表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
43/65

37.漂流する海賊船

 マストの上の見張り台からオペラグラスで見渡すが、水平線以外何も見えなかった視界に、ポツンと島が見え始めた。


「海賊たちの船が何処にいるのかも重要だニャ。

 偵察は、続けるニャ」

 リンプーに言われるまでもない。

 俺と、セリカちゃん、リンプーの3人で交代々々で見張りを続けた。




 翌日、視界の端に船が映る。

 どうやら、ゼロ達も島に近付いているようだ。

 俺たちは、敵の視界に入らないように、島の反対側に回り込んだ。


 リンプーが作戦の指示を出す。

「リブジーさん、セリカ。

 船を頼むニャ。アタイ達3人は、海賊たちに大ダメージを与えに行ってくるニャン」


 リンプーとスージーと3人で、上陸用の小型艇に乗り込んだ。

「俺たちだけで上陸するのか?」


 俺の質問に、リンプーが答える。

「まずは、島の様子を見るニャ。

 少し様子を見たら、海賊への攻撃手段を考えるニャ」


 海賊船は、島の北側に着岸するだろう。

 そちら側は、砂浜もあるし、小型艇でも上陸しやすい。

 俺たちは、島の南側にいる。

 こちら側は、山があって、海側は崖になっている。

 上陸しにくい地形だ。



 海岸線をウロウロして、上陸しやすい場所を探す。

 平らな岩が突き出た場所があった。

 そこに船をつけて、岩に飛び移る。

 ロープを近くの岩に結んで、ボートを固定する。


 3人で、島にある山に登っていった。

 そんなに高い山じゃ無いので、数時間で頂上に到着した。

 オペラグラスで、砂浜のある側の海の方を見る。

 海賊船が、錨を降ろしたようだ。


 しばらくすると、上陸用の小型船が降ろされた。

「トモヤ、代わるニャ」

 オペラグラスをリンプーに奪われた。


「うーん。一隻に5人ずつ乗っているニャ。

 全部で4隻みたいだニャ」


「4隻に5人ずつってことは、20人が上陸したってことか」

 俺の計算に、リンプーが付け足す。

「海賊船には、6,7人が残っているという事だニャ。

 暗くなったら、海賊船を襲うニャ」


「お、襲うのか?

 俺たちで、何とか出来るのか?」


「6人くらいなら、アタイとスージーだけでも大丈夫ニャから、トモヤはボートで留守番していても良いニャ」


「じゃ、じゃあそうさせてもらおうかな」



 俺たちは、暗くなるまで島の地理を確かめた。

 地図は奪われたが、しっかりと写しを取っていたのだ。




 日が沈んだ。辺りは、急速に暗くなっていく。

 俺たちは、闇に包まれる前に船に乗って、オールを漕いだ。


 島の周りを半周して、海賊船が見える位置まで来た時には、海上は真っ暗闇だ。

 海賊船には、灯りがともっている。

 地上にも、上陸した海賊たちがキャンプをしているのか、灯りが見える。



 海賊船に隣接した所で、リンプーがまた、カギ付きのロープを放り投げた。

 カギを船の縁に引っ掛ける。


「それじゃ、アタイとスージーは、乗り込んでくるニャ。

 この小船を奪われないようにしてニャン」

 リンプーに念押しされる。


「マスター。念のためにこれを渡しておきます。

 もし、必要な時は躊躇なく撃ってください。

 アルセとの戦いを見て分かったと思いますが、ここからは命のやり取りが当たり前になる」


 俺は、スージーから銃を一丁預かった。

「大丈夫だ。

 リンプーと俺は、サメに食われかけたんだ。

 奴らがエサを撒いて呼び寄せたサメにな。

 奴らは人の命を軽く考えているから、ためらわずに戦えるんだ。

 俺も、覚悟は決めた」

 とはいえ、やっぱり戦いは怖いので、お留守番を選んだんだが。



 リンプーとスージーが海賊船に乗り込んだあと、俺は船の上でジッとしていた。

 スージーも銃を撃っていないんだろう。射撃音とか一切しない。

 真っ暗な海の上に一人で待つ。


 静かだ。

 波の音しか聞こえない。


 ドボーン


 突然、男が一人海に飛び込んだ。

 俺たちのボートに這い上がろうとしてくる。

「テメーラ、ブチ殺してやるからな!」

 男は船の縁に手をかけながら、叫ぶ。


 ダーン


 俺は、スージーから預かった銃で男を撃ち抜いた。

 男の姿は波間に消えて、二度と浮いてくることは無かった。

「お、俺も、人を殺してしまった」

 手が震えたが、それ程の動揺は無かった。

 きっと、この世界で何人かの人の死を見てきたせいだろう。



 しばらくすると、リンプーとスージーが戻って来た。

「銃声がしたけど、やっつけたかニャ?」


「ああ、銃が無かったら危なかったと思う」


「アタイ達も何人かの命を奪って来たニャ。

 ここからは、殺るか殺られるかだニャン。

 トモヤが冷静で良かったニャ」

 リンプーが、冷たく言い放った。


 俺は、弾の無い銃をスージーに返す。

 スージーは、弾を込めつつ言う。

「この船の錨をつなぐロープを切ってしまいましょう」


「もとより、そのつもりニャ」

 俺たちは、海賊船の周りをゆっくり進むと、錨につながった2本のロープをナイフで切った。

 船は、少しずつ沖に向かって流れていく。


「これで、海賊たちの帰りの足は無くなったニャ」

 もし海賊船の中に生存者がいたとしても、漂流したら助からない。

 海賊船に残った6,7名は、これで間違いなく命が奪われてしまったわけだ。


「う、うぶうっ」

 俺は、船に酔ったのか気持ち悪くなって吐いてしまった。


「島に上陸した20人の海賊たち。

 殺しはしないまでも、無力化しないとダメだニャ。

 トモヤ、覚悟を決めるニャ」


「ああ。分かっている。

 船に酔っただけだ。

 心が折れたわけじゃ無い」

 そう言いつつも、頭の中がグルグルするような感覚に襲われた。


 真っ暗な海を、また2時間ほどかけて島の反対側に漕いで行った。

 ほんのりと小さな灯りが海上にゆらめく。

 セリカちゃんが、船の上で一つだけランタンを点けていてくれたようだ。


 俺たちは、船に戻ると交替で番をしながら睡眠をとった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