表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/65

21.ゴーレムを倒せ

 俺たちは、港の近くでリヤカーのような荷車を買った。

 船への荷物の積み下ろしに使うのだろう。

 店には大小様々なサイズが揃っており、少し大きめの物を買った。


 それを引いて、船のある建物の所に行く。

 多分、馬や牛のような動物に引かせるための物なのだろう。

 人間が引くには、ちょっと扱い難い。




 いよいよ、ゴーレムとの対決だ。


 リンプー大賢者に、疑問点をぶつける。

「一か月くらいの船旅なら、港で船をチャーターして『伝承の妖精が死んだ島』まで行くことは可能って言ってたよな」


「うん、言ったよ」


「俺は、魔法使いになったと言っても、全然戦える気がしない。

 無理してゴーレムを倒すより、チャーター費用を稼ぐ算段をした方が安全で良さそうに思うんだが。

 百円ショップで買ってきた便利グッズを売れば、そこそこの金になるんじゃないかな」


「戦える気がしなくても、戦わなくちゃダメニャ。

 便利グッズは便利に使った方が、今後の生存確率が上がるし」

 確かに、ラッピングフィルムやガムテープなんかはすごく便利だが、この世界の人には価値が分からないかも知れない。


 前にゴーレムに会った時、俺は奴の横殴りのパンチを間近に見ている。

 あんなのを食らったら、人間はひとたまりも無いぞ。

 あんなデカい怪物モンスターに、俺たち3人で勝てるんだろうか?


「しかし、戦ったら犠牲が出るかも知れない。

 俺たち3人が五体満足でいられる保証は無いんだぞ」

 ちょっと不安になった俺は、それを口に出した。


「それを言うなら、どうして宝島にゴーレム同様の防御システムが無いと保証できるのニャ?

 船よりももっと厳重に守っている可能性が、高いんじゃ無いかと思うけど」


 うっ、確かにそうだ。

 俺の、痛い所を突かれたという顔を見て、リンプーが続ける。


「アタイは、このゴーレムを越えられない様なら、『伝承の妖精が死んだ島』で秘宝に辿り着くのは、絶対に無理だと思う。

 それに、わざわざ宝島に行くために用意された船ニャンだから、何か秘密があるかも知れないし」


「そうだな。

 最強の船らしいし、この船じゃないと越えられない何かがあるかも知れないな」


「ニャンと言っても、借り物の船では秘宝を隠し通せないよ。

 船員にバレないように、コッソリ船倉に宝物を運び込んでも、中身がバレたら船員との間で奪い合いが始まるかも知れないニャ」


「そうか、船を入手する日にちに余裕を見ているのは、秘密の船倉を作るためなのか」

 船の底の方を2重底にするとかして、宝物を隠せるようにしないとな。


「その通り!

