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ツクモ式  作者: MRS
4/27

第三話

 ───教室へと戻って来た生徒一同。




 体育館でツクモ式の儀式を終えたオレ達は、教室へ戻って来た。

 オレは元の席に座り、教室を見渡す。


「───!」

『!!!』

『?───??』

「───!?」


 体育館へ移動する前は生徒だけだった教室も。ツクモ式を終え

 て戻って来た今は生徒と同じ数のツクモが一緒で、教室はかな

 り賑やかだ。

 うん、嫌いじゃない賑やかさだな。他に見渡した限りで分かる

 のは、ツクモで一番大きいのがあのデカイ奴が連れてる怪獣型

 ツクモ。

 で、一番小さいのは白波の眼鏡型ツクモだろう。他の生徒の大

 体は小型から中型犬程度の大きさって所か。皆自分のツクモと

 一緒に席に座り、ツクモを可愛がっている。

 オレも膝の上にオウカを乗せて背を撫でる。うははは。

 心地いいなこれ、何だこれ良いのかなこれ。


「はい。全員教室に戻って来ましたねー?」


 そう言う凩先生が前の列から順番に指を振って数を確認してい

 る。やがて最後の列まで指差しし終え。


「うん、全員居ますね。それではこれからの説明をしますよ。

 と言っても、今日はもう授業はありませんけどね。」


 マジかやった! 今日はもう授業が無いらしい。先生の言葉

 に、オレと同じ喜びをクラス全体から感じる。そりゃ皆自分の

 ツクモと遊んだり遊んだり、やっぱり遊んだりしたいもんな!

 一呼吸ほどの間を置いて凩先生の言葉が続く。


「……今日皆さんは自分のツクモを手にしました。ですが、皆

 さんはまだツクモについてちゃんと授業を受けた事がありませ

 んね? 明日からの学校生活。そして今日から皆さんの私生活

 の中で、ツクモについての理解を深めて行かなければいけませ

 ん。

 手にしたツクモとどう付き合って行くべきなのか、それをこれ

 からは考え続けて行く事に成ります。」


 凩先生は一旦クラス全体を見渡し。そしてニッコリと笑っ

 ては。


「ですが、今日の所は自分のツクモと目一杯触れ合って。

 ツクモと絆を深めてください。では───とと、その前に。

 親御さんからスマホを貰ってる子は机の上に出してね。」


 オレは先生の言う通りに自分のスマホを机の上に出す。

 周りの皆も机の上にスマホを置いていき。クラスの皆が机の上に

 スマホを置き終わると、凩先生は教卓の下からタブレットを取り

 出し何か操作をしている。暫くして“ピコンッ!”と、自分のス

 マホから音が聞こえ。それは他の生徒のスマホからも同様の音が

 聞こえて来る。

 画面を見ると『ツクモ管理システムVer.1.0』と書かれたソフト

 が新しくインストールされていた。


「今皆さんのスマホにインストールされたソフトはこの札型の。そ

 の機能をスマホにも付与する物です。かなりの簡易版ですけど

 ね。」


 言いながら先生はポケットからスマホにも似た何かを取り出して

 は、オレ達生徒に見せる。

 札型。確かツクモのサポートに特化した最新ポータブル機器だ。

 オレも欲しいなぁ!


