帝都×浪牙×交渉……3
全ての状況を知ったうえで、現獣帝と会おうと口にするキャトルフ。
シャノワは酒を直飲みしながら、首を傾げると口を軽くぬぐい、喋り掛ける。
「分かってねぇなぁ? 現実的に無理なんだよ。力が拮抗してるんだ。簡単に謁見できる訳ないだろうが」
キャトルフは軽く頷く。
「それでも、会う必要があるんだよ」
黒猫の団員達は、キャトルフの言葉に反応するように頷き、帝都を目指すように再度歩き出した。
黒猫の行動に浪牙の団員達は呆れたように笑い始める。
黒猫を知らぬ者など存在しない。設立から、傭兵として行動してきたミストエルの死神の名は誰もが知る悪夢と言える。
その為、若い世代や、新たに組織された傭兵団からすれば、黒猫の団を邪魔な存在と感じる者も少なくない。
しかし、そんな古株の黒猫の団が帝国の獣帝に事前の連絡も無く会えると考えていると“クスクス”と浪牙の団から笑い声が漏れだしていた。そんな最中、“パンッ!”と酒瓶が粉々に砕かれる。
「テメェ等、笑ってんじゃねぇ! 今、笑った奴はキャトルフ達の何を知ってて笑ったか説明しろ!」
キレながら、そう口にするシャノワの鋭い眼光に浪牙の団員達は静まり、無言のまま、微動だにしない。
「どうした? 笑ってた奴は名前を呼ばれないと前にも出れねぇのか?」
「それくらいにしてやれよ。お前の大切な仲間をお前が脅すなよ」
キャトルフの言葉にシャノワは無言で頷くと両手を組み。怒りを露にしている。
蟠りを残さぬように考える黒猫の団は、言葉の通り、帝都を目指して進んでいく。
シャノワは帝都までの護衛を申し入れる。
帝都に顔をよく知られているシャノワは、自身が同行する事で、他の傭兵団からの攻撃を牽制する事にも繋がると口にしたのだ。
キャトルフは少し悩むも、それを了解した。
帝都に向かう際、シャノワの予想していた通り、無数の視線がキャトルフ一行に向けられる。
「まったく、本当に……面倒くさいな……」
「揉めるんじゃないよ……私は、争いで怪我人の面倒は御免だからね!」
キャトルフに釘を刺すゲルダ。
無数の視線の位置を即座に調べるとキャトルフはアルガノに指示を出す。
「カヤン、悪いんだが……俺は暴れられないから、軽く頼む」
「わかった。マスター」
「ちょっ! キャトルフ!」
ゲルダの怒りの声を無視するようにアルガノが即座に動きだす。
森の木々がざわめくと同時に、勢いよく薙ぎ倒されていく。
土煙が上がると同時に数名の獣人達がキャトルフの前に放り出される。
「マスター、コイツ等が見てた」
気絶したまま、転がされる獣人の姿にゲルダは頭を抱えた。




