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45.感染拡大

「でも、どうすればいいんだ?」

 俺は、自分が完全にリンプーの手駒になっちゃってるなーと思いながら聞く。


「まず、あれをどうにかしないとアタイ達の勝ちは無いニャ」

 そう言いながら、空を優雅に滑空するフリントを指さす。


「私の魔弾は、奴には当たらないぞ」

 先手を打って、スージーが言う。


「スージーには期待していないニャ」


 リンプーの言葉を聞いて、少し驚く。

 いやいやいや。俺たちの中で最強のスージーに期待しなきゃダメだろう。

「お、俺は期待しているぞ」


「ありがとうございます。マスター」

 スージーの口調は、全く揺るがない。

 でも、なんか嬉しそうな感じが伝わってくる。


「でも、銃は貸すニャン」

 リンプーは、銃を一丁スージーから受け取ると俺に渡した。


「えっ? でも、この銃って単発だし、当たらないと思うんだけど」


 リンプーは、俺の言い訳に全く耳を貸さない。

「ここから見えるあの岩、左から3つ目の岩の上に登ってこの銃で奴を狙うのニャー」


 3つ目って、ここから見える岩は結構離れて点在している。

「おいおい、そんな遠くの岩まで行くのかよ。

 一番手前の岩で良いじゃないか」


「一番手前だと、あの見張りの二人からも見えるニャ。

 3つ目の岩の上だと、見張りからは見えないけど上空のフリントからは見えて、好都合ニャンだよ」


「そういうもんなのか」




 俺は、リンプーに言われた岩の上で立ち上がった。

 ここまで、結構遠かった。

 スージーは見張り二人の監視に残しておいて、リンプーと二人でこちらに移動してきた。


 岩は大きいので、結構安定感がある。

 岩の上に立ったら、「気を付け」の姿勢でゆっくり100数える。

 これもリンプーの指示だ。


 フリントの飛んでいる位置が、若干こちら寄りになってきている気がする。

 俺の姿に気づいたんだろうな。

 俺は、ゆっくり片手に銃を持つと、もう片手でサポートしながらフリントのやつに照準を合わせる。

 照準を合わせると言っても、スコープ的なものがなにか付いているわけじゃないので、雰囲気だけだ。

 音を出して見張りのやつらに気づかれたら大変だから、絶対に撃っちゃダメだと言われている。


 フリントは少しジグザグに移動しながら、こちらに近付いてくる。

 そして、突然急降下してきた。


 俺は岩から飛び降りて、岩陰に隠れる。


 ブーン、バサバサ


 急降下してきたフリントが、リンプーの投げた投網にかかっている。

 フリントが網に絡まりながらも羽ばたいて飛び上がろうとするが、投網はロープで近くの木に縛り付けてある。


 リンプーが、そのロープを引き寄せながら、伝うように前進してくる。

 途中で地面に置いた鉄の棒を拾うと、両手に持って大きくジャンプする。


「海に落とされた恨みを、ここで晴らすニャー!」


 ブーン、ガッキーン


 リンプーが思いっきり回転させた鉄の棒の先端が、ドラゴンパピーの頭部に直撃する。

 一瞬フリントはグロッキー状態になったが、リンプーがもう一度鉄の棒を振り上げるのを見て口を大きく開ける。

 口の横から、火がチョロチョロと見える。


 リンプーが、横っ飛びに飛んで視界から消える。

 と同時に、フリントの口から炎のブレスが発せられた。


 ゴオーッ、パチパチパチ


 フリントを覆っていた投網は燃えて、自由になったフリントは飛び上がる。


 ゴオーッ


 フリントは、再度リンプーのいる方向に火を噴くが、また横っ飛びで逃げられてしまう。


 リンプーは、フリントの背後に回るともう一度鉄の棒を振り回す。


 ブーーーン


 フリントも体をねじって横に移動して、棒の先端をよける。

 首を回して、リンプーの方に口を向ける。

 また炎のブレスの攻撃かと思ったが、リンプーはよけようともせず突っ込んでいく。

「その小さな体から、そんなに何度も炎のブレスを吐けるわけ無いニャ」


 ブーーーン


 フリントは、ギリギリのところでリンプーの攻撃を避けると空に舞い上がって飛び去り、見えなくなった。


「よしっ。追い払ったニャン。

 一発かましたし、すっきりしたニャー。

 炎も吐きつくしたはずだし、頭に打撃を食らったダメージもかなりあるはず。

 しばらくは、襲ってこれないニャ」


 これで、敵の見張りは二人。こちらもリンプーとスージーで二人。

 戦いは、2対2で成立する。

 俺は、一安心して胸をなでおろした。



 -*-*-*-*-*-



 ズドーン


 スージーの砲撃で、二人を吹っ飛ばした。

 と言っても本当に吹っ飛ばしただけで、起き上がってきた二人をリンプーとスージーがロープで縛り上げた。


「あとの一人は、どこに行った?」


「さあな」

 俺の質問に、縛られた敵は真面目に答える気はなさそうだ。


「まず、テントの中を確かめるニャ。

 病人が増えていれば、聞く必要もないニャ」

 リンプーに言われて、確かにそうだと思いテントの中をのぞく。


「あれ、3人しか寝てないぞ。

 もともと5人倒れていたはずだから、行方の分からないのは3人か」


 寝ている海賊の一人は、ネズミ獣人だ。

 アンヘルのようだ。

「アンヘル。話はできるか?

 どうして人数が減っているんだ?」


「けっ。くたばっちまっただけだよ。

 その辺に埋められているよ。

 俺も、もうじき埋められちまうのを待ってるだけだな。ハハ」

 アンヘルは、息苦しそうに無理して笑う。


 それを聞いた俺は、リンプーに言ってみる。

「見張りが一人減ったのも、病に倒れたからかな?」


「そうかも知れないニャ。

 ただ、その辺に潜んでいる可能性もあるんニャから、油断は禁物ニャ」


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