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22.最強の船

「スージー、大丈夫か?」

 俺は、倒れているスージーに駆け寄る。


「だいじょ、お、ぶ」

 言葉も変だし、動きもギクシャクして普通じゃない。

 全く大丈夫じゃなさそうだ。

 スージーは右手に短銃を持ったが、うまく体が動かないのか、銃を取り落としてしまった。


 ゴーレムは立ち上がれないが、腕で地面をたたくと、上半身だけでズリズリとスージーの方に進み始める。

 ほんの数秒で、スージーのいる場所に辿り着きそうだ。


 スージーは、まともに動けそうにない。

 このまま、ゴーレムの攻撃を受けたら危ない。


「ゴーレムは、間もなく動作を停止します。

 逃げれば、我々の勝ちです」

 スージーは言うが、俺は逃げれても彼女は助からない。




 ゴーレムは、スージーを射程に捉えて、腕を持ち上げる。

 あの腕を振り下ろされたら、お終いだ。


 俺は咄嗟とっさに、スージーが取り落とした銃を拾うと、露出したゴーレムのコアに向けてぶっ放す。


 ドーーン


 派手な爆発音がして、ゴーレムコアが割れた。

 ゴーレムは、その瞬間関節部分が全てつながらなくなったかのように、バラバラに崩れた。


「やるじゃニャいか、トモヤ」

 溝の上から、リンプーが声をかけてくる。

 彼女は、ゴーレムを引きずり落とす前に梯子を使って、上に登っていた。


「お宝の目録にもあったから、ゴーレムコアというのを手に入れたかったんだけど、破壊しちゃったな。

 残念」


「ゴーレムは、体の構成がいくつか外れて、ほとんど動作停止の寸前でした。

 あと少し待てば、ゴーレムコアを無傷で手に入れることが出来ました。

 破壊する必要は無かったと、判断いたします」

 スージーが状況を分析する。


「いや、あと数秒でスージーが攻撃されていたよ。

 スージーがやられたら大変だから、破壊するしかなかったよ」


「私も、同じゴーレムコアで動作していると考えられます。

 私がやられたら、トモヤ殿はゴーレムコアを2個手に入れることが出来ました。

 判断ミスと考えられます」


「スージーは、一緒に頑張っている仲間だ。

 仲間を犠牲にしてまで欲しいものなんて、俺には無いよ」


「じゃあ、アタイと古代の秘宝だったらどっちを取るニャ?」

 いつの間にか、溝に降りて来ていたリンプーが聞いてくる。


 ニヤリ


「ああ、それは古代の秘宝だな」


「酷いニャ!

 トモヤのイケズー!」

 ポカポカポカ


「痛い、痛い。

 冗談だって。

 リンプーが犠牲になる位だったら、宝物なんていらないよ」


「それは、本心から言ってるかニャ?」


「さっきだって、ゴーレムコアよりスージーを選んだだろ。

 俺は、意気地なしだから、お前たちみたいな仲間がいなけりゃ、何もできない奴なんだよ。

 寂しかったら死んじゃう、ウサギみたいなもんだな。

 宝物が手に入ったって、こんな異世界で孤独な大金持ちなんて、どうやったら幸せになれるのか想像もつかないからな」


「ニャハハー

 トモヤのそういう所、とっても良いニャー。

 でも、宝物は手に入れないと、セリカの母が助からないニャ」


「そうだな。セリカちゃんのためには、聖杯だけでも手に入れないとな」


「な、か、ま?

