傭兵団×闇と光×増えすぎた歯車……1
獣帝が復活したその直後、三つの傭兵団が浪牙を仲間にせんとミストエルに近い、浪牙の拠点に向かっていた。
“暴食の団”
“幻獣”
“黒月の団”
三つの傭兵団はそれぞれが数千の勢力を有する大型の傭兵団であり、戦を求める血に飢えた戦闘狂である。
浪牙の元を尋ねた三つの傭兵団、しかし、浪牙の団長であるシャノワ=グランドールはそれを拒否した。
「悪いが【黒猫の団】と【浪牙】は兄弟の盃を交わしているんでな」
シャノワの言葉に三つの傭兵団の団長達は笑いながら、辺りを見渡した。
キャトルフを案内した際に、黒猫を庇うと発言した直後から、浪牙の団員の中に不満を感じる者が現れていたのだ。
冷たい視線がシャノワに向けられると傭兵団の一つ、暴食の団の団長が声を上げて笑う。
「だはは! つまりは、帝国の命令を無視して、薄汚い人間側に協力してきた黒猫という過去の汚点に力を貸すのか! 傑作だ!」
拳を握るシャノワ、その動きに、更に拍車を掛けるように発言が続く。
「つまりだ! 現“浪牙”は帝国の敵になり、薄汚ねぇ黒猫の味方をする逆賊になった訳だッ! それが浪牙の団員を含む全体の総意と取るが問題ないよねぇ?」
その瞬間、浪牙の団員達の中で何かが弾けた。
「俺は、黒猫の味方なんて御免だ!」
「俺もだ!」
浪牙の団員達が立ち上がり、シャノワの意見に反対したのだ。
「だっははは! ならさぁ? “浪牙”はどうするんだい……このままだと、敵として潰さないなんだが……」
そう語り、煽るように浪牙を掻き乱す男こそ、暴食の団、団長──デグルム=バディッシュである。
シャノワは理解していた。暴食の団は別名……“悪食の団”と呼ばれている。
多くの傭兵団、ならず者、盗賊などからなる集団であり、別の集団を取り込む際に、仲間割れをさせ、指揮官となる人物を葬り、すべてを丸飲みにする。
そうして、生まれた巨大な傭兵団である。
団長であるデグルム=バディッシュは、ジャッカルの獣人である。
自身より優れた者を嫌い、力こそが絶対であるとする、傲慢なる自信家であった。
「デグルム……テメェ! お前等もよく考えろ! コイツは……ッ!」
シャノワは微かな甘い香りに気づかされる。
周囲を見渡すシャノワに対してデグルムは不敵に笑う。
「さぁ、楽しく新しい浪牙の頭を決めようぜぇ? 浪牙の団長になりたい奴はシャノワの首を掲げろ! だははッ!」
まるで取り付かれたように、シャノワへと殺意を向ける浪牙の団員達。
覚悟を決めるシャノワ。
そんな時、浪牙の拠点の外から、叫び声が響き渡る。
シャノワと浪牙の団員、更にデグルムと暴食の団の団員達が視線を向ける。
「楽しくなってきたのによぅ……誰だよ? 誰か見てこいや!」
デグルムの指示で慌てて外に飛び出す暴食の団の団員。
しかし、外に飛び出した団員達は、唖然として、足を止めた。
幻獣の団と黒月の団の隊長達が必死に応戦しながら、次第に襲撃者達の攻撃に倒れていく姿であった。
「な、なんだ……これ、すぐにデグルム様に知らせろ!」
暴食の団の団員が叫んだ瞬間、シャノワとデグルムが話をしている建物に獣人が叩きつけられる。
壁に叩きつけられた獣人は、幻獣の団と黒月の団の団長であり、見るも無惨に絶命した姿であった。
吹き飛んで来た方向に視線を向けた団員達は顔面が蒼白になる。
黒猫の団員、数百人と隊長であろう、数人の獣人と人間の姿があった。
「いやぁ、弱いっすね? 早く骨のある相手に出会いたいっすねぇ?」
「それは言い過ぎっす。メル=カートル隊長、流石に居ないっす」
「なんでもいいよ……早く敵を切り刻んで、終わらせるよ……面倒くさいのは嫌いなんだよ」
メル=カートル、デルモ=グリム、ワーリス=モディカが世間話をするように話す姿と団長達の絶命した姿に最初こそ勢いがあった幻獣の団と黒月の団の団員達が恐怖で動けなくなっていた。
そんな騒ぎに気づき、建物から姿を現したデグルム。
「なんだ、こりゃあ!」
姿を現したデグルムを見つめる黒猫の団は“ニヤリ”と不敵に笑みを浮かべるのだった。




