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34.セリカちゃん奪還作戦

 俺たちは、海賊船に近付きつつ様子を見る。

 オペラグラスで、船の上の様子を見る。

 マストにも誰もいない。

 見張りをサボっているようだ。




 俺は、リンプーとスージーと3人で、上陸用の小型艇に乗り込んで、海賊船に近付いていく。

 あそこには、何十人もの海賊が待ち構えている。

 ほんの少し間違えたら、生きては帰れない。


 ポリポリ


 リンプーがピーナッツを食べている音がする。

「なあ、リンプー。

 まだ、ピーナッツ持ってるか?」


「持ってるけど、これはアタイのニャ」


「そう言わないで、一個くれよ。

 後で返すからさあ」


「絶対に返すニャ。

 もし、返さなかったら許さないニャ。

 地獄の果てまで取立てに行くニャからね」

 俺は、昔見た映画の1シーンを思い出した。




 海賊船に隣接した所で、リンプーがカギ付きのロープを放り投げて、船の縁に引っ掛ける。

 俺たちは、そのロープを伝って海賊船に乗り込んだ。



 甲板には、誰もいない。

 いや、二人ほど寝そべっていた。

 すごく酒臭い。

 真昼間から、飲みつぶれているようだ。

 ひとまず、縛り上げる。


「大量の酒を積み込んだことが、こんな所で役立ったニャン」

 リンプーが、満足そうに笑っている。


「よし、セリカちゃんを探そう。

 セリカちゃんはコックだから、厨房にいると思うんだ。

 あそこに煙突が立っているから、あのあたりが怪しいぞ。

 敵は武器も持っているし、見つからないように気を付けるんだぞ」




 俺が、下の船室に降りる扉を開けると、ラウールが立っていた。

 たまたま、扉を開けて甲板に出ようとしていたらしい。

 ま、まずい。こいつは、めっちゃ腕っぷしが強いんだ。


「へへへへ。

 兄ちゃんよお。なんでこんな所にいるんだ?

 海の藻屑になっちまったんじゃ無かったのか?」


 俺が後ずさりすると、ラウールは階段を登って甲板に出てきた。

 指をバキバキと鳴らしながら、戦闘態勢に入る。


 ブーン、バキッ


 いきなり、パンチを食らう。

 俺は吹っ飛ぶが、リンプーが受け止めてくれる。


「マスター、ご命令を」

 スージーに言われて、とっさに命令する。

「こいつをやっつけてくれ」


「了解いたしました」


 スージーが俺の前に立つが、ラウールは意に介さずフットワークも軽く、ボクサーのように構える。

「へっへ。

 ねえちゃん。つええらしいな。

 ゼロ達が言ってたぜ。

 だが、俺の筋肉は裏切らねえ。お前ら、まとめてのしてやるぜ」


 ラウールが細かいジャブを、スージーの顔面にかましてくる。

 スージーは避けようともせずに、その攻撃を食らう。

 だが、全く動じない。

 スージーがズイッと右腕を前に出すと、ラウールは吹っ飛んでいく。

 3メートルは吹っ飛んだだろうか。

 そのまま、甲板上で2,3度バウンドして、転がっていく。

 ラウールは、顔から血を流してピクリとも動かない。


「レヴィー号で、マスターが一発殴られていましたので、一発お返ししておきました」

 スージーが、抑揚のない声で言う。


「一発は、一発なんだニャ。

 でも、この一発は激しいニャー」


「俺は、ここでも一発もらってるけどな」


「では、もう一発いっておきますか?」

 スージーが、甲板上を歩いてラウールの方に行こうとしている。

「いや、いいよ。

 あんなパンチをもう一発食らったら、ラウールが死んじゃうよ」

 しかし、スージーの腕力はすごい。

 あの人間離れした腕力で殴られたら、そりゃ大けがしてしまうよな。



 船室に降りていくと、4人ほどの海賊たちが酒盛りをしていた。

「なんだあ、お前ら?

 あの船にいた奴らか?」

 海賊たちは、飛びかかって来た。

 俺は、またいきなり殴られた。


 リンプーが1人、スージーが3人やっつけた。

 何だか俺、やられてばっかりだ。



 煙突の位置からいって、その船室の端のドアが厨房につながっているはずだ。

 俺が、そのドアをソーッと開けようとする。

 鍵がかかっている。

「こんな旧式のカギなんか、ちょちょいのチョイだニャー」

 リンプーが針金を鍵穴に入れてかき回すと、数秒でドアは開いた。



 ドアの向こうに誰かが立っている。

 何故か下半身が裸だ。

 長い銀髪、シウバ・ウオーターか?


「おい、誰だ?

 これから、お楽しみの時間なんだ。

 邪魔すんじゃねえ」

 振り返った顔、確かにシウバ・ウオーターだ。


 その向こう側に、セリカちゃんが倒れているのが見える。

「セリカちゃんに、何をしようとしてたんだ。

 許さないぞ。シウバ!」


「お、お前ら、何故ここに?」

 シウバが、動揺している間に、俺は金玉を蹴りあげた。


 ドウッ


「グ、グフウ」

 シウバは、泡を吹いてその場に倒れた。


「セリカちゃん、大丈夫か?」


「あっ、トモヤさん。

 ありがとうございます。

 エーン、怖かったよう」

 セリカちゃんが泣き出した。


 良かった。もう少し来るのが遅かったら、取り返しのつかない事になっていた。



 4人で甲板に戻る。

 かぎ爪のロープが外されている。

 小型艇は、5メートルほど離れた海上を漂っている。


 背後から声がする。

「トモヤ船長。

 やってくれるじゃねえか。

 スージー、俺のことを覚えてねえみたいだな」

 アルセ・ウインド、形の悪いジャガイモのような武骨な見た目の筋肉男だ。

 スキンヘッドの頭が光る。


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