表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
49/65

40.感染症の影響

 お昼の間に、海賊たちは相当揉めたようだ。

 どうやら、上陸してから2,3人病気になったようで、そこから伝染うつったものを含めて、5人が寝たきりらしい。


 動ける7人ほどで意見が分かれて、喧嘩になったらしい。

 その喧嘩で二人いなくなって、残りは10人だそうだ。

 結局、俺たちの知っている奴で残っているのは、ゼロとディエゴの二人だけみたいだ。


 仲間割れした俺たちの知らない3人は、ゼロからリーダーの座を奪い取って、ゼロとディエゴの二人を追い出したようだ。

 追い出された二人は、こちらに向かって歩いてきているということだ。




「ちょっと、この状況じゃあ船には帰れないニャ」

 リンプーが、身構えて戦いの準備を始める。


 こちらは、スージーが一人で奴ら数人分の戦力だ。

 リンプーも今までの戦いを見る限り、そこそこの戦力だ。

 セリカちゃんには逃げてもらうにしても、俺もいる。

 俺の方はハッキリ言って戦力外かも知れないが、片足の無いゼロとなら互角に戦えるかもしれない。


 ゼロは、片足が無い。戦いは苦手そうだから、敵は実質ディエゴだけだろう。

 スージーもリンプーも、ディエゴと1対1なら十分勝つだけの実力者だ。

 ゼロの肩に乗っているフリントっていうドラゴンパピーが、戦力としては読めない所だが。

 油断さえしなければ、負けることは無いだろう。




 しばらくすると、ゼロの叫び声が聞こえ始める。

「おーい。降参だー。

 俺様たちは、降参するー。

 おーい。降参だー。

 俺様たちは、降参するー」


 何度も叫びながら、二人とも両手を上げて歩いてくる。


 木の下を通り過ぎた所で、ピタッと止まる。

 木からリンプーが飛び降りてきて、二人の背後に立ったからだ。

「そのまま、両手を後ろに回して、背中の後ろで手首を交差させるニャ」


 二人は、言われたとおりにする。

「トモヤー! 二人の両手をロープで縛り付けるニャン」


 俺は、用意していたロープで二人を後ろ手に縛り上げた。

 二人とも大人しく、抵抗の素振りは見せない。


 フリントは、二人が捕まったのを見届けると飛び去って行った。


「へっ、あのドラゴンパピーのやつ。俺様と一心同体じゃねえってか。

 飯を食わせてやった恩も忘れやがって」

 ゼロが吐き捨てるように言う。




 スージーが敵の様子を窺ったところ、3人ともテントの前で座って何か話し合っているそうだ。

 寝込んでいる5人も、そんなにすぐには起き上がって来れないだろう。


「敵は3人に減りました。

 3人だけなら、私が攻め込めば倒すことは十分可能です」

 スージーが、海賊たちを倒そうと提案しているつもりなんだろう。


「倒すっていうのは、無力化するってことだよな?」

 念のために聞く。


「そうですね。無力化して、命を奪うってことです」

 抑揚も無く、スージーが答える。


「この二人のように縛ってしまえば、命を奪わなくても良いんじゃないか?」


「トモヤ。人数が減ったとはいえ、相手はモノホンのならず者だニャン。

 ついさっき殺し合いして、勝った奴らニャ。

 そんな奴ら相手に、殺しちゃダメとか命令したら、スージーが危ないニャン」

 リンプーが、俺の考えを読んだように言ってくる。


「でも、リンプーもいるから……」

 リンプーが、言いかけた俺の言葉にかぶせてくる。

「敵を殺さずに捕まえるのは、圧倒的に戦力差が無いと無理だニャ。

 しかも、奴らは以前1対1でも、スージーを海に叩き落としているニャ。

 最低でも3対3で戦わないと無理ニャけど、トモヤは警戒している敵を、一人殺さずに捕まえられるかニャ?」


 言われてみれば、俺には絶対に無理だ。

 殺せと言われても無理だが、相手が殺しに来ているのに、いなして捕まえるなんてもっと無理だ。



 俺が考え込んでいると、ゼロが語り始める。

「へへへ。スージーは、一度海に沈められたのか。

 アルセのやつ。やっぱり、やっていやがったんだ。

 あいつは、不意打ちが上手かったからな。

 俺様たちのロープを解いて、解放してくれよ。

 俺様とディエゴの二人が、アンタらの側で協力してやっても良いぜ。

 そうすれば、6対3で倍の戦力だ」


「そ、そうか、その手があったか」

 俺が答えかけると、リンプーが思いっきり否定してきた。

「トモヤ、ダメだニャ。

 こいつら、その場その場で一番有利な方に付く奴らニャー。

 ちょっとしたことで、また敵に寝返るニャ。

 絶対にロープを解いては、だめだニャン」


 言われてみれば、その通りだ。

 俺の考えは、浅かった。

「わかったよ、リンプー。

 殺さずに捕まえることは、諦めるよ」


「そうだニャ。分かってくれて、よかったニャン。

 じゃあ、スージー。二人で、闇夜に乗じてやるニャ」


「いや、違う違う。

 こちらから襲うんじゃない。

 いったん、逃げるんだ」


「えっ? 逃げる?

 時間をおいたら、倒れてる奴らも回復するかも知れないニャ。

 それに、3人の動きを見失ったら、アタイ達が危険だニャー」


「だからこそ、逃げるんだよ。

 3人を殺したとしても、残りの寝込んでいる5人はどうするんだ?

 殺しちゃわないとしたら、5人の病人の世話は大変だ。

 しかも、回復したら敵になる可能性が高い」


「寝ている敵なら、簡単に殺せる」

 スージーが、また抑揚も無く怖いことを言う。


 俺には、抵抗しない相手を殺すとかそんなこと無理だし、セリカちゃんがどう思うかも気になる。

「とにかく、奴らは放置して逃げるんだ。

 5人の病人の世話は大変だ。

 奴らが動けないうちに宝物をかっさらって、島を出発してしまおう。

 そのためにも、一旦この二人を連れて船に帰ろう」


「全員で引き返すのかニャ?」


「ああ、そうだ。

 敵の動きは分からなくなるけど、ゼロ達から敵の情報を引き出すことも出来るかも知れない。

 奴らのことが分かれば、打開策も思いつくかもしれない。

 敵は3人だけになったんだから、こちらの方は、いつもそれ以上の人数で行動しておくんだ」

 俺は精一杯の考えをみんなに伝えた。


「そうですね。私も戦いは怖いので、賛成です」

 まず、セリカちゃんが賛成してくれた。


「私は、マスターの命令に従う」

 スージーも賛成のようだ。


「アタイは、奴らから目を離すのは心配ニャけど、トモヤが出した結論ニャらそれでいいニャン」

 3人とも賛成してくれたので、船に引き返すことにした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