「札型をまだ持っていない皆さんは、そのソフトがツクモの管理と

 サポートをしてくれます。また皆さんはまだツクモの使用に関し

 ては制限が掛かっていますので、そのソフトの管理が必須です。

 スマホを持っていない子は後で先生の所へ来てください。学校

 が貸出用の札型を渡しますので。」

「「「はーい。」」」


 凩先生は“うんうん”と頷いて。


「教科書の購入や時間割表は入学式の時に済んでると思います

 が、それがまだ人も後で先生の所へ来てね。それ以外の皆さんは

 寄り道などはせず真っ直ぐお家に帰って、自分のツクモと触れ

 合ってください。では皆さん。さようなら。」

「「「さようなら先生ー!」」」


 先生とお別れの挨拶をして、皆が一斉に鞄を持ってはツクモと一

 緒に帰り支度を始めた。勿論オレも帰り支度をって言っても。

 まだ学校で何もしてないので、机横の鞄を肩に掛け、膝上のオウ

 カを腕に抱いては下駄箱に向かうだけだ。

 途中ちょっとトイレに寄ったけど。オウカをトイレの入り口で待

 たせるのにかなり苦労した。何でか知らないがオウカはトイレの

 中にまでついて来たがり、オレは尿意と必死に戦いながらも入り

 口で待っててくれと説得。最終的に『オレの鞄を守ってくれ。』

 と言って鞄の番をさせる事で、何とか成った。

 出来ればもうトイレの前での説得はしたくない。そうしてトイ

 レを終えて下駄箱に着くと。

 下駄箱の周りは生徒とツクモで一杯一杯。誰もが自分のツクモ

 と一緒で嬉しそうで、何だかそれがオレにはニヤけてしまう様な

 光景と言うか、顔が変に“もにょっ”てしまう。

 此処で何時までも突っ立って顔をもにょらせてたら怪しさ満点

 だ。

 オレはさっさと自分の下駄箱で上履きを閉まって靴に履き替

 え。外を目指して歩き出して直ぐ、知り合いの姿を見付けた。

 下駄箱から靴を取り出す動作で止まったまま『ほうほう。』

 とか『へぇー。』何て呟きながら、自分のスマホを見てる白波

 に。


「何やってんだ?」

「んえ!? あああれ? 御柱くん?」


 白波は驚いた拍子に下駄箱の天井に手を打つけ、手にしてい

 た靴を落とした。手を少し擦って落ちた靴を拾う白波。何だか

 悪い事をしてしまったようだ。


「悪い、急に話し掛けて……。」

「ううん。気にしないで。

 ぼくがちょっと驚き過ぎただけだから。」


 だとしてもちょっと気不味い。それは白波も同じみたいで。


「えと……。まだ校舎に居たんだね。

 確か御柱くんはぼくより先に教室を出てたよね?」

「ああ。でもちょっとトイレで攻防戦をしてたら遅くなったん

 だよ。」

「?」

「トイレ攻防戦の話はまた今度な。それより白波はさっき何で

 固まってたんだ? 面白いアプリでも見付けたか?」


 もしそうなら教えて欲しい。ああでも、オレ育成ゲームが好

 きだからなぁ。対戦ゲーが今流行りみだたいだしそっちなら

 別に良いかな。少しワクワクしながら白波の言葉を待ってい

 ると白波が口を開き。


「あ、ああっとね。さっき先生が入れてくれたこのアプリがあ

 るでしょ? それのツクモの使用制限や、アプリ自体の使い方

 何かを読んでたんだ。

 ぼくこう言う説明書とか仕様書を読むのが好きだか

 ら……。」

「確かに好きそうだな。」


 白波は何故か、話す言葉が最後の方になるに連れて声量が小

 さく尻すぼみに成っていった。何故だろう?

 いやそれよりもアプリの説明書か。オレも帰ったらチェックし

 た方が良いかな、良いよな。でもなぁ。


「オレとは正反対だな。オレはこう言う説明書とか

 読まないからなぁー。頑張ってもゲームの説明書で斜め読み

 だし。でもこれは読まないとヤバイよなぁー……。」

「説明書を読まないって。何と無く分かるかも。」


 そう言って白波が小さく笑っては『ごめん。』と呟いて黙る。

 何で謝って黙るんだ? もしかして今オレ馬鹿にでもされて

 た?

