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聖戦×戦神×軍神……6

 獣人達と黒猫の間に蟠りが広がる中、案内人と六人の少女達が広間に入ってくる。


 その手には御盆に乗せられた大量の|猪口〈ちょこ〉があり、一人一人に配られる際に、猪口の中に液体が注がれていく。


 酷い臭いが鼻から喉に広がると獣人達は顔をしかめ、渡された猪口を遠ざけるように腕を動かす。


「なんて酷い臭いなんだ……」

「これは……いったい」


 獣人達が顔を見合わせる最中、案内人が口を開く。


「皆様、お早$※#み¢%さい。其方£飲み*し♯&、会@℃も≠±¢♂れま§」


 獣人達が耳を疑う。


 その直後、ペリグロッソとキャトルフは悩まずに液体を一気に飲み干す。


「ぐぁ……酷い味じゃな、多くの薬草を口にしてきたが、一番の味しゃな……」


「ああ、二度目になるが、本当に酷い味だ……」


 二人が一気に飲み干す姿に獣人達は悩まずにそれを一気に飲み干す。


「うぎゃ、本当にひでぇ……」

「うう、間違いねぇな」


 獣人達が全てを飲み干した瞬間、ペリグロッソが案内人に対して質問を口にする。


「本当に凄い味だが、意味がある筈だ、済まぬが案内人殿、さっきの言葉をもう一度、口にして貰えないか?」


 案内人は笑みを浮かべ口を開く。


「はい、“皆様、お早くお飲みください。其方を飲みましたら会話も聞き取れます”と言いました」


 確りと案内人から語られた言葉に獣人達は不思議な表情を浮かべた。


 ペリグロッソは推測の話を口にする。


「俺達はエルイの郷に到着した際に木の根を通ってきた、外では理解出来なかった言葉が、エルイの郷に着いた直後、理解出来た事を不思議に思っていたが、此が答えか」


 案内人は笑みを浮かべると明るい声で返答する。


「御推察の通りで御座います。皆様に御配りしたのは、大樹エルイの木の根を煎じ、樹液を混ぜ合わせた物に御座います」


 エルイの木の根と樹液を体内に取り込んだ事により、言葉を理解できるようになったと案内人は語った。


 その直後、六人の少女達が案内人の周りを取り囲む。


 六人の少女達は美しい衣を案内人の腕に通すと更にアクセサリー等の金品が手足に到着される。


 案内人が一瞬にして、美しい衣を纏い、堂々たる姿を現すとその場に座り、|煙管〈キセル〉に火をつける。


「ふぅ、侍女達は真面目よなぁ……もう少し楽しみたかったのじゃが?」


「いい加減にしてください。シュゲン様、そろそろ、地上からの者達に長として、確りとした態度で向き合ってください、本当にお願い致します!」


「「「「「お願い致します!」」」」」


 そのまま、軽く煙を吐き出しながら、キャトルフを見つめるシュゲン。


 キャトルフは両手を左右に広げ、拳を握ると、その拳を床に押し当て、頭を下げる。


「改めまして、お久しぶりです、シュゲン様」


 煙を吐き出しながら、不敵に笑みを浮かべるシュゲン。


「よいよい、懐かしき友が尋ねて来たのじゃ、本当に退屈していたのでな、無理をさせたなぁキャトルフよ」


 互いに知り合いである事実をしり、獣人の一人が声をあげる。


「ふざけるなッ! 黒猫、アルベルム=キャトルフ! 初めから長を知りながら、黙っていただと! 何が平等だ!」


 我慢の限界を迎えた獣人の一人が声をあげると六人の侍女がシュゲンを護るように展開する。


 その瞬間、シュゲンが声を張り上げる。


「おい、獣人よ、主等は相手側に出向いた際に、諍いを露にする事が礼儀としておるのか? そうならば、力ずくでお帰りいただくが?」


「ぬっ! ……いや……」


 その瞬間、シュゲンが不敵に笑みを浮かべる。


「まあ良い、今より無礼な言葉を許そうじゃないか、我々も誰彼と助ける程、御人好しではないのでな、1つ提案じゃ、闘技場を用意するので、|妾〈わらわ〉と勝負をせい!」


「な! 正気か……オレは獣人だぜ?」


「よいよい、獣人よ、妾を倒せたならば、主等が欲する水も食糧も好きなだけくれてやるわ、どうじゃ? 戦わない場合は手ぶらでお帰りいただく……勝てるならば掛かってこい、獣人よ」


 そう告げるとシュゲンは闘技場に案内を開始した。


 その姿にキャトルフと六人の侍女達は溜め息を吐かずにはいられなかった。


「相変わらず、大変だな……」


「はい、言い出したら聞かないので、直ぐに医療班を召集しますので、失礼いたします、キャトルフ様」


 そう告げると六人の侍女達は三人ずつに別れ、片方は医療班の元に、もう片方はシュゲンと共に闘技場へと向かっていく。


 キャトルフ達も遅れながらに闘技場に到着する。


 闘技場内では、既に大勢の獣人とシュゲンが向かい合う形で睨み合っていた。


「掛かって来るがよい! 妾も軍神等と呼ばれておるが……身体を動かしておらなんだ、さあ、死なぬ程度に殺り合おうじゃないか! 獣人よ」


「嘗めやがって! 何が軍神だ! ウリャア!」


 若い獣人が怒りに任せて、拳を握ると一気に駆け出していく。


 突き出された拳を軽く受け流すとシュゲンは、その拳を軽く掴み、“ぐっ”と引き寄せると、掌を腹部に向けて突き出すと同時に掴んだ拳を“ぱっ”と放す。


 獣人が吹き飛ばされると、其処からは一方的な展開になっていく。


 医療班が獣人達の治療をする最中、シュゲンが天井を見つめる。


「なんじゃ? 嫌な気配が近づいておるな?」


 その瞬間、エルイの郷に凄まじい地鳴りが襲い掛かる。


 激しい地鳴りが続く最中、シュゲンが慌てて地上に飛び出していく。


「あ、シュゲン様!」


「侍女等は、待機せよ! 邪魔になるからのぉ、よいなッ!」


 六人の侍女達を待機させると、地上の様子を確認する。


 頭上に展開された防壁にぶつけられる巨大な炎を見つめるとシュゲンは即座に動き出す。


 適度な樹木を引き抜き、抱えると、木々を足場に、天高く飛び上がる。


「主を選んでしまい済まぬ……命に感謝するぞ」


 抜いた樹木に対して謝罪を済ますと防壁を内側から飛び出し、シュゲンは力一杯に抜いた木を投げ放つ。


 炎を造り出していた術者は、突如姿を現したシュゲンに驚きながら、飛んで来た樹木に対して炎の防壁を展開する。


「くそ、誰だよ!」


 シュゲンを睨みつける術者。


「いきなり悪いな、だが、悪ガキに名乗る名など持ちあわせておらぬ」


 不敵に笑みを浮かべるシュゲンの姿に術者は即座に炎を造り出していく。


「なら、名前なんか、どうでもいいから、消えろ!」


 シュゲンに向けて炎が撃ち放たれる。


 その瞬間、シュゲンは足に葉っぱを作り出し、葉っぱを蹴り、一瞬で炎を回避していく。


 シュゲンの只ならぬ動きに術者は怒りを露にする。


「炎を司る戦神の力を前に逆らう者は塵になれ!」

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