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55.別れ道

 翌日、サウスパース港に着いた。

 リブジーさんとディエゴ、セリカちゃんは、急いで宿に戻っていく。

 お母さんの治療をするためだ。


 アンヘルも、別れの挨拶もそこそこに旅立っていった。

 孤児院を開いたら、セリカちゃんの宿に手紙を送るように頼んでおいた。

「おう、任せとけ。

 数年後になるとは思うが、運転資金の寄付は頼むぜ」


「もちろんだ」

 アンヘルは、希望に燃えている。

 きっと数年後には、奴の設立した孤児院に寄付に行かないといけないな。



 俺も一人で港の事務所に行って、一カ月の停泊を申し込んで費用を払った。

 出発前に色々なものを売って手に入れていたお金で、払った。


 今回のお宝の金貨は古い時代のモノだ。

 どこかで、現在のお金に換金しないといけない。

 ただ、大量すぎるので、こんな田舎では数枚しか無理だ。




 結局、3人分で9千枚以上の金貨が手元に残ってしまった。

 船に残ったリンプーとスージーに向かって、つぶやく。

「結果的に冒険は楽しかったけど、船と使い切れないような大金が手に入っちゃったな。

 革袋に、一人3千枚ずつに分けたけど、重くて持ち上がらないんだ」


※金貨1枚30グラムとして、3千枚だと90キロにもなってしまう。



「スージー以外、とても持ち運べないニャ。

 アンヘルも、セリカも100枚くらいにして賢いニャ。

 金庫でも買ってくるしかないニャー」


「金庫を手に入れるまで、船から降りれないじゃないか」


 リンプーが、ハイッと手を上げる。

「じゃあ、アタイが買ってきてやるニャン。

 それとアタイの分のお金は、トモヤが管理してくれニャ」


「どうしてだ?」


「夫婦の財産は、夫が管理すればいいニャ」


「えっ、夫婦? 俺とリンプーがか?」


「そりゃそうニャン。

 苦楽を共にした仲間ニャから、当然だニャー。

 これを言うために、セリカが船を去るのを待ってたのニャ」


「そ、そうなのか」

 佐倉さくら李依りえちゃんの顔のねこ耳少女と夫婦?

 うれしいぞ。思わず「ナナチー」と言って抱きつきそうになった。



「では、私の分のお金もトモヤが管理してくれ」

 スージーも言ってくる。

「スージーは、どうしてだ?」


「夫婦の財産は、夫が管理すればいいからだ」

 ええっ? まさかの重婚?


「な、何を言ってるニャ。

 どうしてお前も夫婦なのニャ?」


「夫婦というのは、信頼できる仲間なのだろう?

 それなら、私も一緒のはずだ」


 リンプーが、焦って説明しようとする。

「い、いや、夫婦というのはニャー、二人単位のモノで……」


「キャプテン・ミッドは、妻が5人いたぞ。

 私を仲間外れにするのか?」


「キャプテン・ミッドは、人の道に外れたやつだニャ。

 参考にしてはいけないニャ」


 リンプーとスージーが言い合っているが、俺はこのハーレムエンドの予感に胸がいっぱいだ。

「トモヤ、何をにやけているニャ!」

 リンプーの後ろ回し蹴りを後頭部に喰らった俺は、ホワワーンとしながら昇天した。




 気が付いたら夜だった。

 いつの間にか、金庫が据え付けられている。

「銀行って、すごく便利なシステムなんだなあ」

 俺のつぶやきを聞いて、リンプーが呆れている。

「何をバカなことを言ってるニャン。

 金庫番をスージーに任せて、アタイ達はセリカたちの様子を見に行くニャ」


「船室から甲板に金貨の入った金庫を持って行くのは、スージー以外無理だから、船室に鍵をかけてみんなで出かけよう」

 俺の言葉に、スージーは嬉しそうだが、リンプーはホッペを膨らませて不満そうだ。




 セリカちゃんのお家である『トラねこのいこい亭』に着いた。

 中に入ると、セリカちゃんのお母さんが、起きていた。


「トモヤさん。ありがとうございます。

 聖杯ゴブレットで薬草水を飲ませたら、お母さんが、お母さんが……」

 セリカちゃんが、涙で言葉を続けられない。


 リブジーさんが代わりに教えてくれる。

「セリカさんのお母さん、カリーナさんは起き上がって、歩き回れるくらいに回復したよ。

 本当に、こんな効き目があるのなら、妻にもなんとかしてやりたかったものだなあ」

 シミジミと涙を流さんばかりだ。


 その晩は、タダで宿泊させてもらった。

 夕食も豪華だった。


 食卓に並んで座ると、落ち着いたセリカちゃんが改めてお礼を言ってきた。

「トモヤさん。出発前には私の命を助けていただきました。

 お母さんの病気も、おかげで治りそうです。

 その宝物を手に入れるための航海にも連れて行っていただいて、何とお礼を言っていいか分からないほどです。

 本当に、ありがとうございました」

 セリカちゃんが、深々と頭を下げる。


「セリカちゃん。頭を上げてよ。

 セリカちゃんが一緒に航海してくれたおかげで、海の上で俺たちは美味しいご飯を食べることが出来たんだから」


「そんなことありません」


「そんなことあるよ。海賊たちも、セリカちゃんだけは連れて行きたがったのが証拠だよ」


「そ、それで、トモヤさん。

 リンプーさんたちと旅に出られるというのは、本当なのですか?」


「うん。本当だよ。

 あんな沢山の古い金貨は、田舎町では使えないしね。

 帝国の中心に近づいて、帝国金貨に替えたり、すっごい値打ちのある商品を買ったりして、これからは商人として生きていこうと思うんだ。

 俺には、戦いは無理だしね」


「私は、この宿を守っていかないといけません。

 トモヤさん。こちらの方へ旅で来られるときは、ぜひ寄ってくださいね」


「ああ。分かった。

 その時は、よろしく」

 俺は、セリカちゃんも旅に付いて来てくれるかな、とかコッソリ期待していた。

 そうなったら、まさにハーレムエンドだ。デヘ。


 それで少しショックだったが、お母さんが治って嬉しそうにしている姿を見て、満足した。

 セリカちゃん。幸せになってね。


 リブジーさんとディエゴは、もうしばらく滞在するみたいだが、俺たち3人は船に戻った。

 これからどうするかを相談しないといけない。

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