 まあ嫌な気分してないし、どうでも良いや。オレはそう思っ

 て白波と一緒に校舎を出ながら。


「ぉぃ。」

「白波。帰り道が一緒なら途中まで一緒に行かないか?因みにオレ

 はあっちな。」

「あ、ぼくも同じ方角だよ。」

「おーマジか。なら一緒に帰ろうぜ!」

「うん。良いけど……。」


 白波は何かを気しながらも一緒に歩き出す。本当は一緒には帰り

 たくなかったとか? いやでもこう言うのは折角だし、それにク

 ラスの席も皆自分の場所が決まってたから。

 間違いなく白波はこれからもお隣さんだ。なら仲良くしておく

 べきだ、うん。

 まあ一緒に帰るのが心底嫌そうって感じでも……。うーん分から

 ん。分からんが取り敢えず、一緒序でにアプリの事でも教えても

 らおう。


「おい!」

「そう言えばさっき見てたアプリの説明って何処で見れるんだ?」

「えっとね。まずアプリのアイコンを選んで───」


 オレがそう聞くと白波は自分のスマホを操作して、スマホの画面

 をオレに見せてくれる。成る程成る程。説明は此処から見れば良

 いのか。でもこれは。


「あー……。字がいっぱいで眠くなりそうだ。

 こう言うのはもっと絵を増やして、面白可笑しく教えてくれれば

 良いのにな。漫画みたいにさ。」

「あはは。確かにそうかもね。でもそれじゃあきっと、皆説明が入

 って来ないと思うよ。それに漫画みたいな説明書でも結局は説明

 書だから、苦手な人はやっぱり苦手なままなんじゃないかな?」

「いやいや。絶対その方が読みまくるって。んでもそう言われると

 確かにそんな漫画は読みたくないかもしれないと思う。そんなオ

 レが居る。結局オレの根っこが駄目なのかー。」

「おい! おいって言ってるだろ!」


 さっきから誰かが誰かを必死に呼んでいる。煩いなぁ。

 誰でも良いから早く返事を返してやれば良いのに。そんな事を考

 えながら校庭を歩いていると、隣の白波が足を止めた。

 だからオレも普通に足を止めて隣を見る。白波は後ろを気にしな

 がら。


「……あのね御柱くん。多分呼ばれてるのはぼく達だと思う。」

「え゛?」


 白波に言われ。オレは声のしていた方へ振り返る。振り返った先

 にはあのデカイ奴が息を荒げ。


「やっとか! さっきから何度も呼んでただろう!」

「おいだけじゃ分かんないだろ! 用があるなら名前で呼べよ!」

「名前も聞いてないのに名前で呼べるか!!!」


 デカイのの言う通りだ。オレ達は自己紹介してなかったっけか。


「それは確かに! 悪かった、オレは御柱明進人!」

「お、おお。やけに素直だなお前。ん゛ん゛!

 おれ様の名前は大山大文字だ! 覚えておけ!」

「よろしくな! 大山!」

「うむ。此方こそだ御柱。」


 自己紹介を終え、オレは大山に片手を差し出しす。

 大山もそれに応えて片手を伸ばし、二人で握手を交わした。

 体だけじゃなくて大山は手もデカイ。ハンバーグとかを作るのが

 楽そうだな。じゃなかった。


「それで? 何で呼んでたんだよ? 大山も一緒に帰りたいのか?

