよく前に突き出して、
「この者を業火の炎で焼き付くしてくれようぞ!」
「ブワァァァァァー」
「ゴゴゴゴゴォー!」
路地の長老の右手から出た灼熱の炎で、40代位で亡くなった方が一瞬にして黒焦げになったのです。
「まだまだァ!こんなもんで済ますもんかァ~!」
灼熱の炎は更に焼きつくしていきます。
しばらくすると、肉が黒焦げになった時に発生する、嫌~な臭いがたちこめるようになりました。
路地の近所の方も、この臭いだけは分かるようで口々に、
「何か、焦げた様な嫌な臭いがするね…」
と、言っていました。
路地の長老に灼熱の炎を受けた方は、最後は炭の塊みたいになっていました。
「若くして生涯を終えても、生きている人間を引き込んではならん!」
「さもなくば、次はこの炭の塊のすぐ隣で業火に焼かれるだけだ!」
路地の長老は、そう言い残して、いつもの姿に戻られました。
ぼくはそれを見て、とても怖かったです。
そして、炭の塊を見る度に、苦しそうに焼かれていったご先祖様の表情を思い出すのです。
ただ、この炭の塊はとにかく焦げ臭いので、来年には消えてくれないかな?
と、思いました。
この年から、穏やかではないお盆を見る事になったのです。