20.航海の準備
宝探しをするうえで、まず第一に船を確保しないといけない。
船が無ければ、宝島に到達することが出来ない。
あのゴーレムをどうするかが、問題だ。
みんなで作戦を考えて、3日以内に倒す計画を立てた。
まず、セリカちゃんに、後4泊する旨を伝えて、銀貨12枚を払った。
リンプーによると、第二に大切なのは、船医の確保だそうだ。
ここから『伝承の妖精が死んだ島』までは、片道約1カ月(30日)の航海みたいだ。
その間に、船員がケガをしたり病気になったりしたら、船は動かせなくなる。
船員は、港町で募集すれば集まるが、船医は簡単には見つけられない。
だから、元医者のリブジーさんを確保しないといけないのだ。
さらに、セリカちゃんのお父さんの話だと、リブジーさんは謙虚で誠実な人柄だそうだし。
まず、朝食の場でリブジーさんを探して、近くに座る。
「リブジーさん。いつ出発のご予定ですか?」
「うん。祭りが終わったから、明日にでも発つつもりだったんじゃがな。
宿の奥さんの具合を見てしまったので、最低でも後2,3日は様子を見ないとな。
その間の宿賃は、負けてもらっているしな」
「その後は、北にお帰りになるんですか?」
「まあ、そのつもりなんじゃが」
「南の島に航海に出る気はありませんか?」
「なんじゃ? 唐突に」
「実は、この前に聞いた聖杯が、手に入るかも知れないんです」
「そ、それが本当なら、ワシも一度見てみたいものじゃ。
それがあれば、ワシの妻も助かったかも知れん訳じゃからの。
詳しく聞かせてもらっても良いかな?」
「はい。では食後、俺たちの部屋に来てもらえますか?」
「うむ。うかがわせてもらおう」
食後、部屋に帰って3人で待っていると、ノックの音がする。
ドアを開けると、リブジーさんだけでなく、セリカちゃんもいる。
「トモヤさん、すみません。
私も、食堂でお二人が話すのが聞こえてしまいました。
聖杯が手に入るかも知れないと思うと、居ても立っても居られなくて」
当たり前だけど、すごく真剣だ。
とにかく、二人とも部屋に入ってもらう。
あの砂浜の奥に船が隠してある建物があること。
そこから取って来た箱の中に、宝の地図が入っていたことを話した。
宝については、具体的なことは隠しておいた。
沢山の財宝と、古代の秘宝のゴブレットがあることだけ話した。
あまり詳細に説明して、別口で宝探しに行かれても困る。
リンプーによると、一か月くらいの船旅なら、港で船をチャーターして『伝承の妖精が死んだ島』まで行くことは可能らしい。
ただ、秘宝の間の扉の鍵は、俺達が持っている。
詳細まで全て話して、このカギを奪われたら、秘宝を持っていかれるかも知れない。
持っていかれなくても、別口で動かれたら、船医さんは簡単には見つからないそうだ。
船医さん無しで一か月の航海に行くのは、命知らずの海賊船だけだそうだ。
そういう訳で、情報は必要な所だけ開示した。
もちろん、隠している感じを出さないためにも、地図と海図は見せた。
リブジーさんは、二つ返事で受けてくれた。
奥さんを魔力障害で失ってから、ずっと心がふさぎ込んでいたそうだ。
生きる気力を失って、後は流されて余生を送っているだけだったと言う。
今年で、大漁祭りの花火も見納めと思って来ていたらしい。
「宝探しに同行するなんて、久々にワクワクするわい。
ただ、ワシは良い年じゃからのう。
航海の途中で、寿命で亡くなったら、その時はすまん。
許してくれ」
だそうだ。
疑って、情報を全部出していないことに少し罪悪感を感じたが、そんな何十億もの金と聞いたら、人間が変わることもあるだろう。
良い人みたいだけど、信じすぎないようにした。
地球でも、ブラック企業の採用担当は、すごく良い人っぽかった。
でもその人は、その会社で働き始めたら、人が変わったように酷い人だった。
そんな経験のせいで、俺は人を完全には信用しきれない。
問題は、セリカちゃんだ。
船のコックさんでも、甲板掃除でも何でもするから連れて行って欲しいと言う。
可愛い顔で一生懸命に、
「連れて行ってもらえるなら、何でもします」
って言われるので、
「良いよーん」
って、言ってしまいそうだ。
リンプーが、そうは言わせないという凄いオーラを放っている。
「とにかく、セリカちゃん。
宿屋はどうするの?
お母さんの世話もあるし、お父さん一人では、宿屋は回らないよね」
聞いてみると、セリカちゃんは、きっぱりと言い切る。
「宿屋は、しばらく休業してもらいます。
この町には、宿屋は沢山ありますし。
大漁祭りが終わったので、これからの半年間はお客さんは、ほとんど来ません」
だから、今お金が必要だったんだな。
「でも、普通はセリカちゃんがお母さんの面倒を見て、危険な航海にはお父さんが行くと思うんだけど」
「父が航海に行った場合、病気の母と女の子だけの家に、半年分の蓄えがあるんですよ。
航海に行くのより、危険だと思います。
もし、父が帰って来なかったら、もう2度と宿屋は開けないし、破滅することになります。
でも私なら、航海の途中で死んでしまっても、父はやり直せます」
えらく割り切っているな。
「セリカちゃんの思いは分かったけど。
そんな話、お父さんが『うん』と言うはずないと思うよ」
「言わせます」
やけに力強く返事が返ってきた。
「セリカの決意は、分かったニャ。
でも、海の上は男ばかりの世界だニャ。
女の子が一人混じって無事に生きていけるような、甘い世界じゃ無いニャン」
リンプーが、話に割って入ってくる。
「いや、リンプーさん。
あんたも、女の子のように見えるんですが。それは?」
「女の子のようとは、失礼ニャ。
アタイは、航海中は姿を消すニャ。
スージーは、見かけは別として女じゃないから大丈夫ニャ」
スージーが太もものホルスターから、2丁拳銃を取り出して構える。
「私は、戦闘用の機械人形だ。
そのような危険は、生じない」
スージーは分かるとして、リンプーが消える?
どういうことだ?
「分かりました。女の子じゃ無ければ良いんですね」
セリカちゃんの目から決心のようなものが、ほとばしる。
「全ては、お父さんの許可が下りてからだから。
それから話をしよう」
俺は、セリカちゃんに答えた。
というわけで、リブジーさんは船医をしてくれることになった。
セリカちゃんは、お父さんの許可が下りたら、コックさんとして雇うかどうかを協議するということで結論づけた。
俺たちは、宿屋を出ると船員ギルドに行って、船員募集をお願いした。
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帆船の船員を募集。6名。
13才の船長の命令に従えること。面接あり。
『伝承の妖精が死んだ島』まで、片道約1カ月の航海を往復。
前金、銀貨10枚。
船と共に無事にサウスパース港に帰って来た者には、金貨1枚。
報酬については、応相談。
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リンプーに言われたとおりの募集要項にした。
コックは、出発直前でも何とかなるということなので、セリカちゃんの採用協議が終わってから募集することにした。