 オレたちはあっちの方角だぞ。」

「む? それだとおれ様は反対なので一緒には帰れないな……。

 じゃないわ! 何でおれ様がお前たちと一緒に帰るんだ!」

「じゃあ何だよ。」


 オレが聞くと大山は“ニヤリ”と大きく笑い。


「御柱。おれ様とツクモで勝負してもらおう。

 前に出ろ、ザラス!」


 大山の後ろからは“ズシンズシン。”何て足音でも聞こえてきそ

 うな怪獣。

 青と白に彩られた怪獣型ツクモが、校庭の地面を力強く踏みし

 め。土煙を小さく上げては大山の前へと歩き出て来た。滅茶苦茶格

 好良い。

 ツクモ同士の戦いは命の掛け合いや違法行為以外なら良しとされ

 ていて、大きな大会何かもある位には人気で、ネット中継をオレ

 もよく見てた。

 おお。そんなツクモ同士の戦いにオレは今立っているのか。感慨

 を感じながら。


「……何でオレがお前と戦わなくちゃいけないんだ?」

「男同士が戦うのに理由は必要ない! 後、勝った方が最高の名を

 貰うぞ。」

「ちゃんと理由があるじゃないか!」

「小さい事はどうでもいい! さあ勝負しろ!」

「良いのかぁ? 此方は二人だぞ。」

「え゛? ぼくもなの!?」


 隣で白波が大きく驚いている。当然一緒に戦うに決まってるじゃ

 ないか。大山が呼んでいたのはオレ達二人な訳だし。何よりも一

 人より二人だ。急に言われて驚いたのか、かけた眼鏡ツクモを落

 ち着き無く触る白波。

 そんな白波を見ていた大山は鼻を大きく鳴らし。


「ふん。戦えない奴は数に入れてない。

 邪魔だからどっかにでもやって置け。」

「そそそ、そうだよね。」


 白波は呟きながら一歩下がってしまう。ううむ、戦う気が

 無いなら仕方がない。無理強いも良くないしな。オレは片手で

 抱いていたオウカを少し前へと放った。オウカは軽い身のこなし

 で地面へと着地し、大山のツクモ。ザラスを見据える。


「大山。本当に戦うのか?」

「当たり前だ。最強最高はこのザラスだと、

 証明する必要があるのだからな!」


 “ジッ”と此方を睨む大山にオレも負けじと睨み返す。

 互いのツクモも同じ様に睨み合っている。そんなオレ達の周りに

 は何時の間にか他の生徒が疎らに集まって来ていた。白波が背後

 から。


「御柱くん。大丈夫なの? その、ツクモを貰った今日いきなり何

 て。大山くんのツクモもかなり強そうだし。」

「ああ。全ッ然問題ない。絶対に負けない自身がオレにはある。」

「な、何でそんなに自信満々なの……。」


 空気の抜けた様な声を出す白波に応えながら、前で睨み合うツ

 クモをチラリ。

 子犬程度の大きさのオウカ。その前に佇むは、立ち上がった中

 型犬程度はありそうな大山のザラス。

 うん。滅茶苦茶格好良い対比だけどまるで勝てそうにないな。


「おれ様のザラスを前にして逃げないその度胸は褒めてやる。」


 大山は胸を張って偉そうに言うと。表情を真剣な物に変えた。

 これはいよいよだ。辺りの空気も変わり、緊張の瞬間が直ぐ側

 まで迫って来ている。暫く無言で睨み合い。そして。


「ザラス! こう───」

「オウカ!」


 大山が叫ぶと同時にオレもオウカへと叫ぶ。名前を呼ぶとオウ

 カは直ぐに踵を返してオレを目掛けて大きく飛ぶ。

 飛んで来たオウカを抱き止め、直ぐ様振り返っては走り出す。

 序に呆気に取られた顔の白波の手を掴んで校門へと突き進む。

 暫く走ると背後から。


「卑怯者ー! そんな、いきなり逃げるヤツがあるかー!

