49.何度も見た夢
俺たちは、薄暗い洞窟の中を一列に進んでいく。
先頭を歩く俺の前方に、フワフワと火の玉が浮いている。
魔法の火の玉だ。
これ以外に光源は無い。もし消えたら、真っ暗闇だ。
道は平坦ではない。
登り降りもあるし、岩もゴロゴロしている。
人の手が入っていて、足元が厳しい場所にはロープが張ってあったりして、進めないほどでは無い。
とは言え、落ちたら死にそうな底の見えない溝や穴が、そこかしこにある。
足を踏み外さないように、慎重に一歩一歩踏みしめるように歩く。
お約束のように、俺の後ろを歩くリンプーが「おっとっと」と転びそうになる。
「おいリンプー。わざとじゃないだろうな」
「失礼な奴だニャー。わざとに決まっているニャ」
おいおい。
えっ?
自然にできた洞窟なのだろう。
壁が、少し濡れた土だ。
風が吹いている訳じゃ無いが、何だか空気がヒンヤリする。
まあ、肌寒いってほどでは無い。
しばらく行くと、行き止まりだった。
目的地に着いたようだ。
俺たちの行く手を阻む、頑丈そうな石の扉。
その扉の継ぎ目の近くに、わざとらしく設けられた丸い穴。
「それじゃあ、開けるニャ」
リンプーが、その穴に指輪に付いた赤い宝石をはめ込む。
ズズズズ
鈍い音を立てながら、石の扉が両開きの自動ドアのように、ゆっくりと開いていく。
扉の先は、小部屋になっている。
ここが、秘宝の間。
俺達が目指す秘宝が隠された、秘密の区画だ。
なぜだろう? デジャヴっていうやつだろうか?
一度経験したような錯覚にとらわれる。
ひとまず、ここまでは海賊たちに遭遇せずにこれた。
俺たちは、秘密の区画内に足を踏み入れる。
魔法の灯りが、辺りを照らす。
やった。ついにやった。
俺は、ついにやったんだ。
キャプテン・ミッドの秘宝を見つけたんだ。
大小の宝箱が並んだ洞窟の区画内で、俺は感動に浸る。
大きな宝箱のフタに手をかける。
力を入れて持ち上げると、パカッとフタが開いた。
沢山の金貨の上に、金色に輝く優勝カップのようなものが乗っかっている。
俺の後ろから手が伸びてくる。
セリカちゃんだ。
「聖杯。これで、お母さんの病気が治る。
ああっ、お母さんが、助かるんだあ」
目に涙を浮かべている。
良かった。俺の目にも涙があふれてくる。
正面の宝箱をはさんで、向こう側から声がする。
「やりましたね。トモヤどの」
スージーが、ニコリともせずに棒読みで褒めたたえてくれた。
なぜだろう。このシーン、記憶にある。
「スージー、まさか仲間を撃ったりしないよな」
「な、仲間……
一緒に協力して、困難を乗り越えていくための味方」
スージーが硬直する。
「スージー。仲間ってのは、障害を共に越えていくという意味もあるけど、喜びを分かち合う同志って意味もあるんだぞ」
「喜びを、分かち合う?」
「そうだ。ここにある財宝を持って帰って、みんなで幸せになるんだ」
「でも、この財宝。グランドマスターのモノ」
「えっ? グランドマスター?」
「キャプテン・ミッドが、グランドマスター。
この財宝に寄って来た生け贄を、処理しないといけない」
「い、生け贄?」
「グランドマスターの命により、処理を開始します。
ここまで、ありがとうございました。
そして、さようなら」
スージーが右手を前に出す。
パタンと手の先が折れて、手首の銃口が顔を出す。
ダン、ダン、ダーン
3発の銃声が鳴り響く。
「スージー、ど、どうして?」
俺は、薄れゆく意識の中で彼女の名前を呼ぶ。
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あ、あれ?
意識が、途切れない。
それに、撃たれた場所が痛くない。
空砲だったのか?
いや、体がしびれて動けない。
麻痺弾の類のものを撃ち込まれたのか。
3発撃たれたってことは、リンプーとセリカちゃんも同じ状態なんだろうか?
目を開けてみる。
かろうじて、周りの様子をうかがうことが出来る。
秘宝の間の入り口から、何者かがプカプカと浮かびながらやって来る。
ドラゴンパピーのフリントだ。
今まで、奴の考えとかは一切分からなかったんだが、このスージーとの会話だけは聞き取れる。
『スージー、なぜ3人とも生きている。
女二人は完全に、男は魂だけ殺せと言っていたはずだ』
『か、彼は、マスターだから、殺せない』
『何を馬鹿なことを。
魂を殺さないと、ワシの魂を移せないじゃないか。
またこのまま何十年も、ドラゴンパピーで過ごせというのか?
グランドマスター命令だ。
そいつの魂を今すぐ殺せ』
フリントがグランドマスター?
つまり、さっきのスージーの話からすると、フリントがキャプテンミッドだってことか。
魂を移すってことは、フリントはキャプテンミッドの魂の入れ物ってことだな。
この財宝は、キャプテン・ミッドが寄って来た奴の体を奪うために撒かれた撒き餌みたいなもので、俺たちはその罠にかかってしまったってことか?
フリントがイラついた様子で、もう一度言う。
『そいつの魂を今すぐ殺せ。
そのあと、そっちの女二人もさっさと殺すんだ。
この財宝の秘密が漏れたら、ワシが人として生きていくことが難しくなる』
うう、なんとか阻止したいが、体が動かないし、言葉を発することもできない。
だが、ありがたいことにスージーは行動を起こさない。
フリントが、スージーの真ん前までやって来て言葉を発する。
『なぜ、やらん。
ワシの命令が聞けないのか?』
『分からない。
何故なんだろう。
多分、私たちは、『仲間』だから?』




