【いつもの日常】
「でさ〜」
「マジ?!本当なの?!」
「うんうん。そんで〜」
今日も五月蠅く女子の声がまだ明るい午後の教室に響く。よくも話のネタが尽きないものだと半ば呆れ、感心する。
「よう!尤!帰ろうぜ!」
「そうだね。午前授業だったし、いつまでも学校にいても何にもならないし。帰ろうかな」
「おう!じゃあ校門でな〜!」
元気に走っていく中々の色男。僕の親友の輝。
「輝君バイバーイ!」
「おう!じゃあな!」
輝が出て行った後、俺は荷物をまとめていたところ。
「あ、あのっ!!!」
ん?と教室中の視線が入り口に向けられる。(さほど人数はいないけど)
「尤さん・・・居ますかっ?!」
ほいほい。と入り口に向かう。
「よっ!色男!」
「下級生の子じゃん!かーわいいー!」
ムサい男どもの喚声を聞きながら廊下に出る。
「あの・・・これっ!!」
顔を真っ赤にし、女の子が手紙を出す。
とうとう俺にもこの時が_____
「輝先輩に渡してもらえませんか?」
チッ、またかよ。色男とつるんでると必ず起こる悲劇。
親友経路。どうどうと渡してこいっつーの。
「悪いけど、自分で渡しなよ。アイツはそういう方が好みだと思うよ?」
ああ、まったく俺は優しい人間。アイツの好みもしっかり教えてあげて、背中を押す勇気をあげてしまうお人よし。(輝にはかなわんが)
「あ、ありがとうございます!!自分でやってみます!!」
行ってらっしゃ〜い。と俺はひらひら掌を振る。
今月で何人目だ?まったく、色男のお守りは辛いのなんの。
そして向こうから輝がやってくる。
「尤〜!まだかよ〜!!」
あ〜あ、あの子何処にいるんだろうな〜。と思いつつ玄関にしぶしぶ向かう俺。
「へいへい。お待ちどーさん」
「本当に待った!!帰りにアイス奢れ!!」
「いやじゃ」
下らないやりとりをし、結局アイスを食いながら二人で歩いて帰る。
「剣道の試合どうだった?」
俺が輝に問う。ちなみに輝は文武の武しかできないような奴。文は平均といって良いくらい。
「俺が負けるとでも?」
ふん。と仰け反りながら威張って言うアホが俺の隣に一人。
「おう」
クソ真面目に答える俺。
「なっ、失礼な!無敗の王者と呼ばれたこの俺が負け」
「わーった。わーった。おめっとーさん」
下らないこの世界がどうにかなるなんて夢にも思わなかった。ましてや別の世界があるなんて。
「なあ尤。なんか耳鳴りしないか?」
「そういえば、何か引っ張られているような感じもしねえ?」
「尤もか?」
「輝もか?まぁ振り返ったら次元の扉〜なんてファンタジーじゃあるめえしなぁ?」
クルリと俺の言葉を聞き取った輝が後ろを振り向く。
「な?ねぇだろ?」
「いや、後ろ。」
「うん?」
振り向かなければ良かった。
俺が後ろを向いた瞬間。ぐぃんと引っ張られるような感じがして。
【引きずり込まれた】