 戻って来い! 戦えないなら戦えないって最初に───!」


 校門に着いては大山へ振り返り。


「知らないのか! 逃げるが勝ちって

 言葉があるんだよー!」


 言いたい事も言ったので、オレは再び走り出す。

 勿論白波の手を引いて。走り去った背後では大山が何かを叫び散らし

 ていた。生憎何を言ってるかは分からないが、ちょっとだけ気分が良

 い。オレは白波を連れ走りながら学校を後にした───


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 ───学校から暫く走り。

 コンビニ近くを通りかかった時に後ろから。


「みみみみ、御柱く、ん……。」


 切羽詰まった白波の声が聞こえて走るのをやめ、後ろへ振り返る。


「はぁ!はぁ!はぁ!」

「お、おい。大丈夫か?」


 息の上がり切った白波は身振り手振りで待つ様にと伝えて来て。

 オレは近くに腰掛けられそうな場所が無いか探す。コンビニの側には

 公園、その中には座れそうなベンチが見えた。白波に肩を貸しながら

 歩き、公園のベンチへ座らせる。隣にオレも座り白波が落ち着くのを

 待つ。

 暫くして必死に呼吸を繰り返した後、幾分か落ち着いた白波が。


「ごめんね。ぼくそんなに体が強くなくて……。」

「まじか。そりゃ謝るのはオレの方だろ。

 悪かった白波。出来れば許してくれ。」


 知らずに走り回してしまった事を頭を下げて白波に謝る。

 白波は首を左右に小さく振りながら。


「ううん、謝らないで良いよ。御柱くんは知らなかったんだから。

 それに中学に上がる少し前には病気もあんまり掛からなくなったし…

 …。今は体も其処まで弱い訳じゃないんだよ?」


 弱々しく笑いながら話しては最後に『でも体力がね。』と小さく零す

 白波。今度からはしっかり気を付けよう。そう固く心に誓うとして。

 それでもやっぱり悪い事をしてしまった言う気分が、オレに纏わり付

 いてくる。

 だから、何か白波にしてやりたい。んん。んんーん。あ、そうだ。

 オレは膝の上で丸くなるオウカを両手で拾い上げ。走っている最中か

 ら既に眠こけていた恐るべきオウカを“ずいっ”と白波へ差し出し。


「学校で撫でさせるって約束してたよな。ほい。」

「え? え゛!?」

「落とすなよー。」


 ちょっと挙動が可笑しい白波へオウカを手渡す。挙動は怪しかった

 けど、白波は受け取ったオウカを大事そうに抱き抱えている。うんう

 ん。

 約束は守っとかないとな。序でにオレの後ろめたさも無くなって一

 石二鳥だ。何て思いながら白波を見遣る。白波はオウカを膝の上に降

 ろし。その背中をゆっくりち撫でつつ。


「良いツクモだね。おとなしくて、可愛いくて、素直でさ。」

「良さが分かってるなぁ……。オウカは

 最高のツクモで間違いなしだぜ。へっへっへ。」

「何でそんな悪そうな笑い方なの。」

「悪そうか?」

「うん。とっても。」


 薄く笑った白波に釣られてオレも笑う。うーん。悪そうな笑い方

 か……。

 白波の言葉にちょっとだけ、ちょっとだけショックを受けている

 と。


「でも本当に凄いね、御柱くんは。自分のツクモにそこまで自信が

 持てて。どうしてそんなに最高だって言い切れるの?」


 そんな事を白波が聞いて来た。一瞬適当に答えようとかとも思っ

 たけど、真剣な表情で聞かれたので真剣に考えて答えよう。んー…

 …。何で? 何でって。


「そりゃあ最初に貰った時から最高だったから?

 あー……。真剣に考えてみたけどこんな事しか言えないな。

 自分のツクモに自信満々ってそんなに凄いかぁ?」


 何だか自分でもスッキリしない答え方に成ってしまった。

 父さんからの送り物って時点で俺には最高だったし、だから自

 信も満々。

 それはツクモに成った今も同じかそれ以上だしなぁ。んー。

 オレの言葉を聞いた白波は、膝の上のオウカに視線を落としな

 がら。


「凄い事だよ。前に本で呼んだんだけどね。

 ツクモってさ、物の時に込められた想いが強ければ強いほど、想いを

 込めた人に懐いたり。望んだ姿でツクモ化したりするんだって。

 だからちょっと昔の人はツクモの事を、想いの器って呼んでいたらし

 いよ。」

「想いの器? 何だか難しい言葉だなそれ。

 まー俺の場合は望んだ姿よりも大分小さくなったけど、それでも最高

 っぷりは望んだ以上だった!」


 白波はちょっとだけ笑い。


「うん。このツクモは最初から御柱くんに懐いていた。

 ぼくが見た限りだけど、御柱くんとオウカちゃんがクラスで一番仲良

 しだと思うよ。」

「そそ、そうかぁー? まー白波がそこまで言うなら?

