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ツクモ式  作者: MRS
5/27

外伝 一

 ───日も沈み、夜の帳が下りた頃。




 周りを鬱蒼とした木々に囲まれた、お寺らしき場所。

 其処では酷く慌てた様子の僧侶が一人、境内を早足でぐるりぐる

 りと回り歩いて居た。


「どうするか……。どうすべきか……。」


 等と呟いては歩き回る頭を丸めた僧侶。年の頃は六十を越えてい

 るのだろうか、それなりに深い皺の刻まれた顔には冷や汗が一つ

 二つと滲み出て来ていた。

 僧侶は歩き疲れたのか。少し息を切らせながら立ち止まり、何事

 かを悩み耽っている。すると、悩み耽る僧侶よりも幾分か若い坊

 主が本堂から小走りで駆け寄り。


「和尚。凡僧達が何とかしようとしていますが、やはり庫裏から出

 すのは……。」


 駆け寄って来た坊主は和尚と呼んだ僧侶にとって、余り好ましく

 ない報告を持って来た様子だ。言葉を聞いた和尚は口をへの字に

 歪め。


「駄目か?」

「はい。凡僧の多くは思う所もあり力が出てない様でしたが、それ

 抜きでもやはり難しいかと。」

「お主は?」

「私はそもそも手加減が苦手ですし、其処まで追い詰めたら向こう

 も本気で来るでしょうね。今はまだ拗ねた程度の可愛いものです。

 ですがアレ、本気で来られたらそれこそ本物の一大事ですよ? や

 はり此処は和尚自身に出てもらう他には……。」

「ならん! それはならんぞ!」


 和尚は頭を抱える様にしてしゃがみ込む。その和尚の頭上。

 坊主が呆れと諦めが混ざりあった様な溜息を一つ吐き。


「全く。このままでは我々皆が困ります。

 それに先程もお伝えしましたが、明日はお話を聞きに来る客人

 も───」

「それだ! 客人は何時来ると言ったか!?」

「ええと。明日の午後頃かと……。まさか和尚。」


 坊主が和尚へ疑いの込もった視線を向ける。

 視線を受けた和尚はゆっくりと立ち上がり、坊主の視線に背を

 向け。


「邪推は止さんか。これも御仏の導きかも知れんのだぞ?

 うむ。そうと決まれば客人の為にも準備をせねばならんな!」


 言いたい事だけを言って和尚はそのまま本堂へと駆け込む。

 最後まで一度も坊主と視線を合わせず。境内に一人残された

 坊主。




 彼は和尚の姿が見えなくなるまで“ジッ”と睨み続ける───

最後までお読みいただきありがとうございます。この物語が少しでも楽しめる物であったのなら

幸いです。

物語を最後までお読みいただいた貴方様に心からの感謝とお礼を此処に。誠にありがとうございます。

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