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19.古代の秘宝

 宝箱の中から出てきた冊子の前半は、船のマニュアルだった。

 後半は、誰かの日記だ。


 リンプーに誰の日記か聞かれて、俺は名前を探した。


 冊子の裏表紙に、ミディアム卿と書いてある。

「このミディアム卿っていう人の日記かな?」


「ミディアム卿って言ったら、この世界での伝説の海賊キャプテン・ミッドじゃニャいか?

 日記が日本語で書いてあるということは、キャプテン・ミッドは地球人、いや日本人だったということかニャ」


「私のスージーという名前は、ミディアム卿にもらった」

 突然何の脈絡もなく、スージーが驚くようなことを言い出す。


「ちょっと待つニャ。

 ミディアム卿は、何百年も前の伝説の海賊ニャ。

 あの遺跡は、出来てから数十年レベルだったはず。

 時代が合わないニャン」


「この日記を書いた人と、私の知っているミディアム卿が同一人物なのかは分かりませんが、あのゴーレムには、私と同じ魔法の動力回路を感じました」

 スージーが、珍しく力説する。


「でも、同じような魔力だから、この箱も開いたんだろう。

 そう考えると、ミディアム卿の日記なのかも知れないな。

 子孫なのかも知れないし。

 スージー、それでミディアム卿は、どんな人だったんだ?」


「どんな人と言われても。

 私が動作を始めた時に、横にいた人です。

 私の名前を、スージー・ミドウと名付けて、ずっとそばに置いていました。

 あっ、フリントという名前の龍の幼体、ドラゴンパピーを連れていました」


「スージーのことは分からないけど、確かにキャプテン・ミッドは、ドラゴンパピーを連れていたという伝説があるニャ」


「きっと、キャプテン・ミッドは、日本人なだけでなく大阪人だな」

 俺は、確信をもって断言した。


「なんで、そんなことが言えるのニャ?」


「だって、スージー・ミドウだろ。

 日本人なら、苗字が先で名前が後だ。

 そうすると、ミドウスージー、御堂筋みどうすじだ。

 大阪の地名になる」


「下らないニャ。

 それで、日記には何が描いてあるニャ?」


 うおっ? 俺の鋭い分析を、下らないの一言で却下かよ。



 気を取り直して、読んでいく。

「うんうん、えーと、これはすごいぞ!」

 読み進めていくと、この日記はすごい内容だ。


「凄いのは分かったから、中身を話すニャン」


「聞いて驚くなよ。

 日記の一日目は、古代の秘宝を秘密の場所に隠した話だ。

 そして、ずっと航海日誌が続いて、商船を襲ったら護衛の軍艦に囲まれて、海賊船が撃沈されてしまったって。

 俺たちと同じ、あの砂浜に流れ着いて、もう一度古代の秘宝を取りに戻るために船を建造する所で終わっている」

 軍艦に囲まれて撃沈されるって、この世界は絶対中世じゃ無いな。

 地球で言う、大航海時代の辺りじゃ無いのか?




「古代の秘宝って、具体的には何ニャ?」


「ここに目録がある。

 なになに、まず金貨1万枚。

 日本円にして、10億円か?

 いや、この辺で使ったら、100億円?

 超大金持ちだな」


「この辺でそんな大金を使ったら、一瞬にしてインフレになって、お金の値打ちが無くなるニャン。

 それに昔の金貨だから、一度帝国金貨に両替しないと使えないニャ。

 それで、目録があるってことは、他にもあるニャ?」


「ゴーレムのコアが、5個。

 火龍のウロコが、10枚。

 うーん、何か分からんが、高そうなモノが並んでいるな。

 目に付くところでは、何々の剣とか、鎧とか、武器や防具が多いな。

 後は、宝石とか、貴金属か?

 おっと。これは、聖杯、ゴブレット?

 セリカちゃんのお母さんの病気が治る神器じゃないか?」


「それで、その秘宝が隠してある、秘密の場所って何処にゃ?」

 リンプーがマジ顔になっている。

 当たり前か。


「伝承の妖精が死んだ島と書いてある。

 そんな名前の島が、あるのかな?

 分からなくても、この航海日誌を逆にたどれば、辿たどり着くんだろうか?」


「ちょっと、アタイにも見せてみるニャ」

 言うが早いが、冊子はリンプーに奪い取られた。


 俺は、冊子の下に入っていたモノを確かめる。


 まずは、宝物が隠してある秘宝のの扉の鍵になる、ルビーのような赤い宝石の付いた指輪。

 それから、島の港から秘宝の間までの地図。

 島の位置を示す海図。


 至れり尽くせりだな。

 しかも、島に至る航海が出来るような船も用意されている。

 これだと、この箱を開けた人間は、間違いなく秘宝の間まで行けることになる。

 まるで、『秘宝の間までご招待ツアー』のようだ。


 ゴーレムの守りに、絶対の自信を持っているんだろうか?




「ウニャー。

 漢字が多くて、頭が痛くなって来るニャー」


 リンプーが、冊子を俺に放ってよこす。


「おいおい、古代の秘宝のことが記してある大切な書物を、雑に扱うなよ」


「大丈夫ニャ。

 横目で見えていたニャ。

 地図と海図があるから、それで秘宝まで行けるニャン」


「あと、この指輪だけど、秘宝のの入り口のカギになっているそうだ。

 リンプー。お前が着けておいてくれ。

 男がこんな派手な指輪って、変だからな」


「やったニャー。

 トモヤが指輪をくれたニャー」

 リンプーが、いきなり指輪を左手の薬指にはめた。

 おいおい、こいつ意味分かってやってんのか?

 まあ、いいけど。




「さて、古代の秘宝の在り処が分かって、そのための船もあります。

 宝探しをしますか?」

 一応聞いてみる。


「何馬鹿なことを言ってるニャ。

 するに決まってるニャ」


 ここは、ゲーム風に『はい』か『いいえ』で答えて欲しかったんだけどな。


「スージーは?」


「私は、マスターに従います。

 でも、古代の秘宝の所に行けば、私の生まれた理由や意味が分かるかも知れません。

 ご一緒させてください」


 オートマタも自分の生まれた意味とか知りたいものなのか。

 まあ、そういう訳で、俺たちは宝探しをすることになった。


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