 間違いないな! うんうん。」

「……それは多分ツクモに成る前も後も、御柱くんが変わらない想いで

 ツクモを見ていたから、接していたからのお陰かも知れないね。

 でもね。どんなに想いを込めてもツクモに成るとそれまでとは姿が少

 し変わるし、何よりも生きて動き出す。だから皆ちょっとは怖がった

 り、期待とは違ったりして落ち込むんだよ?」

「へぇー……。」


 あの大山とか言うヤツはそんな風に見えなかった。と言うか誰もそう

 とは見えなかったけどなぁ。いや確か、女子の一人がそうだったかも。

 俺の頭にはぼやけた輪郭のクマを無言で抱える女子が浮かぶ。

 白波は膝の上に乗せていたオウカを優しく抱き上げては、オレへと返

 しながら。


「ぼくも想いを込めたつもりだったんだ。

 これを貰った時からいっぱいいっぱいね。だけど───」


 顔にかけた白い眼鏡を少しだけ触る白波。

 何だかオレにはそれが恐る恐ると言った様子に見えた。


「ぼくって体が弱くて、ツクモは想いの器。

 だから。だからきっとこんな……。」


 俯向き喋る白波の目は、眼鏡が曇ってる所為かよく見えない。

 でも、多分泣き出しそうな目をしている気がする。

 声がちょっと震えてたし。何か言うべきだ。白波が泣いてしまう前に

 何かを。

 男が泣く時は嬉しい時だけだって、母さんは言ってたけど。

 今の白波は嬉しくないのに泣く、泣きそうだ。何とかしないと!

 でも正直。此処まで話を聞いてもオレは、白波が何を言いたいのかさ

 っぱりだ。つまり。


「白波はその。 ……自分のツクモが嫌いなのか?」

「嫌いじゃない! ……よ。ただ。ぼくは体が弱くて、想いを込めるの

 も弱かったのかも知れない。その所為で自分のツクモをこうしてし

 まったのかなって……。」


 白波は一瞬顔を“バッ”と上げては声を荒げ、話す内にまた俯いて

 しまった。やっぱりオレはよく分かってなかったみたいだ。でも、

 そうか。


「それなら何も問題ないだろー。」

「?」

「ツクモが人の望んだ姿に成るってんなら、多分逆もあるんじゃない

 か? きっと白波に負担を掛けたくなくて、そいつはその姿なんだ

 よ。うん。きっとそう!」

「……本当に。御柱くんは自信満々だね。」

「おお! オレは自信だけならあるぞ! いや自信しか無いな。」

「……自信満々に言う事かな、それって。

 でも、うん。そうなら良いな。そうだと良いなぁ。」


 白波は自分の眼鏡を、ツクモをそっと手で触れる。

 その様子にはさっきみたいな恐る恐るってのは感じない。何だか分

 からないけど良かったんだよな? 眼鏡の曇りも消え、見えた瞳は泣

 きそうな感じじゃないし。うん。

 それにしてもツクモが想いの器だ何て初めて聞いた。

 結構ツクモ関係の雑誌は読む方なんだけどなぁ。オレは白波から

 返されたオウカを抱き上げ、顔を“ジッ”と見詰める。此処までの

 想いがこの姿なら。


「まさか。今からまた想いを込めたら、お前の最高のランクがあが

 っちゃうのか?」


 オレの呟きを聞いても、オウカは桜色の瞳で見詰め返してくるば

 かり。見詰め返すだけのオウカに代わり。隣の白波から。


「それはありえない話じゃないよ。ツクモは成長するからね。

 ツクモの中には成長するにつれて姿形が変わったりするのもいる

 しね。仕組みとかはまだ良く分かってないらしいけど───」

「本当か!?」

「う、うん。」


 オレは食い気味に白波に詰め寄り、たじろぐ白波。

 ツクモは成長する。姿も変わるかも知れない。ああ、そういった

 話もあった気がするな。そいつはかなりすげー事だよな?

 やっぱしツクモは最高って事で。つまりつまりはオレのオウカは

 まだまだ最高を極められるって訳で───おお!


