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2年目~小学3年の時に見た事

 次の年になりました。


 去年お盆の時に見た事が、まだ気になっていました。


「ん~、あの時…、路地にはだいたい20人は居ただろうか?」


「あの方々は、一体どちらの家のご先祖様だろうか?」  


「まあ、まず知ることはないだろうな…」


 …と、思っていたら、意外にも少しづつですが分かってきたのです。


 その当時は、ぼくが小学生だった事もあり、近所の方が声を掛けてきて、お家に上がらせてもらい、お茶やお菓子(かし)を頂く事がありました。


 いつもなら、ジュースやプロ野球チップスやらを、ササッと頂いて、


「ごちそうさま~!」


 って、お礼を言ってから、走って草野球をしに行く感じでしたが、


 もしかしたら、去年のお盆の時に見えたご先祖様の写真が、仏壇に(かざ)ってあるのかな?


 …と思い、半分閉まっていた仏壇の(とびら)を、ソッと開けてみました。


 するとそこには、あの時に見えた、(ひげ)の長いご先祖様の写真が飾ってあったのです。


「あっ!この方は確か…」


 と、思いましたが、勝手に仏壇の扉をあけた事を、家の方に見つかってはまずい!と、思い、(あわ)てて元の位置に閉めました。


「あっ、そうだ!早く草野球をしに行かなくちゃ」


 いつもとはちょっと気が動転した感じで、お家を出ました。


「ん、確か…髭の長いあの方は、ん~、左奥の列に居て…太い木の杖を持っていたような…」


 と…まあ、こんな感じで家の前の路地にいたご先祖様が、1人、また1人と分かってきたのです。


 2年目のお盆を迎える頃には、20人中10人位のご先祖様が分かるようになりました。


 近所の方で、お家に上がらせてもらえる機会があった所は、ご先祖様の写真を何回か見られたのですが、それ以外の方々は、どこの家のご先祖様か分かりませんでした。


 そうこうしているうちに、その年のお盆を迎えたのです。


 だいたい16時過ぎになると、昨年の時のように、


「ガヤガヤガヤ…ガヤガヤガヤ…」


 と、路地に人が集まって話している声が聞こえてくるのですが、その年はその話し声を少しだけ聞き取る事が出来ました。


「やあ、また会えたね」


「今年もまた会えたね」


 聞き取れたのは、この2言でしたが、お盆の時に路地に集まってくるご先祖様は、各々のご家庭にお戻りになる他に、ご近所のご先祖様とお話しされるのを、楽しみにしているようでした。


 この年に、ご近所のお(ばあ)さんからこんな話を聞きました。


「お盆の最終日にお天気雨が降ると、ご先祖様が天に昇ってお帰りになる姿が見えるよ」


「午後4時過ぎに、もしお天気雨が降っていたら、あんたにも見られるかもしれないよ」


 ぼくはそれを聞いて、


「そんなに都合よくお天気雨なんて降るもんかな…」


 と、思いましたが、お盆が終わる日の午後4時過ぎに家の前の路地に出てみました。


 そうしたら、本当にお天気雨が降っていました。


 ぼくが(たたず)んでいた路地の少し先には、近所のお婆さんが居て、熱心に空を見ていました。


 そして、ぼくの姿に気が付くとすぐに、


「早くごっちに来て見てごらん、なかなか見られるもんじゃないよ」


 …と、言うと、大きく何度も手招(てまね)きしてきました。


 お天気雨とはいえど、けっこうな大粒(おおつぶ)の雨が降っていたので、(かさ)をさしたまま近付いて行ったのですが、


「傘なんかさしていたら見えないよ!」


「すぐに止むから、天を見てて!」


 自分は、言われた通りに傘をつぼめて、しばらく天を見上げていました。


 すると、お天気雨が急に弱くなり、太陽が雲に(かく)れました。


「今年は見えないかもしれないねぇ」


 と、言った少し後に、雲の合間からほんの少しだけ光がさしてきました。


 すると、先程まで路地にいたご先祖様が、天に昇っていくお姿が見えたのです。


「ほぉ~、今年は何とか見られたねぇ」


 自分は、さっきまで雨に()れていたのも忘れて、天を見上げていました。


 それから30分位すると、急に外が暗くなってきました。


「お盆の時は、毎年同じように、近所のご先祖様が路地に集まって再会を喜び、また天に昇っていくものなのかな」


「そして、お盆の最終日にお天気雨になれば、運が良ければご先祖様が天に昇っていく姿が見られるかもしれないのかな」


 …と、思いました。


 ぼくは、これからもお盆の度にいろいろな事を見るのでした。





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