帝都×浪牙×交渉……6
弓矢と剣、槍が一行に向けられる。状況だけ見れば敵陣で的にされているようなものである。
「マスター、時間掛かるかも……街で時間使いすぎてごめん……なさい」
申し訳なさそうに謝罪するアルガノ。
そんな言葉を聞き、笑みを浮かべながら、頭を優しく撫でるキャトルフ。
「カヤン。世界を知るってな、その場所の楽しいや美味しいを知らないとわからないんだよ。内情をしり、現実を見る、それが相手を知るって事なんだ」
会話が終わると同時にキャトルフ達を捕らえようと弓矢が放たれる。それを合図に黒猫も反撃を開始した。
「命令はただ1つ、回復出来る範囲なら何をしても構わない! いいな! 殺すなよ」
攻撃の許可が出た瞬間、表情を一変させる黒猫。
グレイヴとゲルダ、キャトルフとアルガノ、風薙とシシリアが前衛と支援にそれぞれ別れて攻撃を開始する。
頭上から放たれた矢をシシリアが魔石を使い、土の鞭を作り出し、打ち落とす。
歩兵達が一斉に攻撃を仕掛け、剣を突き出すとアルガノは魔石である得物を変化させ、巨大な金棒を作り出すと迷うことなく、敵陣に叩き込む。
「ひ、ひやァァッ!」
「吹き飛べッ!」
吹き飛ばされる歩兵達、城壁に叩きつけられ、十数人が一撃で気絶する。
誰が見ても、容赦ない一撃と言えるだろう。
兵士達が呆気に取られている隙に風薙が脚部に狙いを定め、敵陣に駆け出すと速攻で斬撃を繰り出していく。
「うわぁぁ! 卑怯な!」
「油断してるからだろぅがぁ! それにさ……あんなの食らったら、大抵はトラウマだぜ? 優しさだよ、優・し・さ!」
風薙はそう口にすると不敵な笑みを浮かべたまま、楽しそうに動けない歩兵の前に移動する。
「さて、今からお前を刻んでいく……と、言っても正直に質問に答えてくれたら、痛い思いはしないから……しっかりと答えてくれよぅ」
「キサマ……捕虜に拷問をすると言うのか、野蛮な……人間が!」
真っ直ぐに風薙を睨み付ける兵士。
風薙は呆れたように頭を軽く掻き回す。
「捕虜ってのは、捕らわれた奴を指すんだよ……お前はまだ、捕虜じゃない! あと、拷問を受けるのは、お前じゃないよん」
そう言い、指差した方向には、足をやられて、動けない無数の歩兵の姿があった。
「ま、まさか!」
“ニヤリ”と微笑む風薙。
「人は自分が助かれば、他者を生け贄にする。だが、獣人は仲間を犠牲にしな~い!」
兵士の顔が青ざめると同時に一人の歩兵が全力で風薙に向かって剣を振り走ってくる。
「やめろッ! 人間野郎が! 兄ちゃんに近づくなァァ!」
即座に剣を躱すと風薙は走ってきた歩兵の背後に回り込み、手を押さえると地面に捩じ伏せる。
「よし、なら……兄弟の絆を確かめるとしますか……!」
「ま、待ってくれ……質問に全て答える」
「兄貴ッ!」
兄弟を人質に取られた時点で兵士に選択の余地はなかったのだ。
「抵抗はしない……妹を離してくれ……頼む……」
「ああ! 妹……!」
風薙は慌てて手を離す。
兄に駆け寄る妹。
「チッ、女なら、女だって早めに言えよ!」
「お前が悪いんだ! 兄貴と皆をこんなにしやがって!」
そんな最中、無数の矢が風薙と兄妹の頭上に降り注ぐ。
妹が兄を庇う、その瞬間、風薙が魔石を全身に纏い、双剣を構える。
「仲間すら、頭上から狙うなんざッ! 人間よりずっと薄汚ねぇ! ハアァァッ!」
風薙が弓矢を全て弾くと兄妹に語りかける。
「オレの側に居て、助かるか……的になるか選べ! ただし此れは取引だ! オレ達は獣帝と交渉する為に来たんだ! 前者なら、絶対に死ぬな! いいな!」
ふざけていた口調から一変して凄まじい気迫に満ちた風薙の声に兄妹は圧倒される。
「……わかった、私と兄貴はアンタに従うわ……」
「……! おい、何を!」
「現実を見て、兄貴……私達すら……狙われてるの……」
苦渋の決断だったであろう。兄妹は生き残る為に風薙の提案を受け入れたのだ。