「よし。白波!」

「はい?」

「オレ達のツクモを強くしよう!」

「は?」


 理解が出来なと行った様子の白波。


「良いか白波。ぶっちゃけ今日学校でツクモ化してたクラスメイト

 の中で、オレとお前のツクモがぶっちぎりに弱そうだった。いや

 絶対弱い! 一番下とその一個上位に。因みに言っとくとオレが一

 個上の方な。」

「ははは。ぼくが一番下なんだね……。」


 白波は今日学校で見たクマのツクモと同じ目をしていた。仕様が

 無い。

 どう考えたって子犬と眼鏡のツクモが一番弱いし。子犬と眼鏡な

 ら、眼鏡だろう。


「ツクモは成長する。成長とはつまり強く成る事だ!

 な? これはもう二人で強く成ろう。成るしか無いんだ。そした

 らオレ達のツクモももっとすげー事に成るかも知れない。」

「……ぼくは。ぼく達は強く成れるかな?」


 俯いた白波は眼鏡型ツクモを顔から外し、両手で持っては見詰め

 ている。不安げな声で呟いた白波に、オレはコレ以上無い位の自

 信を込めながら。


「ぶっちゃけそれは分かんない!」

「……。」

「だからやってみよう。やってみない事には何も分かんないし。駄

 目だったらまたそん時一緒に何か考えようぜ。」


 オレは膝上のオウカをわしゃわしゃ撫でる。相変わらず良い触り

 心地。


「うん。強く成れるなら、成りたい。成りたいよ。

 御柱くん。ぼくは強く成りたい。」


 白波は顔を上げ、オレを真っ直ぐに見詰めてくる。真剣な瞳に言

 葉。それに何て応えるかは決まってるな。


「ああ! オレ達で強くなっちまおう!」

「うん!」


 白波はオレに負けない程力強く返事を返して来た。

 別に最強には微塵も興味は無いけど、折角相棒が出来たんだ。なら鍛

 えて見るのも悪くない。その後オレ達はどうやったら強く成れるかを

 話し合って、その方法を見付ける事をこれからの目標にするって事を

 夕暮れに成るまでずっと話し合っていた。その後白波と別れてオレは

 家に帰った───


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 ───家に帰って約束の調べ物をしながら、合間合間にオウカと遊

 ぶ。クローゼットに仕舞い込んだ雑誌を漁り、引っ張り出しては。オ

 ウカと遊びながら読み耽っていると玄関から音が聞こえ。


「ただいまー。」

「お帰りなさい!」


 母さんが帰って来た。オレはオウカを脇に抱えて玄関に向かい。

 オウカを自慢げに抱え上げ。


「母さん! オウカだ!」

「オウカ? ああ、ツクモね。

 んー何だかちっこくて可愛らしいじゃない。」

「だろ! クラスの女子も振り返るほどだからなぁ!」

「はーん?」


 母さんはオウカの頭をわしわし撫でながら。

 何処か不思議そうな顔をする。暫くして母さんは靴も脱がずに

 ポケットから札型を取り出し。何かを操作していた。

 あ。何かヤバイ顔をしてる。逃げようかな。


「明進人。」

「はい。」

「あんた火扇はどうしたの?」

「……一緒に帰ろうって約束して。そのまま学校に忘れて来ました。」


 母さんに約束を破った事でしこたま怒られた後。

 オレは泣きながら火扇のご飯を作った。足にすり寄るオウカを抱きし

 めてもう一回泣いたのは秘密だ。めっちゃ怖かったなぁ。母さん。オ

 レは作ったご飯抱えながら、母さんが火扇を呼ぶのをじっと待ってい

 た。


「星が綺麗だなー…‥」


 遠くに見える星は輝き───外は寒い。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇




 夜も更けた学校の校門。

 その塀の上では、鳥型のツクモがすやすやと眠っていた───

最後までお読みいただきありがとうございます。この物語が少しでも楽しめる物であったのなら

幸いです。

物語を最後までお読みいただいた貴方様に心からの感謝とお礼を此処に。誠にありがとうございます。

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