 分かってるね、きみー」

 リンプーは、人差し指をビシイッと伸ばして、中空を指さす。



 〇●〇●



 しかし、スージーの馬鹿力には驚くほかない。

 建物の入り口は、厚い鉄の扉がふさがっている。


 そのままでは、リヤカーを運び込めなかったが、スージーが扉を無理やり開けた。

 というより、取り除いたという方が正しいような開け方だった。


 俺たちは、スージーが見つかった小部屋に落ちていた、古い石のブロックをリヤカーに乗せて運び、廊下の溝の手前で降ろす作業を繰り返した。

 俺やリンプーは石のかけらを運ぶことしかできないのに、スージーは丸ごとのブロックでも軽々とリヤカーに積み、廊下の溝の手前でリヤカーから降ろす。


 リヤカーを引くのも、スージーにお任せした。


 この力があれば、あの強力なゴーレムにも勝てそうな気が、少しだけしてきた。


 その日は、石を運ぶだけで終わった。

 リヤカーは、小さな部屋に運び込んで、ヘトヘトになりながら宿まで歩いて帰った。


「おんぶして、あげようか?」

 しんどそうな俺を見かねたリンプーが提案してくるが、いくら何でもそれはカッコ悪すぎる。

 しかも、3人の中で俺の働きが一番悪かった気もする。


「体は子供になっているけど、子供じゃ無いから」

 周りで殺人事件は起きないし、推理とかできないし。


「無理しなくてもいいニャよー」

 余りの疲れから、ちょっと心が動いたが、後が怖そうだ。

 俺は必死で歩いた。




 宿に帰ったら、体中が筋肉痛で痛い。

 3階に上る階段も苦痛だった。

 部屋に戻ったら、リンプーがマッサージしてくれたが、あまりの気持ちよさに、ハッと気づいたら朝だった。




「気持ちいいのは分かるけど、そのまま寝てしまうニャンて失礼な奴ニャ」

 リンプーが責めてくる。


「す、すまない。

 き、昨日はありがとう、リンプー。

 おかげで、今日は筋肉痛が治っているみたいだ」


「まあ、トモヤのためにマッサージしてやったんだから、治ったのなら良かったニャン。

 特に今日は決戦の日でもあるし、体調は重要ニャー。

 でも、晩御飯も食べてないし、セリカも心配してたニャ」


 俺は、朝ご飯のために一階の食堂に降りて行き、セリカちゃんにも心配かけてすまなかったと謝った。




 さて、いよいよゴーレムとの決戦の時だ。

 意気込んだ3人で、あのレンガ造りの建物に入っていく。


 俺とスージーは、溝には降りずにこちら側で待機する。

 素早く動けるリンプーが一人だけ、廊下の溝の向こう側に行った。


 リンプーが、ドックのある扉を開く。




 しばらくすると、部屋からリンプーがタッタッタと軽快に走って飛び出してきた。


 後を、あのゴーレムがズシンズシンと追いかけてくる。

「ヤーイ、捕まえれるもんなら、捕まえてみろー。

 ベロベロバー」

 大丈夫とは思うんだが、何だか危なっかしいなー。


 可愛い子は、アッカンベーも可愛いけどな。


 リンプーは、溝の手前で立ち止まり、ゴーレムをしっかり引き付ける。

 ゴーレムの大振りの右フックをよける。

 さらにもう一発、左からの体をねじっての横殴りのパンチをよけながら、溝に飛び降りる。


 以前と同じように、ゴーレムは溝の縁から、下を覗き見る。


 だが、前回と違って、そこにはロープで作った輪っかが地面にあった。

 俺は、上手くロープを操作する。

 輪っかを浮かして、ゴーレムの脚に引っ掛けて引っ張る。


 当然、子供の力では輪っかがキュッと締まったものの、それだけだ。

 だけど今、俺の隣にいるのは超絶クソ力のスージーだ。


 スージーがロープを引っ張ると、あの大きなゴーレムが足を引かれて、ひっくり返る。

 一体、どれほどのパワーなんだ?

 そして、そのままゴーレムは3メートル以上ありそうな溝を落下していく。


 ズズズーン


 多分何トンもあるような石の塊のストーンゴーレムが、石造りの床に衝突した。

 5体を構成するパーツが、いくつか衝撃でちぎれ飛ぶ。


 昨日リヤカーで運んでおいた石のブロックを、溝の上から二人で投げつける。


 俺の投げる石は、あまり効いて無さそうだ。

 だが、スージーの投げる石のブロックは、多分重さ100キロどころじゃ無いだろう。

 スピードも出ていて、高さの差もあってすごい威力だ。

 人間が食らったら、タダでは済まない。


 スージーが投げたブロックの一つが、ゴーレムの頭に命中して、破壊した。

 起き上がろうともがいていたゴーレムは、その瞬間動きを止めた。


「やったー。あんなすごい怪物モンスターを倒したぞ」

 俺は、喜んで梯子を降りていく。


 梯子の横を、スージーが飛び降りていくのが見える。

 ゴーレムの首の下辺りに埋め込んである、ゴーレムコアを取り出せば、ゴーレムはもう動くことは無い。


 スージーがゴーレムの胸に手を埋め込もうとした瞬間だった。


 ブーン、ゴツッ


 ゴーレムが振るった腕がスージーに当たって、スージーが吹っ飛ぶ。

 スージーは、壁に衝突して動きを止める。

 腕がおかしな方向に曲がっているのが見える。


 ゴーレムが、ゆっくりと起き上がろうとする。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