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32.サメに襲われても助かる方法

 俺は、リンプーをお腹の上に載せて、ラッコのような姿勢になった。

「何をしているニャ。

 逃げなくて良いのかニャ?」


「俺のひいじいちゃんは、海軍の戦闘機パイロットだったらしいんだ。

 小さい頃、話を聞いたんだ。

 撃墜された時に、こうやって海に浮かんでいて助かったんだって」


「どういう理屈だニャ?」


「こっちの世界のサメのことはよく知らないけど、サメは口が体の下に付いているから水面ギリギリで浮いていたら大丈夫だったって言ってた」


「その理屈は、おかしいニャ。

 サメは、水面に浮いているクラゲとかも食べるって聞いたけど」


「とにかく、ひいじいちゃんは、それで生き残っているんだから、俺たちにはこれ以外に頼るモノは何もない!」


「何を自信満々に言い切っているニャ。

 でも、良いニャ。

 トモヤの言うとおりにした結果なら、アタイはどんな結果だって受け入れるニャ」


 言ってるうちに、サメの背びれが見える。

 スーッとこっちに向かってくる。

 リンプーは、俺の腹の上で、ずっと目をつぶっている。


 サメの背びれが、いやサメが俺たちに迫ってくる。


 来た。

 喰われる。


 ドンッ


 背中に衝撃を感じる。

 だが、食われていない。

「ほらっ、助かった」


「サメは噛みつく前に、一回頭で突っつくって聞いたことあるニャ。

 次は噛みついてくるニャ」


「えっ? マジ?」


 確かに、サメは去って行かずに、方向転換したのか、またこちらに向かってくる。


 一匹なんだろうか、別のサメなんだろうか。

 また、背中に衝撃だけを残して、通過していく。


 ヒイッ、これはチビル。もうダメだ。

 チキンハートの俺には、これ以上は無理。

 すまない、リンプー。

 偉そうなことを言ったけど、ここまでだ。

 こんな姿勢、キープできない。




 ドドーン、ドンッ、ドンッ


 その時、辺りに連続で爆発音が響く。

 と、同時に、ロープにつながった板切れが、俺たちの近くに投げ込まれた。


「きっと、スージーだニャ」

 リンプーが嬉しそうに言う。


 板切れから、ロープにつかまると、すごいスピードで引っ張られる。

 グングン、船に近付く。


 船の下あたりから、ゆっくり引き上げられる。


「フウーッ、死ぬかと思った」

 甲板に引き上げられて、一息つく。


「あ、アタイも死ぬかと思ったニャー」


 リンプーの体が、光ったと思ったら、ねこみみ少女の姿に戻った。

「あっ、戻ったニャー。良かったー」

 リンプーは、裸だ。

 目の毒なので、上着を脱いで、かけてやる。


 どうやら、爆発音もロープを投げたのも、スージーだったようだ。

 甲板には、スージーがポツンと、ロープを持って立っていた。

 海賊船は、去ったようだ。


 離れていく海賊船が、海の上に見える。


 俺は、スージーに確認する。

「あいつらは、行ってしまったんだな?」


「はい、酒と食料を持って行ってしまいました」

 そうか、酒はいいとして食料を持っていかれたのは痛いな。

 料理を作ってくれるスープラ君、いやセリカちゃんを連れて行かれたのも痛い。



 俺はリンプーのために、船室からバスタオルと着替えを持ってくる。


「流石スージーニャ。

 海難救助の時も、サメには爆発音が一番効くっていう話ニャ」

 リンプーは、バスタオルにくるまって言う。


「いえ、サメをやっつけようと思って、撃ちました。

 何匹かは、倒せました」

 スージーは、爆発音で脅かすのではなく、サメをやっつけようとしたようだ。

 実際、海面の何か所かで、水しぶきが上がっている。


 スージーの攻撃を食らったサメが、他のサメの餌になっているのだろう。


「どうだ、やっぱり俺の真っ直ぐ浮かぶ作戦は、正しかったんだ。

 その証拠に、今俺たちは生きている」


「怪しいニャ。

 もうダメだとかいう、心の声が聞こえた気がしたニャー」


「まあ、俺はそんな超人じゃないからな。

 でも、知恵と工夫で乗り切ったじゃないか」


「今助かったのは、スージーのお陰ニャ。

 サメに襲われて、海面スレスレに浮いていたら大丈夫って、良い子が真似したらどうする気ニャ?」


「良い子は、サメに襲われないから大丈夫だって」


「アハハハ

 それもそーニャ」


「ハハハハ

 でも、スージー。

 マスターの命令が無くても助けてくれたんだな。

 ありがとう」


「助けたわけでは無い。

 この船の残存人員が少なくなると困るから、海上から引き上げただけだ。

 合理的判断だ」


「合理的判断って言うなら、あいつらと一緒に向こうの海賊船に行くのが正解じゃ無いのか?」

 俺は、ニヤッと笑ってしまった。


 スージーは、何か合理的な理由を言おうとして、諦めたみたいだ。

 まあ、結果的にマスターを助けていたんだから、正解なんだがな。




 医務室に行くと、リブジーさんが縛られてベッドの下に転がされていた。

 ロープを解くと、元気に喋り出した。

「やつら、アンヘルを助けるついでに、ワシを縛って行きやがったわい」


「いや、リブジーさんが無事で本当に良かったです」

 俺は、いつの間にか泣き出していた。

 食糧もセリカちゃんも、宝島の地図も奪われてしまったが、まず皆無事でよかった。


 命さえあれば、きっと何とかなる。

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