 宝より大切?」

 どうも、スージーには理解できていないようだ。


「スージー。無理に理解しなくても良いよ。

 ただ、お前が思っている以上に、俺たちはお前のことを大切に思っているってだけだ。

 それより、腕が変な方向に曲がっているけど大丈夫か?」


「大丈夫だ。

 すぐには治らないが、ペースト状の有機物を摂取すれば、1日で回復する」


「そうか、まさかその回復力もゴーレムコアの能力なのか?」


「そうだ。ゴーレムコアは、埋め込まれたときの人形の機能と形状を記憶する。

 破損の割合が一定値を超えるまでは、修復にトライするようになっている」


 埋め込まれたときの機能と形状ってことは、やはり誰かが今のスージーの姿の機械人形を作ったってことなんだな。


 俺は、短銃をスージーに返す。

 スージーは、ウエストポーチのような入れ物から火薬と弾を装填して、短銃をホルスターにしまった。

 彼女の銃は、一発ずつしか撃てないようだ。

 だから、何丁も持っているんだな。




 俺たちは船のドックに行く。

「もう一匹ゴーレムがいるとか、無いよな?」


「トモヤ、縁起でも無いこと言うんじゃ無いニャ」


 3人で、船の甲板にまで足を踏み入れたが、何かが出てくることは無かった。


 ただ、船室に入るためのドアが開かず、甲板上をウロウロするだけで、船に入れない。


 よく見るとドアに、丸いくぼみが付いていた。

 リンプーに頼んで、ルビーの指輪の赤い宝石部分をくぼみにはめてもらった。

 ドアは、音もなく開いた。


 指輪を外してもドアが閉まることは無い。

 リンプーは、再び指輪を左手の薬指に戻した。


「これが、最強の船 レヴィー号か」

 俺は、しみじみつぶやいた。


「もう、ゴーレムは守っていニャイから、船を置いて帰ったら盗られるかも知れないニャ。

 さっさと作業をするニャ。

 すのこの板を運び込んで、船底を2重底にするニャ。

 それから、リヤカーも運び込むニャ」




 俺たちは、マニュアルを見て立てていた作戦通りに、船内にモノを運び込んで、所定の位置にセットしていった。


 その後、リンプーが建物の事務所らしき場所にあったレバーを引くと、地下水をくみ上げているのだろうか、水魔法で空気中から生み出しているのだろうか、ドックの低くなっている部分に水が流れ込んできて、船は水の上に浮かぶ形になった。


 この船は、魔法でも進むことが出来る。

 操舵室にある白い魔法石に手を触れてみると、エネルギーが吸い取られるような感覚と共に、船が進み始める。


 建物の廊下側の壁が跳ね上がり、外に通じる壁も開く。

 壁の向こうに、水路が出来ているのが見える。

 さっきゴーレムをやっつけた溝を通って、そのまま海まで水路を通って出て行った。




「これ以上は、ダメだ。

 俺って、魔力もそんなにないんだな。

 これじゃ、一ヵ月も航海できないぞ」

 膝をついてしまいそうなほど、消耗した。


「当たり前だニャー。

 そのために、帆が付いているんじゃニャいか。

 でも、港までは魔法で航行するニャ。

 スージー、トモヤと代わってあげて」


「了解しました。マスター」

 スージーが魔法石に手を置くと、船は再び走り出した。


 魔法での航行は、速度が出ないようだ。

 3人で交代々々で魔力を注入して船を進める。


 タップリ半日かけて、サウスパースに入港した。

 船舶事務所にお金を払って、3日間の停泊許可をもらった。




「これで安心だ。

 一仕事した感が、半端ない。

 明日は予備日だったよな。

 俺は、一日中寝て過ごすぞ」


「最大の難関だった、ゴーレム退治を片付けたんだから、好きにして良いニャ。

 アタイは、お買い物に出かけるけどね」


「私も、傷の回復のために明日は寝る」

 スージーもダメージが大きそうだ。

 元気なのはリンプーだけか。


「ところで、リンプー。

 俺はせっかく魔法使いになったのに、お話が出来るのと船を動かせるだけなのか?」


「最初は仕方ないニャ。

 これから、少しずつ魔法が使えるようになると思うけど、調子に乗らないように気を付けるのニャ。

 今日もカラカラになるまで魔法を使ったから、回復した時には魔力が増えているはずニャン」


 おお、それは楽しみだ。

 調子に乗ってしまいそうだ。

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