帝都×浪牙×交渉……4
「アンタ達……私の話を聞いてなかったのかいッ!」
アルガノは少し悩むようなしぐさを見せるとキッパリとゲルダに向けて発言する。
「争ってない。ボクは捕らえただけだよ?」
揚げ足を取るような発言に怒りを通り越して、笑い出すゲルダ。
「まったく、まぁ、やっちまったもんは仕方ないね。取り敢えず、コイツらは誰なんだろうね?」
捕らえた獣人達の顔を確認するシャノワ。
「コイツらは、軍部の反抗勢力、つまり、ガーレン派の兵士だな、まぁ、こんなにあっさりと捕まるなら、下っ端だろうが?」
気絶した獣人達をその場に放置する事を決める。
襲撃された訳でないのだから、それ以上の危害を加える必要もないと判断した為の結論であった。
帝都までは監視の目が続くも相手が動かない限り手を出さないと決めて行動していく。
帝都を目前に、監視の視線が消えるとシシリアとグレイヴが周囲を確認し、完全に人気がない事を再確認する。
「よし、なら、心置きなく清めるぞ。流石に、このまま向かう訳にはいかないからな」
そう語るキャトルフの先方には流れが緩やかな川が流れている。
「さて、入るか」
キャトルフの言葉にアルガノとシシリアが服のボタンに指を掛ける。
シャノワと部下の獣人達が周囲を警戒するとキャトルフと他の黒猫メンバーも同様に服を脱ぎ、川に入り体を清めていく。
帝都に入る際にリアナ王国の臭いが強すぎる事実は要らぬ争いを招きかねないからだ。
「気休めと、体の汚れ落としだ。それに、女は綺麗な方が輝くからな」
ニッコリと笑みを浮かべて見せるキャトルフ。
アルガノとシシリアが赤面する最中、ゲルダの拳がキャトルフの後頭部に炸裂する。
「なにを、詰まらないことを言ってるんだい! 早く着替えをだしな、まったく!」
「痛いな、ゲルダ婆。緊張してたら、無駄に目立つだろ? それより、グレイヴ爺にも、入るように言ってくれ」
仕方ないと首を左右に動かしながら、グレイヴの元に歩いていく。
軽く首を掴むと川に引きずられていく。
「や、やめよ! やめてくれ、ゲルダ! 儂は水が苦手なんじゃ!」
「爺さんが、ガキみたいな事を言ってるんじゃないよ!」
「ギャアァァ!」
グレイヴの叫び声と共に皆の身は清められる。
衣服を着替え、帝都に入るキャトルフ一行。
正門もシャノワの存在があり、あっさりと通過する事が出来た。
帝都内は【リアナ王国】の内戦が帝国でも、起きるのではないかと……
そんな不安に包まれた【獣帝国ガルシャナ】に足を踏み入れた黒猫の団はその現実をその目にするのだった。




